第02部
【2023年09月23日10時18分30秒】
さて、音穏と栄長から胸を揉まれ続けていた湖晴が開放されて、その様子も少し落ち着いた所で、俺達はようやくショッピングモールに向かう事が出来た。
そして、1時間もの長旅を経た俺は、目的地である店に着くと同時に強烈な睡魔に襲われた。2日前に珠洲の過去改変、4日前に栄長の過去改変と今週は休息なんて物が全く存在していなかったからな。やはり心身共に疲れていたのかもしれない。
それに、もしかしたら風邪を引いてしまったかもしれないな。何やら少し頭がボーっとするし、全身がだるい。それ以前に、眠い。珠洲の過去改変前に雨に打たれ過ぎたからだろうか。
だがしかし、今日は寝る訳にはいかない。ここで寝たら、今日を楽しみにしていた3人に迷惑を掛けるし、せっかくここまで来たんだ。せめて一瞬でも良いので、湖晴の私服姿をこの目に焼き付けておきたい。
そして、お洒落で可愛らしい年頃の女の子用の衣服が大量に並べられている店内にあった椅子に男1人で座っている俺に、何処からともなく、音穏達の呼ぶ声が聞こえた気がした。
「次元どうしたの?疲れちゃった?」
「・・・・・ん?あ、ああ。俺は別に大丈夫だ」
「もぉ、だらしないなー、次元君は。男の子でしょー?」
「俺の事は気にせず、服選びを続けてくれ。俺はここに座って待ってるから」
2人が心配してくれている。別にまだ風邪を引いたとは限らないのだが、それでもやはり体の調子があまり良くない時に誰かが心配してくれると言うのは気分の良い物だな。その『心配してくれる誰か』が美少女なら尚更だ。
「体調が大丈夫なら、次元も湖晴ちゃんの服を選んであげてよ」
「俺が?」
音穏にそんな事を言われ、俺は視線を湖晴の方にずらした。湖晴は頭上に『?』を大量に浮かべながら、かなり困った表情で店内にある様々な可愛らしい服を適当に見ていた。
湖晴は別に白衣以外の服を着ても充分に似合う気がするのだが、何をそんなに悩むのだろうか。まさか、湖晴は今まで1度もお洒落をした事が無いのだろうか。男の俺には良く分からないが、年頃の女の子にとって、それはかなり致命的なのではないだろうか。
いや、もしかすると別の事で悩んでいるのかもしれない。主に服のサイズで。湖晴の胸周りの大きさは日本の一般的な女子と比べると半端なく違うからな。音穏と栄長もそれなり、と言うかかなりある方だと思うが湖晴はその更に上を行くサイズだ。
その時、俺の視線に気が付いたのか湖晴が俺の方をじっと見て来た。ふと目が合ってしまい、少し恥ずかしくなった俺は音穏達の方に視線を戻した。それと同時に湖晴もすぐに俺から目を離していた様な気がした。
「・・・・・いや、俺には女の子の服の事は良く分からんな。と言うか、俺が選んでもろくな事にはならないと思うぞ?音穏と栄長が選んだ方が良くなるだろうしな」
「えー。せっかくいるんだから男の子の意見も聞いた方が良くない?」
「そう言われましても・・・・・」
「まあ、たとえその男の子が常にぼっちの次元君だとしても、ね」
「おい、栄長。それはどう言う意味だ」
いつも通り、栄長に煽られる俺。
「それに、湖晴ちゃんは次元君がいるからこうして私達と・・・」
「ストーップ!燐ちゃんそれはストーップ!」
「音穏ちゃん!?急に何を・・・・・って、ひぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「どうしたんだよ、いきなり」
