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スリハモ15 PRESENTE結成

【ユニットの名前は、まだない】


舞台の余韻が残る控室。

歓声がまだ耳に残る中、「おじさん」は黙って3人を見つめていた。


カイリ、ツムギ、ハルネ――あまりに違う3人。


カイリは、妹たちを守るために“強く”あろうとした少女。

何でも自分ひとりで背負い込んで、頼ることを恐れていた。


ハルネは、絵を描くことでしか想いを表現できなかった子。

姉に守られ、何かを望む前に諦めてしまう癖がついていた。


ツムギは、まだあどけない。

感情に正直で、突拍子もないことを口にしては周りを慌てさせる。


この3人が、どうやってひとつのユニットとしてまとまるのか――。

「おじさん」は悩んでいた。

導くべきか、見守るべきか。

力を貸すべきか、任せるべきか。


でもある夜、そんなおじさんの前で3人は自然と語り合っていた。


カイリ:「あたし、強いばっかでアイドル向いてる気しない。笑えないし、かわいいポーズとかムリ」

ハルネ:「ううん…お姉ちゃん、いつも前に立ってた。私、それ見て憧れてた。私も…ちょっとずつ出たい」

ツムギ:「えーっと!じゃあ、ツムギが真ん中でいっぱい踊る!お姉ちゃんたちは、ツムギが転ばないように守る役!」


カイリとハルネは思わず笑い合った。

その笑顔には、緊張も気負いもなかった。


「おじさん」はようやく気づいた。


この3人は、“お互いの足りない部分”を埋めるのではなく、

“それぞれの色”で、カラフルな光を放つんだ。


ツムギの無垢な光

ハルネの優しい光

カイリの芯のある光


混ざり合えば、誰にも真似できない新しい色になる。


アイドルの形は一つじゃない。

強さも、弱さも、無邪気さも――

すべてが“誰かの背中を押す力”になる。


おじさんは、やっと迷いを捨てる。


「……さて。問題は名前だな」


ツムギ:「カイハルツムでよくない?」

ハルネ:「えぇ…即席すぎる…」

カイリ:「……却下だ」


また3人の笑い声が響いた。

その声は、すでに“アイドル”だった。


おじさんの家のリビング。夜。

カイリ・ハルネ・ツムギの3人は、テーブルに座っていた。


それぞれに色鉛筆やメモ、紙を広げて、真剣な顔で何かを考えている。


ツムギ:「ユニット名ってさ、何でもいいって言われると困っちゃうね〜」

ハルネ:「でも…ちゃんと意味のあるものがいいな」

カイリ:「私たちが“何者か”であるための名前…だよな」


ふと、ハルネがスケッチブックをめくりながら、つぶやいた。


ハルネ:「私は……“ある日失ったもの”ばかりを描いてた。お姉ちゃんの後ろ姿とか、言えなかった言葉とか。

でも、ミナミちゃんや、ナツキちゃんたちの歌を見てて気づいたの。

“今あるもの”をちゃんと見て、描きたいって――そう思った」


ツムギ:「ツムギも! 今のことしか考えてないよ? いま、楽しい! だから歌う!」


カイリはそんな2人を見て、頷いた。


カイリ:「……私たちのユニットは、“喪失”じゃなくて“在ること”を歌う。

無くしたものを悲しむんじゃなくて、

今、ここにあるもの――一緒にいられる時間、手をつないでくれる人、その笑顔。

それを歌おう」


おじさんは、そんな3人の姿を扉の影から静かに見ていた。

そして、ふと口にした。


おじさん:「“PRESENTEプレゼンテ”――どうだ?」


3人:「えっ?」


おじさん:「スペイン語で“今・この瞬間”って意味もあるし、“贈り物”って意味にもなる。

君たちの存在は、きっと誰かにとっての“今”であり、“贈り物”なんだよ」


ハルネはすぐにノートにその言葉を書いた。

カイリは一度目を閉じて、静かに頷く。

ツムギは満面の笑顔で、手を叩いた。


ツムギ:「ぷれぜんて! プレゼント! かわいい〜!」


カイリ:「じゃあ、決まりだな」

ハルネ:「うん……私たち、“PRESENTEプレゼンテ”だね」


こうして、

「失ったもの」ではなく

「今、ここにあるもの」を大切に歌うアイドルユニットが誕生した。


プレゼンテ デビュー曲

タイトル:「ここにいるだけで」

【1番】

なくしたものばかり

数えていたらきりがなくて

でも そばにあったんだ

名前もつけずにいた温もり


強くなろうとした日も

隠れて泣いた夜も

見つめ返してくれた目があった

それだけでよかった


【サビ】

ここにいるだけでいいんだよ

笑ってくれるあなたがいるから

手をつなぐぬくもりが

私たちをまっすぐ照らしてく


過去に縛られたくない

