スリハモ19 一曲だけのプロミストラクト
【戦争に意味を与えるのは、今を生きる私たち】
記録が再生された翌日。ルゼルはひと晩中、資料館にいた。
夜が明け始めた空の下、ノアリスの2人が静かに彼女の隣に座る。
ミユ(少し躊躇いながら)
「……あの、昨日の記録、聞いたよ」
「言葉が見つからなくて……」
—
ルゼル(疲れたような微笑みで)
「ねえ、アヤ。ミユ。
私、ずっと…“誇り”だと思ってたの。
両親がこの星を救った英雄だって。
でも……あの人たちは、私に“戦争を否定しろ”って言ったのよ」
—
アヤ(静かに頷きながら)
「私たちの両親も、戦争で死んだ。
でも、“誇って”はいなかった。
誰かを殺してまで生きるって、本当は誇れることじゃない。
だけど、生きなきゃいけなかった」
—
ルゼル(握った拳をゆっくりほどく)
「…私たちは、親が信じられなかった道を歩くしかないのかもしれない。
否定して、乗り越えて、それでも――
“この世界で生きてよかった”って言える未来を、歌でつくる」
—
ミユ(ふと目を見開いて)
「じゃあ、一緒に歌ってくれる?
“私たちの痛み”と“あなたの痛み”を、同じ歌にしようよ」
—
ルゼル(やっと心から微笑んで)
「いいの? 私、昨日まで“戦争を誇ってた”のに」
アヤが頷く
「それもあなたの真実。だからこそ、意味があるの。
平和は、正しい人たちだけが築くんじゃない。
傷ついた人たちが、手を取り合ってはじめて生まれるものなんだと思う」
—
この対談を機に、
**ルゼル × ノアリス(アヤ&ミユ)**によるユニットが立ち上がる。
ユニット名:「プロミストラクト(Promistract)」
由来:「Promise(約束)」+「Contract(契約)」
→ 過去に交わされた“痛みの契約”を、希望の“約束”に変える。
「戦争を知る者たち」の思想の変化と共鳴
「両親を乗り越える」ことは、否定ではなく継承
平和とは、誇りや正義を越えて**“共感”と“対話”でつくられる**というテーマの集約
【一曲だけの歌 「約束の灯」】
広いステージの中央。薄明かりの中に立つルゼル。
観客は静まり返り、その歌声を今かと待っている。
ルゼル(心の中で)
「この歌は、私の両親が残した願いの灯火。
でも今は、私が守りたいものがある——」
歌詞(一部抜粋)
「消えそうな灯を 抱きしめて
まだ知らぬ明日を信じてる
傷だらけの世界の中で
私はここにいる 歌い続ける」
「たとえ離れても 繋がる想い
約束したね また会う日を
この声が届く 遥かな空へ
希望を灯す 私の歌」
歌い終わり、深々と一礼。静かな拍手の後、拍手は次第に大きくなる。
ルゼル(ステージを降りながら)
「私はここに残る。
戦争の傷跡を、この星で癒やしたい。
そして、いつかまた――
あなたたちと一緒に歌う日を、信じて」
アヤとミユ(ステージ袖で)
「約束だよ、ルゼル。
プロミストラクトはこれからも続く」
「私たちはノアリスとして、また旅に出る」
夕陽に染まる記念資料館のテラス。
3人の未来への誓いが、静かに輝き始める——。
深夜の記念資料館の屋上。
星空が広がる静寂の中、ルゼルは一人、遠くの星々を見つめていた。
ステージで見せた強さの裏に、彼女の心は限界に近づいていた。
そこへ静かに歩み寄るおじさん。
ルゼルの細く震える肩をそっと抱く。
おじさん(優しく囁く)
「辛いなら、無理に強がらなくていいんだよ。
泣きたい時は泣いてもいい。君は一人じゃないから。」
その言葉にルゼルは我慢ができなくなり、声を荒げて泣き始める。
おじさんの胸にしがみつき、溢れる涙が頬を伝った。
涙が枯れるまで、静かに抱きしめ続けるおじさん。
やがてルゼルは泣き疲れて、そのまま眠りにつく。
朝日が差し込む頃も、ルゼルはまだおじさんから離れずにいた。
誰しも弱さを抱えること
強さの裏にある孤独と戦い
支え合うことで人は前に進めること
この後、ルゼルは少しずつ自身の傷と向き合いながら、
前へ歩んでいく覚悟を新たにする。
そして夜が明ける。
朝の柔らかな陽射しが部屋に差し込む。
ルゼルはまだおじさんの腕の中で眠っている。
そこへ元気いっぱいのツムギが入ってくる。
ツムギ(にこにこしながら)
「おはよう、おじさん!
あーっ、ルゼルちゃんがツムギのおじさんにしがみついてるー!」
ルゼル(目を覚まし、照れ笑いしながら)
「ん、残念だったな。
おじさんは私がもらったからね。」
ツムギ(ふくれっ面で)
「ムキー!ルゼルちゃんはここに残るんでしょ?
おじさんは寂しがりだから、遠距離とか無理だよー!」
ルゼル(落ち着いた笑顔で)
「離れていたって私はピースプリズムの一員だよ。
またツアーの時には、ここにも来てくれるんだろう?」
そのやりとりの間も、おじさんはすやすやと眠っている。
2人の明るい声に包まれながら、部屋には穏やかな朝の空気が流れていた。
続く




