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Time:Eater  作者: タングステン
第四話 『Sn』
74/223

第08部

【2023年09月19日18時58分10秒】


「まあ、確かにその事は気になるには気になる訳だが、何で今更?」


 湖晴が唐突に『今までの3回の過去改変の影響を知りたくないか』なんて言う事を言って来たので、驚いた俺は逆にそんな風に聞き返した。


 そして、湖晴は拍子抜けしたかのように、俺の質問に答える。


「え?そんなに気になっていなかったんですか?」

「いや、気になってはいる。だが、そうじゃなくてだな・・・」


 どう説明したら良いだろうか。俺は確かに、この1週間の間に自分がして来た事の意味を知りたい。それは、3回の過去改変がそれぞれどの様にこの世界に影響を与えて来たか、についてだ。


 しかし、俺にとっての3回の過去改変の意味は、既に別の物へと変化している。俺は過去改変によって3人の女の子の不幸な境遇を清算し、その人生を救った。つまり、俺の過去改変の目的は『世界平和』から『人助け』に変化しているのだ。


「俺は湖晴の力を借りて、音穏、阿燕、栄長の3人を救う事が出来た」

「・・・・・・・」

「それがこの世界にどの様に関係しているのかについても、勿論気になる。だが、俺にとっての過去改変はそうじゃない。俺は3人を救えただけで充分なんだ」

「確かに人助けは大事ですけど・・・」


 そう。俺は、現代日本の様に平和な日々が何時までも続けば良いと思っている。だが、それ以前に俺はあの3人を救えた事に対して満足しているのだ。この事が湖晴には伝わっただろうか。


「(だったら、次元さんと話す口実が無くなるではないですか)・・・・・・・」


 暫く黙り込んでいた湖晴が、ボソッと何かを言った。


「ん?」

「いえ、何でもありません」


 珍しいな。湖晴が1人言なんて。本人が『何でも無い』って言っているから、特に追求はしないが。でも、何故だろうか。湖晴がとても悲しそうな表情をしている様に見える。そんなに過去改変の影響について話したかったのか?


 夕飯の時間まではまだ数分はある。時間になればリビングに降りれば良いから、せっかくなので湖晴の話を聞いてみるか。それで湖晴の機嫌が直るなら、尚良し。


「でも、そうだな。やっぱり気になるな。これからの事もあるし」

「本当ですか!?」

「お、おお」


 湖晴がズイッと俺の方に勢い良く近付いて来た。目をこれ以上無い位に輝かせて。そんなにか!?そんなに過去改変の影響について話したいのか!?少なくとも、楽しい話しではないと思うぞ!?


「ではお話しましょう。これまでの3回の過去改変がこの世界にどの様な影響を及ぼすとされていたのかを」

「よろしく頼む」


 こうして、俺と湖晴の会話が始まった。いや、さっきまでも会話をしていた訳だが、本題はこれからなのでここからを会話とみなす。


「はい。取り合えず、話す順序は『現在』の時系列順で宜しいですか?」

「ああ。構わないよ」

「それでは、まずは音穏さんが起こしてしまった重犯罪事件『研究所連続爆破事件』です」


 音穏の重犯罪事件『研究所連続爆破事件』。水素爆弾を使用し、他の街と比べても研究所が多目の、ここ原子市で次々と研究施設と爆破して行ったと言う重犯罪事件だ。動機は『復讐』だろう。


