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1秒ストライカー 〜1秒先の未来が見えるおっさん、サッカーで人生やり直す〜  作者: そきおこ
第6章 青空市の未来

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第67話 なつみかんの秋③

 夏海、美香、わさびの3人が、青空商店街を歩いて、あおい庭園へ向かう。

 足どりの軽い夏海が先頭でウキウキと歩き、後方で重々しい歩みの美香に寄り添うようにわさびが続く。

 おかしな様子の3人組を見つけ、商店街の面々は顔を見合わせた。


「あ、えっと、わさびちゃん……、今日のランチ注目入ったからあとで行くね。」


 挽きたてコーヒー「みのり」のみのりが声をかけてきた。


「あ、みのりさん、よろしくお願いします。

今日は、ユミちゃんともんちゃんにお店をお願いしてるから。」


「え!?もんちゃんさんがいるっすか?こ、これはさらに一大事っす。わさびさん、先に行ってきます!!」


 まちカフェに、もんちゃんがいることを聞いた夏海は、猛烈なダッシュであっという間に姿が見えなくなってしまった。


「もう、夏海ったら。」

 

 わさびが呆れながらつぶやく。


「これから、どうなるんでしょうか。」


「私もわからないな〜。でも、うちの管理組合はチームだから。きっといい方向に向かうと思うよ。」


「そ、そうでしょうか……。SNSの一過性の流動顧客は、その後の対応を誤るとブランド毀損につながるというデータもあります。まずは、状況を分析するためにアナリストに相談し、コンサルタントを交えながら……」


 美香が、銀行の幹部会に呼び出されて説明するような重々しい口調で淡々と話し続ける。


「ちょっと、ちょっと!!あおい庭園、いま、ほぼゼロなんだから、なにも失うものはないよ。つい数カ月前に紙コップで始めたカフェとお庭だよ。」


 ちょっと言い過ぎているが、安心させるつもりで、わさびが気楽な雰囲気を作ろうとする。


「さっき夏海さんに言われて……、歩きながら気づいたんです。私がみなさんにご迷惑をおかけしているって……。」


 もう美香の降下速度はとどまることを知らない。

バズによって、美香のメンタルは今や崩落寸前だ。これはまずい。しばし悩むと、「よし」と声を上げて、わさびが電話をかけ始めた。


「もしもし、ご無沙汰してます。え〜、おかげさまで。いえいえ。それで……。ではまた後ほど。」


 "ピ"


 わさびは電話を切ると、美香に向きなおる。


「さぁ、行きましょう。レッツゴー!!」


 今度は、わさびが謎テンションになり、美香を引き連れて歩みを始めた。


****

わさびと美香が到着したのは、あおい庭園から丘を登ったところにある青空高校だった。

歩きだと、ちょうど20分ほどかかる。


「ここは?」


 美香はよく分からないまま、わさびに問いかけた。


「まぁ、ちょっと待っててね。あ、来た!!お〜い。」


そこには、いつもアリスと一緒に店に来る女子高生2人の姿があった。


「彼女達も援軍。さっき、校長先生に電話して、みんなの親御さん達にも許可をもらったんだよ。」


 美香は、なるほどという顔をしながら、こちらに向かってくる彼女達を眺めていたが、突然、気をつけの格好をし、硬直して動かなくなってしまった。

けっこうかわいい。


「美香さん?」


 わさびが問いかけると、美香は振り絞るように声を出した。


「み、みら、みら、みらいしゃまが、いら、いら、いらっしゃいます。」


「あ、わさびさ〜ん。」


 いつも通り明るい未来が、わさびのところに走ってきた。後ろには勇気の姿も見えた。


「なんか大変なんですって?

よし、俺らなんでもやりますよ!」


 未来との予期せぬ接触に、美香は真っ赤になって硬直が続いている。


「未来君、この人は美香さん。あおい庭園に作ったスタジオみかんのオーナーさん。イラストがすごく上手なんだよ。でも、上手すぎてバズっちゃったの。これから人がたくさん来るかもしれないから、準備しないとね。」


 わさびが美香を紹介した。


「あ〜、あなたが美香さんですか。

 アリスからいろいろ聞いてます。


 スタジオみかん、アリスの

 命名癖にまんまと乗せられてましたね〜。


 でも、いい名前!

 きっと、うまくいきます。


 なんだかワクワクしてきました。


 がぜん応援しちゃいますね!!」


 ……


 来た!


 空気が、ふっと軽くなる。


 わさびは神じいさんから与えられた「まね〜じゃ」の能力により、未来の力が発動したことを感じた。


未来の能力「応援で味方に力を与えるチカラ」


「もちろんです。お客様いっぱい来ますので、張り切っていきますよ!!」


 美香の表情が、ぱっと明るくなった。


 未来の「応援」は、言葉というより、場の空気を変えるチカラなのかもしれない。

さっきまで重たかった空気が、一気に前向きに変わった。

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