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Time:Eater  作者: タングステン
第四話 『Sn』
77/223

第11部

【2023年09月19日22時47分50秒】


~上垣外珠洲視点~


 殺す殺す殺す殺す殺す・・・・・。


 やっぱり、ワタシの思っていた通りだった。最近、おにぃちゃんは変わってしまった。そんな原因を作ったのは紛れもなく、アイツ等だ。よくもワタシの大切なおにぃちゃんを・・・・・。


 もう我慢の限界だ。絶対に許さない。おにぃちゃんがこれ以上おかしくなる前に、アイツ等をこの世から抹消しないと。対象は茶髪リボン、青髪白衣、金髪ツインテール、赤毛ポニーテール、この4人だ。


 それはそうと、何で青髪白衣はまだ生きてるの?今朝、テーブルの上に醤油瓶置いて、その中にこっそりとヒ素を混ぜたおいたのに。普通に使ってれば充分に致死量に到達するはずだ。それなのに、何で?


 おにぃちゃんは味付けに鈍感で、そもそも調味料を使う体力すらも惜しむ様な人だから、基本的に醤油等の調味料は使わない。だから、青髪白衣だけが死ぬはずの完璧な計画だったのに。


 もしかして、青髪白衣って普通の人間じゃないのかな。初対面の時には血吐いてたり、妊娠出来ないみたいな事を言ってた様な気がするけど。それと関係あったりするのかな。まあ、良いや。ワタシはおにぃちゃん以外の他人には興味無いし。どうでも良い。


 それと、お風呂場でおにぃちゃんにアピールした時の事だ。何で、ワタシが昨日今日と学校に行っていない事がバレた?朝早くに念の為、学校には休みの連絡を入れておいたはず。それなのに何で。


 おにぃちゃんの事は上手く誤魔化せたみたいだったけど、問題はそこじゃない。垣花だったっけ?が今日家に来たっておにぃちゃんは言っていた。そいつは何かを知っていると思う。


 よくよく思い出してみれば同じクラスにそんな奴がいたような気がするけど、上手く思い出せない。と言うか、全然記憶に無い。人付き合いが良いワタシが見落とすくらいだから、かなり影の薄い奴なのかもしれない。


 顔も思い出せないから、殺そうにも殺せない。と言うか、今回のワタシの計画での殺害予定は4人だ。それ以上死人を増やすと、バレる可能性がある。目的は少しでも簡潔に、且つ早急に。


 茶髪リボンと金髪ツインテールは何時でも殺せるから良いとして、問題は残りの2人だ。


 青髪白衣は今朝のヒ素の件があるから、得体の知れない存在だ。何をして来るかが全く予想出来ない。取り合えず、おにぃちゃんが学校に行ってる間にトラップでも仕掛けておいて、適当に死んで貰おう。


 何が良いかな。なるべくなら家を血で汚したくはないけど今回は仕方無いかも。ああ、掃除が大変そうだな。死体はどんな感じにするのが1番残酷かな。バラバラか、蜂の巣か、首吊りか、串刺しか、それともその全部か。何でも良いや。死んでくれれば。


 そして、問題のもう1人。赤毛ポニーテールだ。アイツは何だ。何でおにぃちゃんの事をそんなに気に掛けているんだ。おにぃちゃんの本当の良さなんて何も知らない糞ビッチのくせに。


 おにぃちゃんの良さは普通の人間には分からないはずだ。おにぃちゃんは謎の主義を持っていて、ロングスリーパーで、何もかもが普通。そして、そんなおにぃちゃんの本当の優しさを知っているのはこのワタシただ1人のはずなのに。


 あー、死ね死ね死ね。アイツだけは他よりも酷い死に方をして貰おう。真っ二つにしたりするのが良いかも。それとも、プレス機でペシャンコにする方が良いかな。得体の知れない青髪白衣とは違って、多分普通の人間だから死ぬよね。跡形も無く、無残に。アハハハハハ!


