第66話 なつみかんの秋②
布団を剥ぎ取られた美香は、すでに着替えも済ませ、出かけられる格好をしていた。化粧も、きちんと整っている。
どうやら、出かける直前になってバズりに気づいたようだ。
「美香さんどうしたの?連絡がないから心配したよ?」
わさびが近づいて話しかける。
「は、は、はい……。ごめんなさい。どうしていいか分からなくなってしまいまして……。」
布団をはぎ取られた美香は、ベッドの上で起き上がり、ぺたんこ座りのまま、うつむいて言葉を返した。その間も、スマホがピロピロと鳴り続けている。
「これは気が滅入るわね。着信音消したら?」
「で、でも、ちゃんと返さないと……。」
美香はわさびと話しながらも、スマホを気にしてしまっている。
「美香さん、スマホ貸すっす。」
「え?!」
夏海は美香からスマホをすばやく奪い取ると、電源を切ってしまった。
「はい、解決っす!!」
「ちょっと、夏海さん、なんてことするんですか?人の迷惑を考えてください。」
美香は、思わず声を荒らげた。
「何言ってるっすか。
どれだけ周囲に迷惑かけてると思ってるっすか。
スマホの向こうにいる人なんて、誰も大したこと思ってないっす。だから、これで解決っす。」
美香の憤慨などものともせずに、平然と夏海は美香に忠告した。
「え……?」
美香は、ゆっくりと周囲を見渡してから、「そうなのか?私は被害者なのに?」という表情をしながら、わさびに向き直った。
「美香さん、いろんなことが起きたけど、迷惑をかけられたって思ってる人はいないよ。美香さんも大変だったと思うけど、みんなで今日という一日を一緒に始めましょ。
……あと、夏海は言い方がダメだよ!」
わさびがこの場を納め、ようやく部屋から美香を連れ出すことができた。
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トゥルルル……
トゥルルル……
4人が部屋を出たあとも、アリスホテルの受付電話は鳴りやまなかった。
いまは留守電に切り替えているが、それでも問い合わせはひっきりなしだ。
「アリスちゃん。この場はイレさんと相談しながら乗り越えて欲しいの。メッセージ送ってあるから、もう少しで来るからね。」
「はい、分かりました〜。」
なんだかんだと、商売人の娘。
大変大変と言いながらも、どこか大丈夫そうだ。
「じゃぁ、あおい庭園に行くっす。
レッツゴー!!」
夏海が先頭に立って進む。
「夏海、やけにやる気ね。てっぱんは大丈夫なの?」
「親父さんが何とかしてくれるっす。それよりもたぎりまくりっす。」
美香のネガティブ状態、夏海の変なテンションを取りまとめ、わさびは、今こそ「まね〜じゃ」の力の使い時だ!と自分を奮い立たせた。
「私、お祭り女なんっす。私がもんちゃんさんを大好きなのも仕方ないことなんっす。あの人は天性のお祭り男っす。
わさびさんの演説に惚れてこの町に来た時から、この時が来るって分かってたっす。最高の時っす。」
夏海の謎テンションは留まることを知らない。
「あの……。私、あの人苦手です。」
美香は、わさびにこっそりと告げた。




