スリハモ16 スラム街のユニット『リジェネライト』
【ツムギのプレゼント】
しばらく経っても、例のメールの送り主からの返事は来なかった。
もう忘れてしまったのか、それとも――
そんなある日、夕食を囲んでいた時、ツムギが突然、立ち上がって言った。
ツムギ:「もー待てない!ツムギが直接行ってプレゼントしてくるっ」
カイリ:「……は?」
ハルネ:「プレゼントって何を…?」
ツムギは、まるで当然のことのように、胸を張った。
ツムギ:「その子、今あるものが何もないって言ってたんだよね? だったらツムギが“今”をプレゼントすればいいじゃん!」
ハルネ:「“今を”……?」
おじさんは一瞬黙ったあと、苦笑を浮かべた。
おじさん:「理屈はともかく、伝えたい気持ちは、ちゃんと本物だな」
ツムギの強い要望を受け、おじさんはメールの送り主に
「もしよかったら、君の住んでいる星に直接伺っても構いませんか?」
とだけ返信した。
届くかどうか分からなかった。
だが、数分後――すぐに返事は届いた。
「なんでかはわからないけど……来ても何もないよ。
でもそれでも来るなら、ここです」
添えられていたのは、とある星のスラム街にある住所だった。
記録上では、かつて戦争に巻き込まれ、星の大半が焦土となった場所。
復興は進んでおらず、経済格差も激しく、治安も悪いことで知られていた。
ミナミが言った。
ミナミ:「行くなら、ちゃんと準備して。そこは、安全な場所じゃない」
ナツキ:「あたしも一緒に行く。プレゼント、ひとりで運ぶには重いでしょ」
アオイ:「…私たちの歌で動いた心があった。なら、私たちの手で届けようよ」
そして次の日。
プレゼンテから3人とミナミ、ナツキ、アオイが小型シップに乗ってその星へ降り立った。
広がっていたのは、瓦礫とゴミの山、壊れかけた鉄骨の建物、人々の無表情。
その空気に圧倒されながらも、ツムギはぎゅっと袋を抱えたまま、歩き出す。
そして――ひとつの建物の前に立った。
そこには、彼女がいた。
少女。
目に隈をつくり、ぼさぼさの髪。
見るからに栄養が足りていない細い体。
少女:「……ほんとに、来たんだ」
ツムギ:「来たよ!ツムギね、これ持ってきたの!」
ツムギが抱えていた袋を渡す。
中には――
・ハルネが描いた“今ここにある”笑顔の絵
・カイリが選んだ、頑丈な靴
・ナツキが手作りしたお守り
・アオイが書いた歌詞ノート
・そして、ツムギが歌った歌の録音デバイスと、ぎゅっと詰まった手紙
ツムギ:「今ここにあるもの、何もなかったら、あげればいいんでしょ!
だったら、もう“何もない”なんて言わせないもん!」
少女は、しばらく袋を見つめていた。
そして、震える声で、言った。
少女:「……ズルいよ、そんなの。
私、あなたたちのこと、ずっと嫌いだったのに……
なのに、今、ちょっと、泣きそうなの……」
ツムギは、少女に駆け寄って、そっと抱きしめた。
ツムギ:「泣いてもいいよ!ツムギ、ぎゅーってするから!」
少女の頬を、一筋の涙がすべった。
その瞬間――
何もなかったはずのその場所に、
確かに“何かがある”ことが、証明された。
ツムギ:「名前、なんて言うの?」
ホノカ(少女):「……ないよ、そんなの。今まで誰にも呼ばれたこと、なかった」
ツムギはにっこり笑って、元気いっぱいに言った。
ツムギ:「じゃあ、ツムギがつけてあげる!“ホノカ”っていうの!」
周りのみんなは驚きつつも、優しい空気に包まれる。
ツムギ:「だってね、これからホノカの心に、あったかい“花”が咲くから!」
ホノカは小さく笑い、少しだけ安心したように見えた。
ホノカ:「私もツムギたちみたいに輝きたい。
ここには何もないけど、みんなにいっぱいプレゼントしたい。
だから、私もプレゼンテに入れてほしい」
カイリとハルネは優しく微笑みながら頷いた。
カイリ:「あなたの気持ちは本物。
きっと素敵な光を放てるはずだよ」
ハルネ:「一緒に歩もう。私たちが支えるから」
するとツムギは、キリッとした顔でひとこと――
ツムギ:「は?無理だけど」
みんなが一瞬キョトンとする中、ツムギはにやりと笑って続けた。
ツムギ:「でも、それはホノカの地元を、ご当地アイドルで盛り上げて、
観光客を呼んで復興させるって意味でね。プレゼンテのメンバーになるってわけじゃない」
ホノカはびっくりしたように目を見開いた。