 それに、まだ1回しか会ってないけど、アイツを見てるとおにぃちゃんの件とは関係なく個人的に何かイラつく。この感情は随分昔にも感じた気がするけど、何だったっけ。茶髪リボンに対する憎しみと同じ物と考えて良いのかな。


 取り合えず、現状はそんな感じだ。凶器は既に調達済みだし、退避経路も設定済み。トラップもある程度は作って仕掛けておいた。完全完璧な計画。おにぃちゃんの理想通りのワタシとして充分な計画。変な邪魔が入らない限り、全員死ぬ。


 そして、ようやくワタシとおにぃちゃんの2人だけの夢の世界が・・・・・フッフフフ・・・・・アハハハハハ!


 何でワタシがそんなにおにぃちゃんの事が好きなのか、その事についても説明しておこうと思う。


 11年前、ワタシは記憶喪失だった。11年前と言うとワタシはまだ4歳な訳だけど、それよりも前の記憶が完全に無かった(例外として、必要最低限の生活は出来たし必要最低限の日本語は話せた)。


 ワタシの名前『珠洲』だけは覚えていたけど、他には何も思い出せなかった。苗字も、家族の顔も、自分が何でここにいるのかも、自分の好きな人は誰だったのかも。何もかも全て。


 ワタシが目を覚ましたのは病室のベッドの上だった。記憶喪失だったワタシには、何がどう言う経緯で自分がこんな所にいるのかが全く理解出来なかった。


 暫くすると、医者と看護師が入って来た。その2人がワタシの今のお父さんとお母さん、つまりは上垣外夫妻だった。


 2人はワタシに色々と尋ねて来ると同時に何でワタシがここにいるのかを話してくれた。


 記憶が無いワタシからは何も伝える事は出来なかったけど、どうやらワタシは車に撥ねられて、その後救急車で病院に搬送されたらしい。おそらく、その事故の際に記憶喪失になったのだろう。迷惑な話だ。幸いな事に身体的な大怪我は無かったらしいけど。


 2人の困った様な会話が聞こえて来る。少し話を聞いていると、近日中にワタシは養護施設に移されるらしい。しかし、ワタシはそれを拒んだ。


 それに、2人共ワタシの事を養護施設に移すのには反対していた。記憶喪失のワタシがそんな所に行ったら、逆に悪影響が出るのではないか、そう考えていたらしい。今思えば、確かにそうかもしれない。


 そして、ワタシが病院で入院したまま数日間が経った。病院の中で話し合いを行った結果、ワタシは上垣外家に引き取られる事になった。記憶が無い為、身元が分からず、それまでの親も名乗り出る事は無かったかららしい。


 上垣外家に引き取られたワタシは、入院後、2人に車で家へと連れて行かれた。前の家がどんな感じだったかは覚えていないけど、結構立派な家だ。一軒家だ。2階建てだ。庭もある。2つ隣の家は和風屋敷みたいだ。


 上垣外家には既に子供がいた。それが、ワタシの大好きなおにぃちゃんである上垣外次元。おにぃちゃんもワタシが引き取られる数年前に引き取られたばかりの養子だった。まあ、ワタシとおにぃちゃんがその事を知るのはもう少し後なんだけどね。


 最初はお互いに『誰だコイツ』みたいな雰囲気の中、過ごしていたけど、次第にそうでもなくなった。


 おにぃちゃんはワタシの事を実の妹のみたいに接してくれて、記憶喪失した分の記憶を取り戻す為に(おにぃちゃんはその事を知らないので無自覚で)色々と世話をしてくれた。細かい所は省略。そして、次第にワタシの心はおにぃちゃんに奪われて行った。


 ある日、ワタシはおにぃちゃんに聞いた。『おにぃちゃんの好きな女の子ってどんな子?』と。これは勿論、ワタシがおにぃちゃんに好かれる為だけに、おにぃちゃんの理想になる為だけに聞いた事だ。


 すると、おにぃちゃんはやや戸惑いながらも『頭の良い子』と答えた。これが今のワタシ、優等生上垣外珠洲を作った要因だ。


 それから、ワタシはおにぃちゃんの理想通りに生きて来た。おにぃちゃんに好かれたい一心で。急に引き取られたにも関わらず、こんなワタシに優しくしてくれるおにぃちゃんと何時までも一緒にいたくて。


 この頃だった。ワタシがおにぃちゃんの食生活について口を出すようになったのも。ワタシ自身、少し気にし過ぎな気もしているけど、それでもやはりおにぃちゃんには栄養を沢山摂ってもらって、何時でも元気に過ごしていて欲しかったから。でも、何でそんなに栄養を気にしているんだろう。ワタシは。抜けている記憶にそれがあるのかもしれないけど、無いものは無いのだから仕方無い。