栄長が何かを言い掛けた時、音穏が栄長の両胸を鷲掴みして、それを制止した。そして、そのまま・・・・・これより先は自主規制させて貰おう。音穏によって、湖晴の時よりも過激な事がそこでは行われていたからな。
さて、何で音穏はそんな方法で、そこまでして栄長の台詞を止めたかったのか分からないが、栄長は今何を言い掛けたのだろうか。
『湖晴ちゃんは次元君がいるから・・・』までしか聞こえなかったが。どう言う意味だろうか。聞いてみる事にする。
数10秒後、俺がその事を問い始めた頃には音穏も栄長の両胸から手を離しており、栄長も音穏によって乱された服を元通りに直していた。
「俺がいると何が起きるんだ?」
「ふぇ!?い、いや、何も起きないよ!?」
「そ、そうよ!次元君なんて別にいなくても良かったんだよ!?」
何故か焦る2人。と言うか、栄長さん。その台詞はどんなツンデレですか。
すると、どうしても会話を変えたかったのか、音穏が大声を出して俺に話し掛けて来る。
「そんな事よりも、次元!」
「どうした?」
「今日の私と燐ちゃんの服装については何も感想無し?」
「え?」
突然の音穏の台詞にやや困惑する俺。栄長の方を向いてみると、栄長も音穏の言った事に同意したのか何度か頷いていた。
「感想って・・・・・?」
「せっかくこんなに可愛い幼馴染と、学校一の美少女がお洒落をしているって言うのに、次元は何か言う事無いの?」
「・・・・・ありがとうございます・・・・・?」
「ちっがーう!」
「ゴファ!」
俺の台詞の何がいけなかったと言うのか。俺なりに真面目に考えて返答したつもりだったのだが、音穏から強烈なエルボーを頂いてしまった。俺の病態が悪化するかもしれないだろ、どうしてくれるんだ。
「やっぱり、次元君は本当にフラグクラッシャーだねー。今、この先にあったはずのイベントフラグをいくつへし折ったと思ってるの?」
「現実には選択肢なんて出ないし、そもそも俺が誰とのフラグを何時立てたと言うんだ・・・・・」
「そりゃあ勿論・・・」
「いや、言わなくて良い」
と言うか、音穏がいる前でギャルゲーの話をするなよ。栄長が本当は『ただの完璧超人ではない』と言う事がバレるだろ。
「そんな事よりも、か・ん・そ・う!」
「乾燥?」
「感・想」
「完走?」
「私も音穏ちゃんみたいに殴るよ?」
「すみません」
さて、適当に誤魔化す事も失敗し、どうやら俺は2人の着ているお洒落な格好について色々と感想を述べなければならないらしい。どうしたものか、そんな無茶振りをされるとは思ってもいなかったので、全く考えていなかった。
取り合えず俺は、音穏の全身を見回した。
いつも通り、茶色の短髪に赤いリボンが2つ付いている事は変わりないが、やはり制服と違って女の子らしい服を着るとかなり映えるのが音穏なのだ。
少しずつ寒くなって来た今日この頃。そんな中、音穏は季節通りに少しサイズが大きめの服を着て、更にもう1枚別の衣服を軽く羽織っている。
下はスカートを履いており、それはぎりぎり中が見えない程度に調整されていた。エスカレーターや階段だと下位にいる人から簡単に見えてしまうと思うのだが、良いのだろうか。
それはともかく、音穏の服装に関するまとめ(俺個人的な)。今まで意識した事は無かったが、太股が素晴らしいです、はい。俺は別に太股フェチなどではないが、今の音穏の姿を改めて確認すると、どうしても太股に目が行ってしまう。あれは、いわゆる絶対領域とか言う奴だろうか?