「この事件は研究機関が大量に存在するここ原子市であるからこそ発生してしまった事件だと思われます」

「音穏の目的は両親の『復讐』って事で良いんだよな?」

「はい、おそらくはそうでしょうね。音穏さんはご両親が亡くなった原因である事故の大元を作った人物の殺害をしようとしたのでしょうね」

「でも結局、その犯人は捕まってないんだろ?」


 そんな話は今までに1度も聞いた事が無かったからな。過去改変前も、過去改変後も。


「いえ、そうとは限りません」

「?どう言う事だ?」

「もしかすると、その犯人は既に逮捕されているのかもしれませんし、音穏さんが使用した爆弾で死亡しているのかもしれません」

「と言う事は、『音穏はその犯人の素性を知らなかった』って事になるのか?」


 普通『復讐』ならば、その対象者を殺害出来た時点で犯罪行動を終了させるはずだ。別に復讐のセオリーなんて知らないが、刑事物のドラマとかでは大抵はそうだった様な気がする。


 つまり、この事を前提に考えると、音穏は犯人の素性を知らなかったから無差別に研究所を爆破していった。もし知っているのなら、その人物が所属している研究所を真っ先に狙うはずだからな。


 ・・・・・ん?何でわざわざ研究所を狙う必要があるんだ?その人物の自宅でも構わないはずなのに。・・・・・まあ、あの世界の音穏には何か考えがあったのかもしれないが、もう聞けないからな。気にする必要もないか。


「そうとも言えますね。何処でどうやってそんな事を知ったのかは分かりませんが、その犯人の方が原子市にある研究所の何処かにいると言う事は知っていたのかもしれません」

「まあ、そうなるよな。どの研究所も水素に関係していたとは言え、ほとんど無差別に破壊して行ってたみたいだし」


 そう。あの晩、俺が音穏を見つけた丘から見えていた光景は、まさに無差別破壊の後の悲惨な光景だった。


「それで、この事件はこの世界にどの様な影響を及ぼすはずだったんだ?」

「勿論、多くの重要な研究機関が消失してしまうと言う事もこれからのこの世界の科学技術に多大なる影響を及ぼすとされていた、と言う説もありますが、本当の理由はもう1つあります」

「本当の理由?」

「はい。実はあの夜、音穏さんによって『爆破されなかった研究所』が1つだけ存在しているんです」

「そうだったのか?」


 その研究所はかなり幸運だな。1軒だけ残るなんて。と言うか、原子市って全体で幾つ研究所があるんだ?確か、北部にはかなり多くの研究所が密集していたはずだが、それ以外の事は俺は何も知らない。


「その研究所こそが、『この世界から失われてはいけない存在』だったのです」

「何か、スケールが急に大きくなったぞ」


 どんな研究所やねん。その研究所は。


「と言うか、そんなに重要な機関を音穏は最後まで残していたのか?」

「爆破されて行った研究所には規則性が無く、完全にランダムであった為、爆破されなかったのは運が良かっただけだと言えます。勿論、他の要因もあったのかもしれませんが」

「それで、その研究所ってのは何をしていたんだ?」


 そんなに重要な研究所ならば、何か表沙汰にされていない様なヤバい研究をしていそうな物だが、気になった俺は一応聞いておいた。人体実験等のグロッキーな研究はお止め下さい。と言うか、それは法律違反です。


「『時間』を研究する機関である事は判明しています」

「『時間』?それって、つまり・・・」

「タイムトラベル、の事でしょうね」

「俺達以外にもタイムトラベラーが・・・・・?」


 おいおい、それは初耳だぞ。確かに俺は湖晴と出遭ってから、この世界の裏を幾つか知った。そして、この世界が今まで俺が想像していた物とは多きく異なっている事も知る事が出来た。


