表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Time:Eater  作者: タングステン
第四・五話 番外編五
98/223

第01部

【2023年09月23日09時15分27秒】


 土曜日午前9時過ぎ。2週間前までの俺なら、学校が休みの日はこの時間帯はまだ夢の中だった。だが最近、正確には9月11日月曜日に湖晴に出会ってからと言うもの、まともな休息を取る事が出来ていない気がする。そのくらい密度が濃過ぎた2週間だった。


 先週の土曜日は音穏の家に行き、日曜日は温水プールに連行され、そして今日は俺と湖晴と音穏そして栄長の4人で、市内にある大型ショッピングモールに行く事になっている。


 本来、俺は買い物なんて絶対に行かない。遠出は苦手だし、疲れるので眠くなるからな。もし行くとしても、珠洲にお使いを頼まれた時や、足りなくなった文房具を買いに行く程度だ。それに、そもそも俺はあまり、物を増やすタイプの人間ではない。


 使っていないので金ならあるが、どうにも必要な物が思い浮かばないのだ。本なんて買ってもどうせ読まないし、遊ぶ物はパソコンでどうにでもなる。誰かにプレゼントを渡したりする事もそんなに無いし、背の高さの伸び率は年々縮まっているので着る服にも困らない。


 そんな俺が何故、こうして知り合いの女の子3人と共にわざわざショッピングモールに行く事になったのか。以前から言っている通りにその理由は至極明確だ。


 俺が音穏と栄長から借りていた弁当箱を返せなかったので、その代わりに『何でも言ってくれ』と言ったら、2人が『湖晴の私服を買いに行こう』と言って来たのだ。勿論、俺には拒否権は存在しない。それに、これは俺が言い始めた事だ。その時はそんな考えすら浮かばなかった。


 だが、少し待って欲しい。俺が過去改変前に2人に弁当箱を返せなかったのは、珠洲が暴走して2人から借りた弁当箱を壊したからだ。過去改変後の珠洲は純粋な、普通な妹になっていた。だから、過去改変後ではそのイベントは発生せず、俺は3人と買い物に行く事は無くなるだろう。そうならない訳がないと思っていた。


 しかし、この世界の俺はどうやら、2人から借りていた弁当箱洗っている最中に自分の手をうっかり滑らせ落下させてしまい、壊してしまっていたらしい。それで、その後は過去改変前の時と同様に昼休みにあの会話があり、結局買い物に行く事になったらしい。


 さて、そんな訳で早朝(AM9:17)。俺と湖晴は音穏達が迎えに来るまで俺の部屋でゆっくりとしておく事にした。そう言えば、何で湖晴も俺の部屋で待つんだ?まあ、良いが。


 そんな時不意に、俺の部屋のベッドに座ってくつろいでいる湖晴が椅子に座っている俺に話し掛けて来た。


「それにしても、何で音穏さんと燐さんは私の服を選んでくれる事になったんですか?」

「さあな。まあでも、良かったじゃないか。2人の親切心を受け取っておけ」

「それもそうですね」


 一応、湖晴にも俺が弁当箱を2人に返せなくてこうなったと言う事は話したのだが、今湖晴が聞いたのはそうではないのだろう。湖晴は2人が何でわざわざ自分の服を選んでくれるのか、その事が気になったのだと思う。


「ですが、私は別に着る服には困ってはいないんですよ?」

「・・・・・白衣しか着てないだろ」

「実は何10着もあって毎日別の白衣を着ている、と言ったら驚きますか?」

「以前までの俺なら驚いたかもしれないが、最近はもっと大変な事ばかり起きているからな。大して驚かないかもしれない」

「そうですか」


 湖晴の部屋はかなり質素だ。あるのは布団とパソコンとその他少しだけ。とてもではないが、年頃の女の子が住んで良い様な部屋ではない。そんな部屋の何処に白衣数10着を隠せると言うのか。否、そんな空間は存在しない。


 その時、俺はふと思い付いた小さな疑問を湖晴に投げ掛けてみた。


「よくよく考えてみれば白衣に限らず、全ての物はタイム・イーターで幾らでも複製出来るんじゃないか?」

「どう言う意味ですか?」

「いや、タイム・イーターの機能で『未来』から何か物質を取って来れば、『現在』では物が溢れかえるんじゃないか、って言う意味だ」

「まず、そもそもタイム・イーターは『未来』に行く事には対応していません」

「そうだった。じゃあ、『過去』からで。何回かしてるからそう言う可能性もあるよな」

「いえ、あれは交換していただけですので」

「交換?」


 誰と?物々交換なのか、通信交換なのか。いや、後者は無いな。それはゲームの中のお話だ。


「はい。『現在』と『過去』の物質を同質量分だけ空間ごと入れ替えているだけなんですよ」

「よくそんな細かい事出来るな」

「時間を跨ぐ空間移動機能の様な物ですね」

「成る程な」


 質量保存の法則とやらのせいだろうか。だが、人が時空転移している時はそんな物関係無さそうだしな。もしかして、俺達が時空転移する時も『現在』にいる俺達と同質量の空間の『過去』を入れ替えているのだろうか。俺には良く分からんな。