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
次に栄長だ。栄長は音穏とは逆に、今の時期では少し寒いのではないかと思ってしまう様な薄手の半袖シャツを1枚着ていた。しかも、その着方が妙に良い(エロい)。
男の俺だから言える事なのだと思うが、一般的な女子と比べるとかなり大きい栄長のその胸が充分に強調されており、しかもその谷間がシャツの向こう側にうっすらと見えるのが確認出来た。
あと、栄長も音穏同様にかなり短めのスカートを履いていた。女の子の今時の流行りなのだろうか?俺には良く分からないが、見ていて全く飽きないのでどんどん着て貰いたい。
それに、あの長い靴下みたいな・・・・・ニーソだったか?もかなり似合っていて見応えがある。それはまるで、周囲の男達を自ら誘惑するかの様にも思えるくらいに。全体的に、流石は原子大学付属高等学校1の人気者、と言った所だろうか。
「・・・・・えっと、燐ちゃん。私そろそろ・・・・」
「・・・・・うん。私もかなり恥ずかしくなって来た」
2人が何かを話していた様な気がしたが、そんな事はどうでも良い。2人とも実に素晴らしい服装と言えるだろう。いや、いくら断言しても足りないくらいだ。
2人が今誰かに告白したとすれば、その相手は一発でノックアウトだろうな。そんな奴、いるなら羨ましいな。つまり、それくらいに、2人の服装はイケてるのだ。
元々の素材が優秀な2人がお洒落をすれば更に良くなる。胸が上手く強調され、太股も完璧。あまり過激な表現をすると俺がセクハラ容疑で捕まり兼ねないので、あえて深い所までは言わないが、これだけは言わして欲しい。
「ありがとうございます!」
「黙れ変態!」
「ゴファ!」
思わず心の声を外界に漏らしてしまった俺の腹部を、栄長が回し蹴りして来た。どんな身体能力だ。と言うか、内臓が破裂したらどうしてくれるんだ。
あ。そう言えば今一瞬だけ、栄長が回し蹴りをした時にそのスカートの内部が見えた気がしたが・・・・・腹部の痛みのせいでよく思い出せない。畜生!何て事だ!
「何分間女の子の体を舐める様に見回してるのよ!変態!そんな風に見られたら私でも恥ずかしいわよ!変態!大事な事なので2回言いました!」
「そ、そうだよ次元!しかも、やっぱり感想は『ありがとうございます』だったし!」
2人から色々と言われる俺。しかし、そんな事はお構い無しに、俺は今の自分の中にある感動と興奮を大声に出して発散した。
「2人のその格好は・・・・・そのくらい良かったんだぁぁぁぁぁ!!!!!」
その瞬間、俺は取り返しも付かない様な変態の烙印を押される事になった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
何分が経っただろうか。結局音穏と栄長にはまともな感想を言う事が出来なかった。俺的には、真面目に考えた末の『ありがとうございます』だったのだが、その感想ではやはり2人には不満足だったらしい。
その後、2人は本来の目的通りに湖晴の元へと帰って行き、湖晴と一緒に3人で服を選び始めた。皆楽しそうだ。
・・・・・微笑ましいなあ。俺が今、こんなにも微笑ましい光景を見る事が出来ているのは湖晴がいたからだろう。湖晴がいたから音穏や栄長の過去改変をする事が出来、こう言う幸せな世界を気付く事が出来たのだ。
そう言えば、俺がそんな3人を見ている最中に、何度か湖晴と目が合ったがすぐに逸らされてしまったな。俺がさっき音穏と栄長に大声で言ったあの台詞が聞こえてしまっていたのだろうか。変な風に誤解されていなければ良いのだが。
そんな時、再び俺の事を呼ぶ音穏の声が聞こえて来た。
「次元ー。ちょっと来てー」
「・・・・・何だ?」
呼ばれた俺は音穏の元へ向かう為に、人気のほとんど無い店内を歩いた。
「ここに立って?」
「何故?」
「良いから良いから」
「?」
音穏の指示通り、俺は試着室らしき小部屋の数メートル前に立った。先程から湖晴の姿が見当たらないので、おそらく湖晴がこの試着室らしき小部屋の中に入っているのだろうが、俺をこんな所に立たせて、音穏は一体何をさせるつもりなのだろうか。
「それじゃあ、燐ちゃん。お願い」
「うん」
「何が始まるんだ?」
音穏と栄長が目配せをした後、栄長がその試着室のカーテンをゆっくりと開けた。
その次の瞬間、俺は感じた事もないくらいの衝撃と感動をこの身に覚えた。俺が見たその先には、今まで見た事も無い様な美しい少女が1人立っていたからだ。
その美少女は普段の白衣姿ではない、年頃の女の子らしいお洒落な服を来ている照沼湖晴本人だった。




