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Time:Eater  作者: タングステン
第四話 『Sn』
72/223

第06部

【2023年09月19日18時46分43秒】


 プルルルルル・・・・・


「・・・・・何だ・・・?」


 過去改変作業の帰りに蒲生と遭ってしまい、挙句の果て、喫茶店で膨大な時間を消費してしまった俺は、その後すぐさま家へと直行した。そして、家の前で珠洲のクラスメイトの垣花とも会って、珠洲の学校の配布物を受け取った。


 ・・・・・珠洲が昨日今日と学校に行っていない事以外にも何か大事な事を聞いた様な気がするが、その会話の後すぐに睡眠活動に全力を注いだ今の俺は、それを完全には思い出す事が出来なかった。


 そして今、そんな俺の安眠を妨げるかのようにスマートフォンの着信音が鳴った。誰かから電話が掛かって来たらしい。


 プルルルルル・・・・・


「少し待て・・・・・よっと・・・って、おわぁ!」

「あ、おはようございます。次元さん」


 ベッドのすぐ横に置いてあったスマホを取る為に、ベッドで仰向けになっていた俺は体を横に向けた。すると、そこには湖晴の顔があった。それと、湖晴はいつもの白衣姿とは異なり制服姿だった。尚、この制服は前に話したと通り、俺の物だが。


 湖晴が何時からここにいたのかは分からないが、どうやら、買い物が終わった後自分の部屋に戻る前に俺の部屋に来たらしく、部屋の入り口のドアの近くの床にはスーパーの買い物袋が放置されていた。


「ど、どうしたんだ?」

「?いえ、お買い物が終わってそのまま部屋に戻るのもアレでしたので、次元さんとお話でもしようかと思って来たのですが、案の定、寝てらっしゃったので」

「あ、ああ、それは悪かったな・・・」

「次元さんが謝る事ないですよ」


 それは湖晴に悪い事をした。と言うか、話があるなら起こしてくれれば良い物を。もしかして、俺の事を気遣って静かにしてくれていたのか?


 プルルルルル・・・・・


 未だにスマホから着信音は鳴り続ける。


「で、話ってのは?」

「私の事よりも、電話には出なくて良いんですか?」

「え?あ、それもそうだが、湖晴も俺に話があったんじゃないのか?」


 だから、ここにいた、と自分でも言っていたしな。


「特に急用でもないですし、大丈夫ですよ」

「そうか?なら、少し待っててくれ」

「はい」


 そして、俺はベッドの近くに置いてあったスマホを手に取り、その液晶画面を見る。そこには、音穏の名前が表示されており、俺に電話を掛けて来た相手が音穏である事が判明した。一体何の用だろうか。こんな時間に。


 あと、今俺がスマホを取る際に膝を折って屈んでいた湖晴のスカートの中が少しだけ見えそうになってしまったが、そこは理性で押さえ付け、目を逸らした。相変わらず湖晴は他人に対して無防備だな。まだ常識人の俺だから良かったものを。


 それに、今気が付いた事だが、湖晴はそんな風に膝を折って屈んでおり、更に両手で頭を支えている状態だ。だからなのか、その豊満な胸の谷間が制服越しでもよく分かった。と言うか、最初に俺が制服を貸した時にも胸元が少しきついとか言っていたので、余計にだろう。


 それにしても、湖晴って胸大きいよな・・・・・って、今はそう言う事が問題では無かった。


 そんな事を思いつつ、俺はスマホの通話アイコンをタップし、音穏からの電話に出る。


「はい、もしもし」

『あ、もしもしー。次元?』


 通話ボタンを押すと、いつも通りの元気そうな音穏の声が聞こえて来る。


「ああ。そうだ」

『今少しだけ大丈夫?』

「大丈夫だが、どうしたんだ?」


 今の俺は湖晴を待たせてしまっている身だが、湖晴は許可してくれているので、時間があると言えばある。


 その頃、湖晴は電話をする俺の方をじっと見つめている。さっきまでと同じ様に膝を折って屈み、両手で頭を支えた状態で。何だ?何でそんなに俺を見つめるんだ?俺、何かしたか?