 暇なので次の疑問。


「よくよく考えてみれば」

「またですか」

「もし『現在』の人全員がタイム・イーターを持っていたら、『過去』は人だらけになるんじゃないか?」

「それは無いですね」

「即答かい」


 そもそも『現在』の人全員がタイム・イーターを持ってない訳だが、ここでは持っているものとして扱う事にする。と言うか、俺が今言った事が現実になったら・・・・・世界が相当カオスになるよな。いや、過去改変だらけで収集が付かなくなるかもしれない。


「何故なら、タイム・イーターは時空の歪と呼ばれる地点と『現在』を0距離で結ぶだけですから」

「?詳しく頼む」

「時空の歪はそんなに大量に存在する物ではありません。各時刻でも世界中に限られた数しかありません。例えば『現在』と、それと1分の時間差がある『現在<+1分>』から別々の人、もといタイム・イーターが時空転移をして『過去A』に行ったとします」

「おう」

「この場合、どんな事が起きると思いますか?」

「え?普通に時空転移出来るんじゃないのか?」


 今まで俺と湖晴がして来た様に。何の問題も無く。


 すると、湖晴は淡々と説明を続けて行く。俺もその説明に相槌を打ちながら、自身の脳内で様々な事柄を考えて行く。


「それが出来ないんですよ。2つの『現在』が掛け離れた時空間だとしてもそんな事は関係無いんです。問題なのは、この場合、同じ『過去A』に行ったと言う事なんです」

「そうか!つまり、同じ『過去A』の地点に2箇所から来た人達が重なるって言う事になるのか!」

「その通りです。ですが、もし本当にそうなってしまった場合、どうなるかは分かりません。2つの『現在』から来た人達が同一空間上に重なって存在する事になるのか、それとも片方が転移すら出来ないのか」

「何で分からないんだ?」


 何とかって言う偏差値がトンでもない学校を飛び級していた程の実力者である湖晴が分からない事が俺に分かる訳が無い。


 俺は湖晴に聞き返した後、湖晴の説明を黙って聞いた。


「タイム・イーターは玉虫先生の開発した最高傑作のマシンであり、この世に2つとして存在しないからです」

「だが、それっておかしくないか?」

「そうですか?」


 可愛らしく首を傾げる湖晴。


「その、前から言っている玉虫先生がどんな人なのかは俺は知らない。だが、その人がタイム・イーターを作ったのなら、2つ目以降も作れるんじゃないか?」

「ですが、『2つ目以降を作るとどんな影響が及ぶか分からないから作らない予定だ』と玉虫先生は言っていましたよ?」

「・・・・・まあ、難しい事は分からんな」


 1度、その玉虫先生とやらに会ってみたいものだ。湖晴の過去改変を手伝っている、と言えば新たな情報も手に入る事だろう。だが、まだ無理だ。もう少し時間にゆとりが生まれてからにしよう。


 ピンポーン


 その時、インターホンのやや高い音が家中に鳴り響いた。おそらく音穏と栄長が呼びに来たのだろう。2人は先に音穏の家に集まる、と言っていたからな。


「来たか」

「お兄ちゃーん!燐さんと音穏さん来たよー」


 1階から珠洲の呼び声が聞こえて来る。その声を聞いた俺と湖晴は階段を降りた。そして、俺は1階リビングで部屋の掃除をしていた珠洲に、念の為に声を掛けた。


「珠洲は良いのか?行かなくて」

「うーん。ワタシも本当は行きたいけど、一応受験生だからねー」

「でも、成績は問題無いんだろ?ほら、前に言ってただろ?『受験楽勝組』だったか?に入っていて、クラブも許可されているとかなんとか」

「あー、それは最後の大会までの話だよ。最後の大会はこの間の日曜日に終わっちゃったし」

「そうだったのか?」


 ・・・・・だから珠洲はあの日、珍しく俺に試合を見に来て欲しいと言ったのか。だから珠洲はあの日、俺が音穏達に連れて行かれる時に悲しそうな表情をしていたのか。だから珠洲はあの日、表彰状をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に突っ込んでいたのか。