 日が経つにつれて、ワタシはおにぃちゃんの事をよく観察するようになった。おにぃちゃんのありとあらゆる行動を監視し、その統計を取った。おにぃちゃんの寝顔の写真もこっそりと沢山撮らせて貰った。幼いワタシの唯一の楽しみはそんなデータと写真を眺める事だった。


 何時までもこんな日々が続いて、そして、何時かはおにぃちゃんと・・・・・そんな風に考え始めた時、ワタシの幸せな日々に大きな障害が現れた。


 それが茶髪リボンだった。何だ、アイツは。いきなりあの和風屋敷に引っ越して来たと思ったら、おにぃちゃんにべったりだし。ワタシのおにぃちゃんに触るな!そして、ワタシにも触れるな!汚れる!


 それからはおにぃちゃんと過ごす時間は急激に減って行った。おにぃちゃんも学年が上がる毎に忙しくなり、通学下校放課後は茶髪リボンといて、帰宅後と休日は昼寝ばかり。それはまるでワタシの事を忘れているのではないかと思ってしまうくらいに。


 しかも、ワタシは小学校はおにぃちゃんと同じだったけど、中学はお父さんとお母さんの意向でレベルが高い中学に通う事になってしまっていた。


 だから、高校こそはおにぃちゃんと同じ学校に通う為、幾つもの推薦を全て蹴るつもりだ。推薦なんて、世間体なんてどうでも良い。ワタシにはおにぃちゃんだけが必要なんだ。


 そして、ワタシは今までのどうしようもないストレスを、射撃部と言うクラブ活動で発散していた。だけど、それだけでは物足りず、休日は少し遠出をして日頃のストレスを全て解消していた。


 中学生になった頃、お父さんとお母さんが仕事の都合上で海外に行く事になった。2人は一緒に着いて来るか、と聞いて来たけどワタシはそれを拒否した。勿論、おにぃちゃんの分も。


 実はこの時、ワタシにはある名案が浮かんだのだ。お父さんとお母さんがいないと言う事は、家では常におにぃちゃんと2人きり。しかも、家事をする必要があるから、おにぃちゃんとの共同作業も夢ではないし、ワタシがお嫁さん風に振舞う事も出来る。そう考えたのだ。


 結果は良好。全てがワタシの思う様に進んだ。


 茶髪リボンが来る前と同じくらい、いや、それ以上の時間をおにぃちゃんと過ごす事が出来る様になった。ワタシはありとあらゆる雑用をこなし、おにぃちゃんの理想の為におにぃちゃんが自慢出来る様な妹として振舞ってきた。


 だが、ここでもまたワタシの計算に邪魔が入った。それが青髪白衣。何だよ、急に現れたくせに居候って。モブが。死ねよ。ワタシとおにぃちゃんの楽園をじゃまするな。


 そして、更にそれに追撃するかの様にワタシに不幸は降り注いだ。金髪ツインテール、赤毛ポニーテール・・・・・死ね死ね死ね死ね死ね。いや、殺すけど。充分に痛め付けてから殺すけど。


 ワタシはこの家に来てから今までずっとおにぃちゃんの理想どおり、おにぃちゃんの為に生きて来た。それなのに。何でこの世界はそれを邪魔するんだ。いっその事、世界滅亡でもすれば良いのに。


 さっきだって、恥ずかしかったけどおにぃちゃんにアプローチしたのに。男の子はああ言うのが利くって聞いた事があるけど、純粋なおにぃちゃんには相変わらず効果はなかった。中学3年生にしては結構自身のある体を持っていたつもりだったけど、反応無しだったし。


 それに、初めておにぃちゃんに怒られた。『いい加減にしろ』って言われた。『珠洲の事は兄妹として好きだ』って言われた。それってつまり、ワタシの事を恋愛対象として見てなかったって事?今まで、ワタシは11年間ずっと頑張って来てたのに。


 ・・・・・あれ?もしかして、これって、単純に、ワタシの、勘違い?


 本当は、ワタシっておにぃちゃんに『必要とされてない』の?

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