未来を恐れたくもない

今をちゃんと生きたいって思えた

あなたがいたから


【2番】

すれ違ったまま

届かなかった気持ちもあったけど

今日という日を

一緒に迎えられた奇跡にありがとう


失って知ったことも

守りたかった笑顔も

思い出じゃなくて今ここにある

だから信じてる


【ラストサビ】

ここにいるだけでいいんだよ

同じ空を見てるあなたがいる

交わした言葉たちが

明日をつくるメロディになる


どんなに小さな光も

確かに誰かの道しるべ

今、届けたい私の声で

「大丈夫だよ」って


プレゼンテのデビュー日は、初夏のさわやかな風が吹く日だった。

ステージは銀河ネットワーク配信の特別枠「宇宙次元アイドルフェス2025」。


緊張でガチガチのハルネ。

平常心を装いながら内心そわそわのカイリ。

そしてステージ袖でくるくる回っているツムギ。


おじさんは舞台裏で、そっと3人に声をかけた。


おじさん:「緊張してるか?……でもな、君たちはもう立派な“今”のアイドルだ。過去でも未来でもなく、今をちゃんと届けられる存在なんだよ」


その言葉に、カイリが息を整え、ハルネがうっすら微笑み、ツムギが「ツムギ、いっきまーす!」と元気に飛び出す。


舞台に立った瞬間、ライトが3人を包む。

イントロが流れると、観客の期待が静かに高まっていく。


そして3人が歌い出す。

過去に悩み、未来に怯えた少女たちが、

今、自分の声で「ここにいる」ことを全力で歌っていた。


ステージの最後、3人が手をつなぎ、深くお辞儀した。


客席はスタンディングオベーション。

ネット配信のコメント欄は「泣いた」「これが希望」「ありがとう」の嵐。


その日、「PRESENTE」は銀河に刻まれた。

“今、ここにいること”が、こんなにも強く、優しいことだと誰もが気づいたから。


【それでも、今ここにいる】


プレゼンテのデビューは大成功だった。

ファンサイトには応援の言葉、共感のメッセージ、感動の涙が溢れていた。


そんな中――

事務局に届いた一通の短いメールが、おじさんの胸に引っかかった。


「両親を失ったからって、今あるものを大事にって言うけど、

結局今は恵まれてるからアイドルやってんでしょ。

私には“今あるもの”なんて何もない。

あなたたちに、何がわかるの?」


それは怒りではなかった。

ただ、静かに――けれど確かに、深く痛む心からの言葉だった。


おじさんは、しばらくその画面から目を離せなかった。

言葉を選びかけては止め、書きかけては消した。


やがて、ふっとため息をついて、呟いた。


おじさん:「……確かに、言い返す言葉はないな」


その晩、おじさんは3人をリビングに集めた。


ハルネ:「……怒ってる人がいたの?」

カイリ:「まあ、否定されるのは想定内でしょ」

ツムギ:「でもツムギたち、何もウソ言ってないもん!」


おじさんは、ゆっくりと首を振った。


おじさん:「ウソは言ってない。でも、届かなかったんだ。

“今がない”って人に、“今を大切に”って言っても、

それは届かないこともある」


カイリ:「じゃあ…私たちは何を歌えばよかったの?」


おじさん:「答えはない。でも――

君たちが“今を大切にしてる姿”は、きっとずっと響いていく。

今すぐじゃなくても、どこかで誰かが“明日を信じよう”と思えるかもしれない」


ハルネ:「……言葉で届かないなら、もっと絵を描きたい。気持ちを、色で描きたい」

ツムギ:「じゃあツムギは、その人にお手紙書くの!お姉ちゃんの絵、入れて!」


カイリは黙って、メールを見つめていた。

そして、絞るように呟いた。


カイリ:「……本当は私も“何もなかった”側だったんだよ。

妹を守るために全部削って、それでも誰も頼れなくて……

だから、私にはその人の気持ち、ちょっとだけわかる」


その夜、ハルネは1枚の絵を描いた。

暗い部屋の隅で泣いている女の子が、少しずつ、色に包まれていく絵。


ツムギはその絵に、自分の言葉で手紙を書いた。

「いま、そばにいなくても、心はそばにいるよ」って。


カイリは、ただその封筒をそっと手に取って、ゆっくりと胸に抱きしめた。


おじさんは、返事を送ることに決めた。

そこに書いたのは、こういう言葉だった。


「この言葉が、あなたに届くかはわかりません。

でも、君の声は確かに届きました。

“今がない”と感じるあなたに、誰かが“今”を届けられるように――

私たちは、歌い続けようと思います」


続く


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