 だから、俺達以外にもタイムトラベラーがいても何の疑問も浮かばないと思っていた。だが、今はそんな事にも気を取られた。


「いえ、それは無いでしょう。タイム・イーターは世界に1つしか無い存在であり、玉虫先生の最大の発明品です。無論無、玉虫先生しかその製造方法は知らないはずです」

「え?でも、そうなるとその研究所には玉虫先生ってのが、いるって事になるんじゃないのか?」


 タイムトラベラーは俺達以外にいないと言う湖晴の台詞は一先ず置いておいて、もう1つの新たな問題について俺は問う。と言うか、久し振りに話に出て来たな。玉虫先生。


「はい。そうなりますね」

「そうなるのかよ!」

「と言いますか、あの研究所は玉虫先生の勤め先ですし」

「マジか!意外と近くにいたんだな、玉虫先生!」


 まさか、同じ街に住んでいるなんて思いもしなかったよ!でも、それはつまり、湖晴の住んでいた場所がかなり近くにあると言う事であり、俺の家に居候する必要は無いって事になるんじゃないのか?俺としては、こんなに可愛い女の子が屋根のした1つ下にいるなんて事自体が既にラッキーイベントなので、かなり嬉しい訳だが。


「近くとは言っても、研究所は原子市の北部区域の更に端。そして、次元さんのご自宅は南部区域。つまり、ほとんど別の街にあると言っても過言ではありません」

「え?そうだったのか」


 意外と南北に長いのが原子市の特徴なのだ。流石にチリみたいに南北に長い訳ではないが、比率的には長野県程度だろう。縦横の長さの比率的には!


「取り合えず、音穏さんの件はこれで宜しいでしょうか?」

「ああ。ありがとな」


 音穏の件について1段落着いた所で、湖晴が1言言って締め括る。俺もそれに同意した。


「次は阿燕か」

「そうなりますね。阿燕さんの重犯罪事件は『連続通り魔事件』としていましたが、実際には『連続復讐殺人事件』の方が近いでしょうね」

「俺が阿燕の過去を聞いた限りでは、確かにそうだな」


 阿燕の重犯罪事件『連続通り魔事件』もとい『連続復讐殺人事件』。凶器は拳銃1丁のみ。阿燕が自らの人生を壊滅させた4人の犯人を次々と路地裏で殺害して行ったと言う重犯罪事件だ。これも、音穏の時同様に犯罪動機は『復讐』だろう。


「阿燕は過去にお姉さんを殺害され、更に数年前に右目の視力を失った。そして、その犯人達4人に復讐をしようとした。いや、復讐した」

「現に、4人の内の3人はこの世界でも既に死亡していますからね」

「でもこの事件ってよく考えてみれば、大変な事件なのは確かだが、世界単位で何かに関係する事では無いんじゃないのか?」

「いえ、意外とそうではありません。実は音穏さんの件よりもよほど大変であったりします」

「そんなに!?」


 音穏の重犯罪事件よりも世界単位で不味い影響を及ぼしてしまう恐れがあったのか。でも、言い方は悪いかもしれないが、流石に犯罪者4人を殺した程度で世界が滅亡したりする訳ないだろ。つまり、俺が知らない所で何かが裏で関係しているって事だろうか?


「はい。阿燕さんに殺害・殺害未遂をされた方々は全員元々、とある科学結社に所属していたと言う記録があります」

「また科学結社か」


 何回登場すれば気が済むんだ。科学結社よ。


「裏で色々と関係してくるのが科学結社ですからね。仕方無いですよ」

「それで、今はその4人は・・・・・3人は死んでるのか、じゃあ、死ぬ時までその人達はその科学結社に所属していたのか?」

「いえ、殺害されるかなり前に既に業界を追放されていると言う記録もありましたのでおそらく、阿燕さんのお姉さんを殺害した事が原因で追放された物であると考えられます」

「それもそうか。いくら闇の組織とは言え、犯罪者を置いておくのは気が引けるもんな」


 別の科学結社の栄長はおそらく例外なのだろう。理由は色々考えられるが、父親が組織の№1である事が主な要因だろう。・・・・・でも、この世界では栄長は誰も殺してないよな?俺の過去改変は成功したよな?


