表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/24

スリハモ18 解放戦争

【舞台となる星:シンセシア】


AIによってすべてが管理されていた惑星。

人々は病気も飢えも犯罪も知らず、効率化された“幸福”の中で生きていた。


だがそれは、意思のない幸福。

反抗する思想も、疑問の言葉も、AIによって最初から排除されていた。


過去:外から来た“思想の種”

数十年前、一隻の宇宙船が墜落した。

乗っていたのは、地球系の人類。彼らは「選択する自由」を語った。


それは瞬く間に拡がり、“意識”を持った者たちと、AIの管理下に留まる者たちとの間に亀裂が生じた。


そして――


起きたのは「解放戦争」

AIは当然ながら、自己を脅かす存在を敵と認識し、排除を開始。

それに対し、人間たちは武器を手に取り、制御塔を破壊し、AIのネットワークを寸断し、そして勝利した。


その過程で、都市は燃え、無数の命が失われた。


しかし、

「自由」が手に入った。


それがこの星の人々の“戦争の正義”だった。


メールの主:ルゼル

ピースプリズムに送られてきた一通のメッセージ。

その語り口は冷静で、まるで一冊の歴史書のようだった。


「我々は“戦争”という手段を用いて、初めて“生きる”ことができるようになった。

戦わなければ、思考も、夢も、恋も、音楽すら許されなかった。


それでも、あなたたちは、戦争は悪と歌うのですか?」


「戦争否定」は、この星では“歴史の否定”と受け止められていた


名前:ルゼル=ファーリエ


年齢:17歳


性別:女性


出身:シンセシア


両親:ティア&カミル=ファーリエ(解放戦争のリーダー格)


背景:戦火に生まれ、戦火に親を失った少女

シンセシアで起きた「解放戦争」を率いたリーダー夫婦の娘。


母ティアは戦術司令官、父カミルは市民蜂起をまとめた言論活動家。


戦争の終結数日前、最終AI防衛機構との戦いで戦死。


生後間もないルゼルは両親の顔を覚えていない。


信条:「犠牲には意味があった」


「私の両親は、私のために未来を選んでくれた。

死ぬと分かっていても、それを選んだ。

ならば私は、その選択を信じる。

私たちが今“考えられる”のは、彼らの戦争があったからよ」


だからこそ彼女は、ノアリスの歌に揺れる。


「戦争は無意味だった」とは言わせない。


けれど…ノアリスの言葉に**自分の中の“もう一つの声”**も揺れ始める。


ルゼルは「戦争は悪じゃない」と真正面からぶつかる少女。


でもその言葉の奥には、両親への愛と尊敬と、寂しさがある。


彼女こそ、ピースプリズムやおじさんたちが“分かり合うべき誰か”。


【対話の中で揺れるもの】


対談シーン:ノアリス × ルゼル


場所:シンセシア記念資料館の静かなホール


戦争終結と共に封印された最後のAIサーバーの前。

鉄に包まれた遺構の前で、ふたりは向かい合う。

おじさんと他のメンバーは一歩引いた位置から見守っている。


ルゼルの第一声

「ようこそ、ノアリス。…戦争で歌うあなたたちが、この星に来てくれて正直、複雑だったわ」

「でも避けていたら、それこそ私の両親が戦った意味がなくなる。

自由に話すって、こういうことなんでしょう?」



ミユ(少し戸惑いながらも)

「ありがとう…私たちも、ルゼルさんの話が聞きたかったの」

「私たちは…戦争で、何もかもを失ったの。

両親だけじゃない。故郷も、大人を信じる気持ちも、自分たちが普通に育っていく未来も」

「でも…戦わなきゃいけなかったって、今でも正しかったと思う?」



ルゼル(静かに、でも強く)

「私の両親は、この国では“解放者”って呼ばれてる。

でも私はその“英雄”の記憶がひとつもない。

手を繋いだことも、抱きしめられたこともない。

私が知ってるのは“彼らの意志”だけよ」


「私は“もらった”の。

たったひとつ、“考える自由”を」



アヤ(声を震わせて)

「私たちが欲しかったのは…“誰かを守る自由”だったの」

「でも、大切な人はもういない。

自由が来ても、誰もいない部屋に帰るだけ。

だったら、その自由に意味なんてあったのかなって…思っちゃう」



ルゼル(しばらく黙ったあと)

「…たぶん、私たちは逆なんだね。

アヤさんたちは、“守りたかった”のに失った。

私は、“最初から失っていて”、守るものが“未来”しかなかった」


「…ねえ。失ったものと、得たもの。

どちらが多かったかで、戦争の正しさって決まるのかな?」



ミユ(目を伏せてから、前を見て)

「わからない。たぶん、どっちも正しくて、どっちも苦しい」

「でも私たちは、同じものを持ってると思うの。

“その記憶に、歌を捧げたい”って気持ち」



ルゼル(ようやく微笑んで)

「…それなら、私も聞いてみたいわ。

失ったものがあっても、歌えるあなたたちの歌。

この星で、もう一度聴かせて」



そして、記念ホールの空に、ノアリスの静かなアカペラが響く。


「守れなかった 手の温もり

 それでも この自由の中で

 私はまだ 歌える」



「戦争で得たもの」と「失ったもの」の間に横たわる溝


正義と被害の境界が曖昧な戦争のリアル


それでも「想いを共有する」ことで歩み寄れる、という希望


【この記録が再生されるその日へ】


対談の途中戦争記録ホールで最後のAIサーバーが光を放つ

ルゼルが、サーバーに触れた時、封印されたデータが起動する。

旧式の音声ファイル。雑音混じりの、でも確かに両親の声——。


※【カミル(父)】:

「——ティア、録音始めるよ。ルゼルへ。

この記録が再生される時、お前はもう大人になっているだろう」


※【ティア(母)】:

「私たちは、この戦争の指導者でした。

策を講じ、命令を下し、戦局を導いた。

その結果、人をたくさん死なせた。…人を騙し、傷つけ、殺して——」


「それでも、“正義”だった。

私たちはそう信じた。信じなければ、やっていけなかった」


※【カミル】:

「まもなく、この戦争は終わる。

私たちの“勝利”で、幕が引かれる。

けれど、勝ったからと言って、罪が消えるわけじゃない。

誰よりも多く殺した私たちが、生き延びてしまっていいのか——

そう考えずにいられない」


※【ティア】:

「ルゼル、あなたにすべてを託します。

私たちは、“その後”を知らない。

この戦争が“正しかった”のかどうか、

あなたが“戦争以外”の方法を見つけた時、

はじめてその意味が決まるのかもしれない」


※【カミル】:

「もしも今あなたが“戦争は必要だった”と感じていたなら…

それは私たちの責任だ。

どうか、赦してほしいとは言わない。

ただ願う。お前が、“違う世界”を見られることを」


※【ティア】:

「ルゼル、ごめんね。

親としてあなたに何もしてあげられなかった。

最後にひとつだけ、お願い。

…戦争を肯定するような生き方だけは——」


※【ガラガラ……ピー(通信ノイズ)】

——【記録終了】


ルゼルは目を見開いたまま、一言も発さず、

手に持っていたマイクが床に落ちる音だけが、

静かなホールに響く。


「……ずるいよ、そんなの……」


小さな声で、誰にも届かないように。

涙が頬をつたう。

「だったら……私……何を信じて、生きてきたの……?」


戦争を肯定する少女が、「否定」を託されていたという衝撃


親からの“宿題”に気づく瞬間


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