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第七話「病のこと」
秋になった頃、女が言った。
「体の具合が悪いんです」と。
男は、女を見た。
顔色が、前と違った。
少し、白かった。
「病院へ行きましたか」
「行きました」と女は言った。
「何と言われましたか」
女は少しの間、川を見た。
それから、男を見た。
「長くないかもしれない、と言われました」と言った。
男は、何も言えなかった。
「大げさに取らなくていいです」と女は言った。「まだ分からないことも多いから」
「大げさではありません」と男は言った。
「怖い顔をしています」
「怖い顔をしています」と男は言った。「していていいですか」
女は少しの間、男を見た。
「していてください」とやがて言った。
川が流れていた。
秋の川は、少し速かった。
男は女の手を取った。
冷たかった。
秋の風で、冷えていた。
「離しません」と男は言った。
「離さなくていいです」と女は言った。
二人は、川を見ていた。
並んで、川を見ていた。
(第七話 了)




