File No.13 夕焼けの逮捕劇
今回はちょっと遡ったお話です。
近年爆発的に増加している少年犯罪。今や月に起きる犯罪のうち6割は未成年者が関わっている。その中でも少年犯罪は明治や大正時代の件数をはるかに上回っており、PTAや文科省、警察も頭が割れそうなほど痛い状況。
そんな現状を打破すべく、3年前に創設されたのが、警視庁特殊・重犯罪少年課。
3年前に新設されたとても新しいその部者は、何と全員が18歳以上25歳以下で構成されたとんでもない部署だった。
少年犯罪が増加しているのは、少子化による18歳未満の子供世代の人口の激減や、機械化に伴う就職率の減少。インターネットの普及により若い世代の社会適応能力の低下が原因とみられる失業率の増加など、調べれば調べるほど出てくる『若い世代への社会的ストレス』が要因とされている。
そんな彼らのストレスを少しでも和らげ、社会に溶け込めるようにしてあげる(つまり、一種の調教)のが警視庁特殊・重犯罪少年課である。その職務は雑用から始まり、上の後始m…ではなく、しりぬg…ゲフンゲフン。要するに、多岐にわたっているということだ。警察学校から特例で配属された夜霧麗華も、日々雑用や時たま起きるピンからキリまでの少年犯罪を取り締まっていた。そんなある日。
署長室の大きな扉は警視庁の中でも特に厳粛な雰囲気を醸し出していた。そして、その前で異彩を放つのは一人の少女。名を夜霧麗華という。彼女がなぜここにいるかというと――
某マンションの6階、609号室前
現場には独特の、張り詰めた緊張で満たされていた。
「俺が合図したら、突入だ分かっているな」
「はい」
「了解」
リーダーらしき人物が突入のタイミングを教え、それに答える部下らしき影が2つ。合わせて計3つの影が、アパートの一室の前で突入の準備をしていた。この向こうに犯人がいる。逃がすことは許されない。風の音が、己の心臓の音が、聞こえるほどに集中していた。その時だった。
嫌な予感がする。いや、それは予感ではなく確信というべきものか。
まさか、とリーダーらしき男は思った。後ろを振り返ると部下たちも気づいたらしい。そこには、部下が2人しかいなかった。いるはずの3人目の部下の姿が無かった。
「あのやろぉーまた勝手に!」
「それより先輩、早く中入った方が」
部下の青年が頭に血が上っている自分のそれよりはるかに適切な判断を提案する。
「私もそう思います」
もう一人もそれに同意する。アイツが配属されてから妙に調子が狂う。あー畜生、と悪態をついてから気を取りなおす。
「よし、入るぞ2人ともつづけ!」
「「はい!」」
部下が返事をしたのと同時、男は律儀にチャイムを鳴らす。
―――(ピンポーン)
「さっきまでの雰囲気ぶち壊しですね」
「うるさい、ドアをぶち破って入ったりしたら上から何言われるか分かったもんじゃないし、そもそもそんなことをしたら器物損壊やらなんやらで…」
「あ、来ますよ」
靴のかかとを踏んでいるのだろう。砂利を踏む足音は一回しか聞こえなかった。ガチャガチャと金属の擦れる音の後にカシャン、鍵が開かれる。
「はい、どなたですか」
男は少し痩せ気味で、顔色も悪く体調はすぐれない様に見える。行動の一つ一つがおどおどしていて、コミュニケーション能力の低さが伺える。
「有野達也さんですね?」
「あ、はい。で、どちら様ですか」
「警察のものですが―――」
警察手帳を見せた瞬間、だった。
有野はドアを勢いよく引っ張り、閉めようとした。
「あっぶ…おい、こら!あ…け…ろ…よっ!?」
今度は急に手を離し部屋の中に逃走。全力でドアを引っ張っていた「先輩」は反動で後ろへ大きくふっとんだ。後ろの部下二人はそれを受け止めることなくスルーし、
「大丈夫ですか、先輩」
のんきなものだ。と男は思った。
「いいから追え」
「了解です!」「は、はい」
部屋は6階。到底窓から飛び降りれる高さではない。逃げ道は、ない。
「待ちなさい…って言っても待たないよね~、普通」
部屋の中はカーテンが全て閉められていて薄暗く、見ても何に使うのか分からない機械パーツがころがっていた。奥の部屋には、サーバと思しき巨大なデスクトップのパソコンがあった。それ以外は割と特異なものはない。
突然、シャーとカーテンが走る音とともにオレンジ色の夕焼けの明かりが目を焼いた。
「おうっ」
「ウッチー、あっち!」
部下のもうひとり、女性の声が青年を呼ぶ。ウッチーと呼ばれた青年は振り返り、指さされた方向を反射的に見る。
「うわっ」
またも、目をオレンジ色の光に焼かれた。ドジ…となじった部下(女)はすぐさま窓際へ走る。もちろん、夕日と「ウッチー」の間に割り込むような形で。
窓際まで有野を追い詰めた二人。
「飛び降りたら死ぬぞ」
「諦めなさい」
二人の部下は有野を取り押さえようとする。
だが。
有野は二人の刑事を振り返り、嗤った。
「じゃあな」
そう言って、有野は夕日の中へと消えた。
ウッチーと部下(女)はすぐさま窓から下を見下ろした。そこには、ゴミ置き場に散乱した、早すぎる「次の日のゴミ」の上に落ちた有野がいた。
「くっそ、しまった、下行くよ!先輩、外です!ゴミ捨て場!」
「待って!」
部下(女)が走り出したウッチーの首元をこれでもかと鷲掴みにし、制動をかかける。
「なんだよ!」
「あれ、見て」
*****
「先輩、外です!ゴミ捨て場!」
男はその声を聞いた瞬間、体の痛みも忘れて全力疾走した。足をもつれさせ階段を転げ降り、それでも走る。口いっぱいに鉄の味が広がっていたが、そんなことも気にせずに、とうとうごみすて場へとたどり着いた。
「有野!逃がさん…ぞ…」
そこには有野に手錠をかけた、いなくなっていた三人目の部下がいた。
「あ、リーダー。遅かったですね。なんか大きな音しましたけど、大丈夫ですか」
「夜霧!おまえなにやってんたんだ!」
「あ、本名大声で読んだらダメですよ。レイ、ですレイ。「零」って書いて零」
そんなことは分かっている。状況を説明しろ状況を。
「えーと、見ての通りです。」
零が指差すのは有野の足。
すねが、膝が、関節が、いろんなところがおかしな方向に曲がっている。赤く染まった足もしそうだが、腕の方もなかなかに強打したらしい。
「うわっ、馬鹿だなこいつ。6階から飛び降りたのか?こんなんがクッションになるわきゃねーだろ」
緑色のネットを被った黄色いビニール袋を足蹴した。
ゴミ捨て場には、土嚢ように燃えるゴミのゴミ袋が積まれていた。
年内には更新しようと思ってました。当初の予定では、2013年のうちに半分くらいは話進めたかったんですが、なんと。なんとなんと、まだ全体の三分の一も終わってません。というか、本編にさえ入っていない感じです。今回のが第一話と思ってもらってもいいくらいです。
最初の方に変なの書かなきゃよかった。無駄なことしなきゃ良かった。
あぁ、気づけばもう今年も終わり。なんともうクリスマス・イヴになっちゃってるじゃありませんか。全国の独り身さん、バンザーイ!そしてリア充さんがたは、まぁ…楽しんでください。