「その後、追放された4人の間に何らかの問題が発生し、その内の3人は強盗犯に、残った1人は更正して警察官になったと言う事ですね」

「その1人はどう言う経緯で警官になったんだろうな」


 犯罪者になった後に、警察官になるなんて相当だぞ。でも結局、過去改変前の世界では阿燕の右目の視力を奪うと言う失態をしてしまっている訳だが。


「話を戻そうか」

「そうでした。この4人が科学結社に関わっていると言う事までお話しましたよね?」

「ああ」

「この事が関係している事により、阿燕さん、つまりはごく普通の一般人がその4人を全員殺害したとします」

「随分斬新な例えだな」


 阿燕が殺人者呼ばわりされるのは少々気が引けるが、実際に阿燕は過去改変前にその3人を殺している。無かった事になっているとは言え、事実は事実だ。それに、今は話を進めなければ何も始まらない。


「すると、どうなるか分かりますか?」

「いや、全然」


 逆にその少ない情報で何を分かれと仰るのですか。


「今は組織の人間ではないとは言え、元科学結社の一員が一般人に4人も殺されたんですよ?裏で何か別の科学結社が関係していると考えてもおかしくはないはずです」

「え?と言う事は、阿燕も科学結社の1人って事になるのか?」


 湖晴の今の台詞を聞くと結論はそうなってしまう。でも、そんな素振りを阿燕は一瞬たりとも見せなかったぞ?いや、たとえそうだとしても見せる訳無いか。栄長だって、俺が今日屋上でその戦闘シーンを発見しなければバレなかった訳だしな。


「しかし、実際には違いました。阿燕さんは真の一般人です」

「だったら問題ないじゃないか」

「これが逆に不味い事になるんです」

「何で」


 問題点なんて皆無と言っても過言ではないくらい無いだろうに。世界単位でこの事件を考えると、『女子高校生が復讐の為に4人の男性を殺した』程度にしか捕らえられないはずなのに。何が逆に不味い事になると言うのか。


「科学結社同士の戦争はかなり過激です。少なからず、この世界に影響を及ぼします。勿論、戦いが長引けば長引く程」

「ん?あ、ああ。そうなのか?」


 何でいきなり戦争の話に?まあ、良いか。


「そこで、思い出してみて下さい。4人の犯人のいた科学結社の目的を」

「えーっと、『阿燕が裏でどの様な科学結社と関わっているか』だったか?でもそんな事実は無いんだろ?」

「事実が存在しないと言う事はつまり、『その事を事実であると言う事を証明出来ない事』に繋がるんですよ?」

「?」


 どう言う意味だ?言い回しがくど過ぎて理解出来ない。


「阿燕さんが何処かの科学結社に所属しているのなら、その科学結社が名乗り出れば争う事無く、全てが済む話です。しかし、その様な科学結社は存在しない。つまり、『阿燕さんがどの科学結社にも所属していない』と言う事実を証明出来ないのです」

「そうか!そうなると、その4人が元々所属していた科学結社は他の全ての科学結社を攻撃する必要がある!」


 真実を知る為の方法は他にも多々存在するだろうが、湖晴の言い方を聞く限り、おそらくその方法は『攻撃をして力ずくで聞く』が1番手っ取り早いのだろう。だから、事実確認が出来ない状態場合、科学結社がかなりの規模で敵対関係に発展してしまう。


「はい。ようやくお分かり頂けましたか。その通りです。即ち、科学結社全面戦争に発展するのです」

「関連性が無さそうに見えて、それって1番ヤバイだろ」


 『争い』とか『いがみ合い』等と言う表現ではなく『戦争』と言っている辺り、その規模はかなり広範囲の物なのだろう。規模だけでなく、周囲へ及ぼす影響は俺なんかでは想像が付く訳もない。


「ある意味ではそうとも言えます。それに、この様に因果関係と言うのは冷静に物事を判断していけば、ある程度は見つけ出す事が出来るのです。そして、簡単に断定出来る物でもないのですよ」

「なるほどな」


 何故か哲学的な終わり方をしたが、俺と湖晴の話はまだ続く。次は栄長の件だ。

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