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Time:Eater  作者: タングステン
第三話 『P』
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第26部

【2022年08月19日15時41分03秒】


「そっか、何かそんな気はしてた。いや、まあ、真相を聞いた後だからこんな事言えるんだけどね」

「まあ、そう言う事だ。悪いな、1年間学校に行けないのは辛いと思うが」


俺が突然、俺と湖晴がタイムトラベラーで栄長と蒲生の戦闘を止める為に1年前の『過去』に来たと言う事を話したら、栄長はそれなりにすんなりと理解してくれた。流石に今までの人生経験がそこら辺の理解力に影響してくるのだろうか。


「ううん。大丈夫。それに、次元君は私達を救う為にわざわざこんな過去にまで来てくれたんでしょ?」

「まあな」

「だったら良いよ。ありがとう、次元君」


 だが、栄長には過去改変前と同様に約1年間入院してもらわなくてはならない。理由はさっき話した所だが、念の為もう1度話しておこう。


 とは言った物の、その理由はただ1つだけ。『過去改変の影響を最小限にする為』でしかない。俺達が変えたいのはあくまで、2023年9月現在にて発生した『栄長と蒲生の戦闘によって生じた、街の一部の損壊』を消す為。だから、それ以外の所で余計な影響が出ても困るだけなのだ。


 主に、過去改変の影響を探すと言う、湖晴の仕事が増えるのだ。それに、無駄な所で矛盾が生じても面倒だしな。


 そんな感じで、栄長にもその理由を話したら、栄長はやはり納得してくれた。まあ、本来(過去改変前)は入院していた訳だから、栄長自身特に何も損をしたとかそう言う事ではないのだがな。やはり、そう言う事を直接言われると、何となく嫌だろう。


 一応、その入院の理由は栄長自身が『適当に考えておくから』とか言っていたので、俺達が心配する事ではないだろう。時間も短縮出来て万々歳だ。


「そうだ」

「ん?どうした?」


 そんな時、栄長が何かを思い出したかの様子で、俺にそんな事を言った。


「でも、それだったら、あいつも入院しなくちゃいけなくない?」

「えーっと・・・・・」


 栄長は遠くの方にいる蒲生の事を指差した。『あいつ』と言うのは蒲生の事であるのは重々しょうちだが。


 と言うか、蒲生の奴、急用なら走って組織の拠点に戻るとかしろよ。何で歩いているんだ。急いでいた俺達が馬鹿みたいじゃないか。


 それにしても、蒲生も栄長同様に入院する必要があるんだろうか?確かに、栄長と同じく蒲生は1年前の戦闘で大怪我を負って入院していたはずだ。だから、冷静に考えれば蒲生も念の為入院しておいて貰った方が、今回の過去改変の本来の目的以外での影響は出難くなる事だろう。


 そんな事を考えて、俺が決断に時間を掛けていると、待ち草臥れてしまったのか栄長が行動を起こした。


「えいっ」

「ゴファッ!」


 遠くの方から、そんな男の声が聞こえる。聞こえようによっては、あれを『断末魔の叫び』とも言う。・・・・・言わないか。


「お、おい!栄長、何やって・・・」

「?念の為だよ。念の為。それに、私個人の恨みもあるし~」


 栄長は笑顔でそう言った。そんな笑顔とは裏腹に酷い事をしていると言う自覚はあるのだろうか?


 どうやら、栄長は例のテレポーターの能力を使い、ここ(工事現場)に放置されていた土嚢(?)らしき物を蒲生の頭部にぶつけたらしい。


 いやいやいや、どう見ても流石に酷過ぎるだろ。と言うか、蒲生にもその辺を話して納得してもらえよ。何で実力行使で入院させようとしてるんだ。


「っテェ!リン何しやがる!」

「あー、はいはい。黙れ黙れ~」

「・・・・・って、いって!いってェ!コラ、リン!止めろって・・・ゴファ!」


 蒲生が一言発する度に栄長はテレポーターの能力を使用し、土嚢(?)をぶつけて行く。そして、最終的には蒲生の姿は土嚢(?)に埋もれて、すっかり見えなくなってしまっていた。


 そして、帰る準備が整ったのか、湖晴が俺に声を掛けて来る。


「では、次元さん。後はリンさんにお任せして、私達はそろそろ戻りましょうか」

「ああ、そうだな。じゃあな、栄長」


 湖晴にそう言われ、俺は栄長に別れの挨拶をする。いや、これは『俺にとって』ではなく、『栄長にとって』のだがな。


「うん。またね、次元君。1年後に」

「とは言っても、俺にとったら数分後の事なんだがな」

「ああ、そうだ。次元君達って、何年の何日の何時から来たの?」

「え?日付と時間か?」


 何故そんな事聞くんだ?まあ、良いか。9月19日火曜日の昼休みから来たから・・・、


「大体、2023年9月19日12時半くらいだな」

「うん、分かった。ありがとう」

「何でそんな事聞いたんだ?」

「?いや、だって、次元君達はその時間から来たんでしょ?」

「ああ」


 今そう言ったはずだが。


「だったら、その時間になるまで次元君はこの時間に来た事を覚えてないじゃない」

「あー、そう言う事か」


 今の栄長の台詞を要約すると、1年前の『過去』にいる『現在』の上垣外次元はこの時空転移の事を記憶しているが、それ以前の上垣外次元はその記憶を持っていない。つまり、俺と栄長の間で話に矛盾が生じるはずだと言う事だ。だから、栄長はそれを回避する為にわざわざそんな事を聞いたのだろう。