『まあ色々と、ね。それはそうと、次元にしては珍しいね。寝てなかったの?』

「いや、思いっきり寝てたが、スマホの着信音で目が覚めた」

『そうだったの?ごめんごめん』

「俺もそろそろ夕飯時だから起きようと思っていた所だから、音穏が気にする事はない」


 時間的にはまだ1時間と少ししか寝ていないと思うが、時刻は既に7時前だ。そろそろ夕食を作り終えた珠洲が呼びに来る頃だろう。30分くらい前に、微かな意識の中で玄関のドアが開いた様な音が聞こえた気がするので、もう帰って来ているのだろう。


 なので、まあ、ある意味音穏からのこの電話は目覚まし代わりになったのでありがたかったりした。ずっと俺の近くにいたらしい湖晴は、元々俺を起こすつもりは無かったみたいだしな。


「で、どうしたんだ?」

『ああ、そうだったそうだった』


 俺が聞くと、音穏は俺に電話を掛けた理由を思い出したらしく、そんな風に言った。


『今日次元さ、午後から何処に行ってたの?』

「!?・・・・・えーっと・・・・・」


 『1年前の過去に行って、栄長の過去を変えてました!』なんて事は口が裂けても言えない。俺と湖晴が過去改変をしているのを知っているのは今の所、俺と湖晴の2人と栄長の合計3人だ。


 俺は、会話は聞こえていないとは思うが、さっきから俺を見つめる湖晴の方を向いた。案の定、湖晴は俺と音穏の会話は聞こえていないらしく、そんな俺に笑顔で微笑んだ。俺はそんな湖晴の事を可愛いと感じた。素直にそう思ってしまった。


 さて、音穏に何て答えれば良いのかは自分で考えるしかなさそうだな。


 栄長は『Spece Technology』と言う科学結社に所属している。過去改変前の本人談によるとその科学結社は空間科学を主に研究する組織らしい。そして、栄長の父親がその科学結社の№1(総合責任者とかの事だろう)であり、その1人娘である栄長が№2なのだ。


 そんな一般人には有り得ない様な境遇にいる栄長は、俺と湖晴が過去改変の為に1年前に行った時も湖晴の嘘を見抜き、俺達がタイムトラベラーである事に納得した。そんな栄長なら俺達がその様な人間だとしても大して驚きはしないだろう。


 だが、音穏どうだ?音穏は1週間前に『研究施設連続爆破事件』と言う重犯罪を引き起こしてしまった前科(過去改変は成功したので、この世界の音穏は無罪だが)があるとは言え、それでも充分に一般人なんだぞ?


 そんな音穏が俺と湖晴がタイムトラベラーである事を知ったら、どう考えるだろうか。いや、そもそも信じるだろうか?たとえ信じたとしても、音穏の事だ、危ない事だと知ればすぐにでも止めさせるだろう。少なくとも、音穏の監視下で過去改変作業をして行かなければならなくなる事だろう。


 俺が音穏に何と言えばこの場を切り抜ける事が出来るのか、そんな事を考えていると、音穏が続けて話し始める。


『次元ってば、昼休みに燐ちゃんを探しに行くとか言った後、結局放課後になっても戻って来なかったじゃん』

「あー、それはだな・・・・・って、え?」


 ん?今の台詞、何かがおかしくないか?栄長の過去の過去改変は成功したはず。だとしたら、何で栄長は『昼休みに何処かに行っていた』んだ?事の辻褄が合わないぞ、これは。


「栄長って今日何処かに行ってたのか?」

『?だから次元が探しに行ってたんでしょ?』


 いや、確かに過去改変前では俺は栄長を探しに行った。そして、その際に屋上に探しに行ったら栄長と蒲生の戦闘シーンを目撃してしまい、そのまま過去改変をしたのだ。


 だが、この世界の蒲生と戦う必要が無い為、栄長は昼休みに何処かに行かなくても良いはずなのに、『昼休みに何処かに行っていた』。どう言う事なんだ?


『でも、結局次元が探しに行った後すぐに燐ちゃんは帰って来たんだけどね』

「え?栄長は何をしていたんだ?」

『ほら、燐ちゃんさ、学校を1年間も休んでいたでしょ?だから、その間に提出出来てなかった課題を職員室に出しに行っていただけだったんだって』

「・・・・・それはまたご苦労な事で」


 何だ、そんな事か。どうやら、これは俺の杞憂だったらしい。俺が過去改変をした事により、栄長が屋上に行く理由が無くなった。すると、俺も屋上に行く理由が無くなる。しかし、そうなると、俺は過去改変が出来なくなり、栄長は屋上で蒲生と戦闘する。こんな感じに無限に謎の矛盾が生じてしまうのを防ぐ為に、この世界はそんな選択をしたのか。