ホノカ:「そういうこと……?」
ツムギ:「そう!だって名前の意味は『穂乃花』、
何もなかった土地に実りと花が咲くってことだもん。
その通りに実現させるのはホノカの役目!」
カイリ:「地元の輝きを取り戻す、すごく大事なことだよ」
ハルネ:「私たちも全力でサポートする」
ホノカは照れながらも、目を輝かせて頷いた。
【新たな仲間とピースプリズム・スラムユニット結成】
ホノカの話を聞いていた2人の少女が、恐る恐る近づいてきた。
少女A:「私たちも、何かお手伝いしたい…」
少女B:「みんなのために、何かできることを…」
周囲のメンバーたちは口々に「もちろんだよ!」と優しく応えた。
だが、ツムギだけは厳しい声で一喝した。
ツムギ:「手伝いじゃない。自分たちが“やる”んだよ!」
少女AとBはびっくりして顔を見合わせた。
ツムギはにやりと笑いながら続ける。
ツムギ:「それに名前だって私がつけてあげる!」
少女Aは元気で明るく、周囲を和ませる性格だった。
少女Bは物静かで洞察力に優れていた。
ツムギは考え込んだ後、それぞれにこう名付けた。
ツムギ:「アヤメ!君の明るさは花のようだから」
ツムギ:「そしてユイ!静かにみんなの心をつなぐから」
ところが、突然スラム街にアイドルが現れても、すぐに人が集まるわけではない。
ツムギは戦略を話し始めた。
ツムギ:「3人はピースプリズムに加入するよ。
そこからホノカを中心にした新ユニットを結成。ユニット名は…」
おじさんが提案する。
おじさん:「スラム街の新たな光って意味で『リジェネライト』はどう?」
みんなが頷く。
ツムギ:「よし、それで決まり!
ユニット結成を宇宙連合にも掛け合って、会場の支援やツアーの一環に組み込んでもらう」
カイリ:「壮大なプレゼント計画だね」
ハルネ:「これで少しずつ、この場所が輝き始める」
こうして、スラム街にピースプリズムの力が注がれ、
ホノカを中心とした新ユニット『リジェネライト』が誕生。
壮大なプレゼント計画の第一歩が、今ここから始まるのだった。
『リジェネライト』デビュー曲:「光の継承」
(サビ)
ここに灯る小さな光が
未来へ繋ぐ道しるべ
もらった想い 受け継いで
私たちが今、輝き出す
(1番)
何もなかった場所に咲いた花
忘れかけてた夢のカケラ
君のぬくもり 風が運ぶ
闇を越えて、今、目覚める
(サビ)
ここに灯る小さな光が
未来へ繋ぐ道しるべ
もらった想い 受け継いで
私たちが今、輝き出す
(2番)
ひとりじゃない この声が響く
繋がる絆 風を越えて
傷ついた日も 共に越えて
新しい世界 ここに創ろう
(ラップパート)
リジェネライト 始まりの光
希望の歌で世界変える
昨日を超えて 明日を描く
一緒に歩こう、手を繋いで
(サビ)
ここに灯る小さな光が
未来へ繋ぐ道しるべ
もらった想い 受け継いで
私たちが今、輝き出す
(アウトロ)
光は続く 永遠の絆
胸に抱いて 歩き出そう
【『リジェネライト』初ライブ】
薄暗かったスラム街の広場は、ライブ開始の合図とともに鮮やかな光と音楽に包まれた。
観客は少なかったものの、熱心なファンや地域の人々が集まり、期待の眼差しを向けている。
ステージに現れたホノカ、アヤメ、ユイは緊張しながらも、自信に満ちた笑顔を浮かべていた。
ホノカがマイクを握る。
ホノカ:「みんな、こんにちは!私たちは『リジェネライト』です!
ここから、みんなの光になれるように頑張ります!」
観客の拍手と歓声が広場を包み込む。
1曲目の『光の継承』が流れ始めると、三人の歌声が力強く響き渡った。
アヤメの明るい声が空気を温め、ユイの優しい歌声が心に染み渡る。
ホノカはステージ中央で堂々とパフォーマンスを見せ、観客の心を掴んでいった。
途中、観客の一人がスマホでライブ配信を始めると、瞬く間に映像はネットへ拡散。
周囲の人々も手拍子で盛り上げ、少しずつ人数が増えていく。
ライブの終盤、ホノカが語りかける。
ホノカ:「私たちはここから、みんなと一緒に輝いていきたい。
今はまだ小さな光だけど、必ず大きな光になって、みんなの希望になるよ!」
観客からは自然と大きな拍手が起こり、涙をぬぐう人もいた。
三人は肩を寄せ合い、最後の歌詞を力いっぱい歌い上げた。
ライブは大成功に終わり、スラム街の広場には新たな希望の火が灯ったのだった。
続く




