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1秒ストライカー 〜1秒先の未来が見えるおっさん、サッカーで人生やり直す〜  作者: そきおこ
第6章 青空市の未来

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第64話 みかん騒動

 その日は何かおかしかった。


 いつも通り会社で朝礼を終え、いつも通りの商店街挨拶まわりをしながら、わさびはまちカフェに向かう。途中、これまたいつも通り、ユミと合流する。何もかもいつも通りだ。

 世の中は、こういう当たり前の毎日にこそ、非日常が舞い込んでくるらしい。


 「美香さんは、まだ来ないね。昨日の仕事で疲れたのかな。」


 時刻は9:40を過ぎたあたりだ。

9:00すぎにまちカフェに着いたわさびとユミは、いそいそと開店準備を進めてきたが、気づけば開店まであと20分もない。


「昨日、美香さんと話した時には、9:30前には来ると言っていました。真面目な人だから、時間にもきっちりしていると思うんですが。」


 ユミが心配そうに相槌を打つ。


「美香さんどうしたんだろう……。アリスホテルに電話してみるね。」


 わさびはスマホを手に取ると、アリスホテルの受付に電話した。


 プルルルル……ガチャ。


「あ、わさびさん〜。大変なんです〜。」


「え?アリスちゃん?学校は?」


 今は平日の午前だというのに、なぜかアリスが電話に出たので、わさびが驚く。


「ホテルの予約の電話が鳴りやまないんです〜。あと、スタジオみかんの電話やDMもすごくて、美香さんも動けなくなってます〜。」


 !?


「と、とにかく、今から行くから。またあとで。」


 ガチャ


「ユミちゃん、なんかアリスちゃんと美香さんが大変なことになっているみたい。私は状況確認しに行くから、お店の方をお願い。たしか、今日はもんちゃんを現場からこっちに回せるはずだからお願いしておくね。あと、念のためイレさんには、ここに来てもらうようにするよ。」


 わさびが早口でユミに告げ、あれやこれやと電話をかける。


「よし、これからイレさんが来るよ。もんちゃんも来てくれるから、お店は大丈夫だよね?」


「な、なにがあったんですか?」


「それが分からないの。詳細分かったらイレさんに連絡するから、とにかくユミちゃんは落ち着いて仕事をしていてね。」


 わさびは、ユミに後を任せてホテルアリスに向かった。


****


「あ、わさびさ〜ん。」


 ホテルに着くと、半べそをかいたアリスが待ち受けていた。その間も、受付の電話は鳴りっぱなしだ。


「なにがあったの?」


 わさびが、問いかける。


「昨日のスタジオみかんの動画が、バズっちゃいました〜。」


 わさびは、普段からあまりSNSを見ない。

だから、街の外で何が起きているのかに、気づいていなかった。


「えっと、なんでホテルアリスの電話が鳴りやまないの?」


「美香さんが、お世話になってるからと、このホテルのアカウントをフォローしてくれたんです〜。」


「なるほどね。それで、どんな電話なの?」


「うちには、あおい庭園に行くための宿泊予約です〜。もう今月は全部予約が埋まっちゃいました〜。」 


 本来なら満室は嬉しいことなんだろうが、需要と供給のバランスが狂った今に至っては、かなり厳しい状況だ。

 10月も終盤にかかるこの時期は閑散期にあたるわけで、急な予約に対応できるのか不安の方が勝ってしまう。それが何週間も、下手すれば何か月も。

しかも、SNSによる一過性の予約である。急に熱が冷めて大量キャンセルにでもなったら目も当てられない。

 ホテルアリス始まって以来の大ピンチである。


「これはイレさんの力を借りる時ね。アリスちゃん、もう少し待っていてね。あと、美香さんは?」


 美香のことも気になり、わさびが尋ねる。


「美香さんは、部屋に閉じこもっちゃいました〜。」


 そっちの方が大ごとだ!!

わさびは、とにかく美香の部屋に向かった。

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