『それで?次元はその間どうしてたの?』

「えーっと・・・・・」


 しまった。根本的な事が何も解決していなかった。


「・・・・・屋上に栄長を探しに行った後、急に眠気がしてそのままそこで倒れてた。で、起きたらもう夕方だった」


 俺は取り合えずそう言う事で、音穏を誤魔化そうとした。


『・・・・・そう。なら、良かった。次元が何か変な事に巻き込まれているんじゃないかって心配しちゃったよ』

「心配、してくれてたのか?」

『ふぇ!?い、いや、してないよ!?次元の心配なんて誰がするものですか!』

「何でそんなに必死に否定するんだ・・・・・」


 多分、音穏は少なからず俺の事を考えていてくれたのだと思う。そのくらいは今の音穏の台詞と俺の台詞に対する反応で分かる。やはり、何だかんだ言っても、音穏はそう言う所で良い奴だった。そして俺は、過去改変が成功して本当に良かったと思えたのだった。


『そんな事どうでも良いでしょ!?私は次元がいつも通りならそれで良いの!』

「何か・・・ありがとな」

『う、うん・・・・・』

「・・・・・・・」

『・・・・・・・』


 何故か気不味くなって、暫くの無言タイム。


 そしてその妙な間の後、俺は今回音穏が電話を掛けて来た理由を明確にする為に、もう1度質問する。


「もしかして、その事を確認する為だけに俺に電話して来てくれたのか?」

『まあ、それもそうなんだけど、用件はもう1つあるんだよ』

「もう1つ?」

『うん。明日さ、いつもよりもお弁当を少なくして貰える様に、珠洲ちゃんに頼んでおいてくれない?』

「・・・・・何で?」


 何故弁当を減らさないとならないんだ?まあ、珠洲に言えば少なめに弁当を作って貰うのも可能だろうが、何でそんな事を音穏に指示される必要があるんだ。


『い、いや、特に深い意味は無いけど、理由は明日分かるから。出来る事ならば、お弁当無しの方が良いかも』

「音穏は俺に餓死させるつもりか?」


 『高校生昼食食べず、餓死』なんて言う見出しで新聞には載りたくないぞ。流石に。いや、1食抜いた程度では死にはしないが、何となく嫌な予感がしたのでそんな風に大袈裟に表現しておいた。


 俺が思い付いたその嫌な予感とは、明日以降も音穏にそんな事を言われるのではないか、と言う事だ。別に、何か確証がある訳でもないが、何となくそんな気がしたのだ。


『そうじゃないそうじゃない!』

「じゃあ、学食にでも行くのか?それならそうと・・・」

『違う違う!もう!次元はこう言う時だけ勘が悪くなるんだから!普段もだけど!』


 いやいや。こんな少ない情報で何に気付けと仰るのですか。それに、俺は何時でも勘が良い訳ではないが、一般的な人よりは勘が良い方だと思うぞ。前も幾つか過去改変関連で先に気付いてたし。勿論、そうでない場合も多いが。


『取り合えず、そう言う事だから!よろしくね!」

「え?俺はまだ・・・」


 ツーツーツー・・・・・


 俺が返事を返す前に音穏が勝手に電話を切ってしまった。随分せっかちだな。これでは結局、音穏が何の為に俺に電話をして来たのか分からないじゃないか。


 俺を心配してくれていた事、明日の弁当を減らす事。用件はこの2つで良いはずだが、後者の意味が全く分からない。まあ、音穏自身が『明日には分かる』って言っていたから、今日はもう深く考えるのは止めて明日まで待つ事にしよう。


 音穏との会話を終えた俺は、さっきから俺の事を見つめながら待っている湖晴の方を向き、声を掛ける。


「悪いな。待たせて。で、話ってのは?」

「もう大丈夫ですか?」

「ああ。多分、もう大じょ・・・」


 プルルルルル・・・・・


 すると、再び何者かから電話が掛かってくる。いや、もしかすると音穏かもしれない。何か言い残したのだろうか。


 思わず、顔を見合わせてしまう俺と湖晴。流石にこれ以上湖晴を待たせるのは悪い気がしてならない。どうするべきだろうか。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・あの・・・」

「どうぞ」

「・・・・・ごめん」

「いえいえ」



 スマホの画面を見てみると、そこには栄長の名前が表示されていた。流石に音穏な訳ないか。それにしても随分とタイミングが良いな。俺と音穏の会話が終わったのを確認した瞬間に電話を掛けて来たみたいだ。・・・・・まさか、この間とはまた別の方法で盗聴してたりとかしてないよな・・・・・?気にするのは止めておこう。


 そして、またしても湖晴を待たせつつ、俺は栄長からの電話に出る。

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