 最後の大会だったのに。俺みたいな駄目兄貴が不甲斐無かったが為に、あんな事を・・・・・。


「うん。最後はお兄ちゃんに見て貰いたかったけど、お兄ちゃんも大変だったもんね」

「・・・・・ごめんな。1回も見に行ってやれなくて」

「?5回くらい見に来てくれてたじゃん」

「俺が?」

「うん」


 また俺の知らない俺がいた。この世界の俺は優しかったんだな。と言うか、珠洲の過去改変はする前とした後の世界が違い過ぎる気がする。確かにかなり多くの人と接したが、こんなにも変わるとはな。


 珠洲の根本的な人間性・性格、俺の行動等時間が経てば経つ程、過去改変前の世界しか知らない俺からすると違和感が満載だった。


 すると、家の外から音穏が俺の名前を呼んでいるのに気が付いた。


「次元ー」

「ああ、悪い。それじゃあ行って来る。昼飯は多分外で適当に食べて来ると思うから、俺と湖晴の分は用意しなくても良いぞ」

「うん、分かった。気を付けてね」

「勉強がんばれよ」

「ありがと。いってらっしゃい」


 俺は珠洲を家に残したまま、湖晴を連れて、玄関へと出た。見てみると、家の入り口の門の所にお洒落な服を着た少女が2名。勿論、音穏と栄長だった。やはり、この2人はそれなりにイケてる服をチョイスするよな。白衣しか着ない湖晴と違って。


「大変長らくお待たせ致しましたー」

「もー、次元遅いよー?もう100回くらい呼び鈴鳴らしたんだよー?」

「100回も!?」

「私が、ね」

「栄長が!?」


 何してるんですか!栄長さん!


「さて、冗談はこれくらいにして早く行きましょうか。今日は土曜日だから早めに行かないと混むかもしれないし」

「ここはそんなに都心ではないから大丈夫だと思うが、まあ、早いにこした事はないな」

「そう言えば、次元。自転車で行けば早いのに、何で急に歩きにしようって言い出したの?」

「え?いや、湖晴が自転車持ってないからな。今日の最重要人物を置いてきぼりにする訳にもいかないしな」


 湖晴は物をほとんど持って来る事なく俺の家に居候し始めたからな。自転車なんて持っている訳無い。


「2人乗りと言う手もあったはずだけど?」

「2人乗りは危険ですし、見つかれば警察の方に注意されてしまいますので」

「確かにそうね。今から行くお店に迎えるバスもバス停に来る時間的に利用出来ないし、やっぱり歩きが1番ね」

「そう言う事だ」


 全員で徒歩で行く事に納得した所で、いざショッピングモールへ(徒歩約1時間)。・・・・・きついな。きつ過ぎる。一体、帰宅部に何をさせる気だ。


「さーて・・・」

「・・・・・!?」

「どうした?音穏」


 何やら音穏から只者ではないオーラを感じた気がした。湖晴もそのオーラを察知したのか、湖晴の体が一瞬ビクッと小さく震えたた。


 すると、そんな音穏に影響されたのか便乗しているだけなのか、栄長まで怪しい目付きと怪しい手の動きをし始めた。かなり不気味だ。と言うか、普通に怖い。


「今日は湖晴ちゃんにどんな服を着せてあげようかなー・・・・・」

「湖晴ちゃんは元が良いから、きっと何を着せても似合うよねー・・・・・」

「え、えっと、お手柔らかに・・・・・」

「おい2人。目付きが怪しいぞ」


 少しずつ少しずつ湖晴に近付いて行く、2人の少女。湖晴もそれに合わせて後ずさりをしているが、そんな努力も次の瞬間には無駄となってしまった。


「やっぱり、湖晴ちゃんは胸大きいねー。もみもみー」

「-----!!!!!」


 突然、音穏が湖晴のその豊満な胸を揉み始めた。それはもう楽しそうに。音穏が湖晴の胸を両手で揉む度に湖晴の胸は激しく揺れ、かなり強調された。一方の湖晴は顔を真っ赤にして必死に抵抗していた。しかし、このモードに入ってしまった音穏から逃れる術は、今の湖晴には無かった。


 その時、


「ええい、この私より胸が大きいとはけしからんなー。私にも揉ませろー」

「----------!!!!!」

「・・・・・・・」


 ついに栄長まで音穏の変態行動に参戦。そして湖晴は音穏と栄長の魔の手から逃れる事は出来ず、ただひたすら胸を揉みしだかれて行くだけだった。しかも、その2人の勢いは湖晴の胸を揉むしだくだけに留まる事無く、服を脱がし始めた・・・・・かの様に思えた(実際は揉んでいるだけ)。


 俺もまた、そんな3人の姿を遠くから見守るしか出来なかった。まあ、見ていて楽しくなかった訳ではないので、良いとしよう。湖晴には申し訳ないがな。


 湖晴が2人から開放されたのはその5分程度後の事であり、その時の湖晴は全身から完全に力が抜け、顔は真っ赤になり、汗だく、息も荒いと言った、大変な状態になってしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