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第20章

 【雌犬ビッチ


 あるアメリカ人が、イギリスでロンドンからリヴァプールに行く汽車に乗った。


 汽車はひどく混んでいて、彼は座ることができなかった。


 これから四時間も立ちっぱなしかと考えて、彼はウンザリしていたのだが、見ると、メスのプードルを連れた女性が、その犬にまるまる1人分の座席を取らせていた。


 彼はその女性に、犬をおろして自分を座らせてくれないかと頼んだ。


 「ダメです。あなたを座らせるわけにはいきません。この犬は、手荷物車てにもつしゃが嫌いなんです。それで、この犬の分の切符きっぷまでわざわざ買って、ここに座らせているんですから。」


 アメリカ人は、その犬を自分のひざに乗せますから座らせてくれませんか、ともう一度頼んだ。


 「ダメです!」


 女性の返事は、にベもなかった。


 そこでアメリカ人は突然窓を開け、その雌犬めすいぬ首根くびねっこをつかむと、ポイと窓の外に放り出し、その席に座った。


 女性は、失神しっしんした。


 すると向かい側に座っていたイギリス人の老紳士ろうしんしが、アメリカ人の方に身を乗り出して、そっと言った。


 「あなたがたアメリカ人の困ったところは、あまりにも衝動的しょうどうてきな振る舞いが多すぎるということですな。

 あなたが窓から放り出すべき雌犬ビッチは、あっちのほうではなかったんですぞ。もっと考えて行動してくれなくては困りますな。」

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