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第36章

 【芸術的感興(げいじゅつてきかんこう)】


 批評家(ひひょうか)が、モダン・アートの画家のアトリエを訪問した。


 「あ、これは何です? すばらしいですね! なんという『深い魂(たましい)の色』でしょう! なんという見事な『表情(ひょうじょう)』でしょう!」


 「・・・それは、私が絵筆(えふで)に付いた絵の具をこすり落とすのに使っている雑巾(ぞうきん)ですよ。」


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 【誘い】


 ニューヨークの現代美術館で、アレンはきれいな女の子を見つけた。


 『ジャクソン・ポロック』の、アクション・ペインティングの前だった。


 「この絵、きみはどう思う・・・?」


 と、アレンはたずねた。


 「宇宙の否定的性格(ひていてきせいかく)について語ってるわ。」


 と、きれいな女の子は言った。


 「存在の怖(おそろ)しくグロテスクな空(むな)しさね。虚無(きょむ)よ。神なき永遠の不毛(ふもう)の中に生きさせられている人類の苦しみ。巨大な空虚(くうきょ)の中にちらつく焔(ほのお)。無意味な荒涼(こうりょう)とした大宇宙の中の狭窄(きょうさく)・・・」


 「土曜の晩はなにをしてるんだい、きみは。」


 と、アレンはたずねた。


 「自殺してるわ。」


 と、女の子は言った。


 「じゃ、金曜の晩はひまかい?」

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