 何だ、栄長の方がそう言う事に関しても、俺なんかよりも遥かに頭が回るじゃないか。俺は全くそんな事考えもしなかったぞ。


「まあ、その時になるまでは適当に話合わせておいてくれ」

「うん。任せておいて。あと、次会う時までにもう1回だけ言っておくよ。ありがとね、次元君」


 栄長は満面の笑みでそう言った。


「気にするな」


 俺は栄長達と別れ(蒲生がどうなったのかなんて誰も知らない)、湖晴に1つだけ頼みごとをする。


「湖晴」

「はい?何でしょうか」

「元の時間に帰る前に、1箇所だけ寄り道して行っても良いか?」

「寄り道ですか?タイム・イーターの電力もまだありますし別に構いませんが、どちらにですか?」

「そうだな・・・・・」


 まあ、厳密な時間なんて決めなくて良いんだ。ただ、『栄長がまだこの世に生まれていない時間』になら何処でも構わないんだ。


「じゃあ、2005年。その年で『栄長の家の内部』に時空の歪みが存在する時なら何時でも構わない」

「燐さんのお家、ですか?分かりました。少々お待ち下さい」


 そう言って、湖晴はタイム・イーターで2005年に『栄長の家の内部』に時空の歪が発生した瞬間を検索し始めた。


 何故、俺は真っ直ぐ元の時間『現在』に帰らないのか。その理由はこれだ。俺にはまだやり残した事がある。どちらかと言えば、俺的にはこちらが本命の課題なのだがな。


 それは、『栄長を殺人者にさせない』と言う事だ。時空転移前に幾つか聞いた湖晴の話によると、これまでに栄長は何人かの人間を殺して来ている。つまり、このまま過去改変が成功して『原子市一部地域大損壊事件』が消失しても、『栄長が殺人者』と言う事実は覆らない。


 だから俺は、今から更に前の時間にタイムトラベルする事で、その不必要な肩書きを無かった事にする。別にこんな事をしても、この過去改変が成功する前に栄長によって殺されて行った人達はその本来と同一時間で何か別の方法で死亡する事だろう。


 だが、俺はそんな事はどうでも良い。ただ俺は、『栄長には殺人者にはなって欲しくない』だけなのだ。タイムトラベラーとしては身勝手で自己中心的な考えかもしれないが、そんな事は知った事ではない。俺は自分の信じる道を進むだけだ。


「次元さん。ありました」

「そうか。なら、そこに時空転移させてくれ」

「はい。了解しました」


 そして、俺達はいつもの如くタイム・イーターの放つ眩い閃光に呑まれ、2005年の何時かへとタイムトラベルする。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


 俺達が着いた先は薄暗い部屋の様な所だった。物置だろうか。だが、それにしたら物が何も見当たらないし、何より広い。かなり広い。とてつもなく広い。


「一応、ここは燐さんのお宅の2階部分に相当する場所ですね」


 薄暗い空間の中でタイム・イーターを見ながら湖晴がそんな事を言う。


「取り合えず、何処か出られそうな所から出る事にしましょうか」

「そうだな。栄長の親父さんに会わないと何も始まらないしな」

「?」


 あ、そうだった。湖晴には何でこの時間に来たのかを説明していなかった。まあ、この事は元々出来るかどうか分かった事ではないし、時間もあまり掛けたくないから、その解説は元の時間に帰ってからにするか。


 俺達はその広々とした部屋のドアに相当する物を開け外、正確にはその広々とした部屋の外に出る。


 すると、そこには見知らぬ男性が立っていた。


「「「・・・・・・・」」」


 数秒間の沈黙。


 もしかして、この人が栄長の親父さんか?いや、この時間ではまだ栄長はまだ生まれていないはずだから、『栄長さん』か?何やら少し栄長(燐の方)の面影がある気がする。やはり親子は少しは似る物なのか。


 どうしようか、流石に大の大人に中二病演技で誤魔化すのはきついよな。と言うか、俺がもうあまりしたくない。実は、あの演技はかなり精神的に来るのだ。


「誰だね、君達は・・・」

「フ・・・私達に『誰』とはな・・・・・」


 結局、このキャラで行くしかないのか。


 サングラスサングラス・・・・・あれ?サングラス何処にやったっけか?何処かに落として来たか?仕方無い、インパクトは薄れるかもしれないがここは俺の素顔を晒して中二全開で行ってやろう。


「私は狂気のマッドサイエンティスト、時空皇零!私達は遠い未来から遥々こんな時代に訪れ、貴方に1つ忠告しに来たのだ!」

「・・・・・はぁ」


 いつも通りのスルー。と言うか、もはや呆れられている。まあ、仕方無いだろう。俺だって、こんな『自称:狂気のマッドサイエンティスト、時空皇零』なんて目の前で言われたら、語尾に『(笑)』を付けて話して、そいつを鼻で笑ってやる。俺の事だがな!


 だが、俺は挫けない。俺はこの親父さん、『栄長さん』に一言物申す為にここに来たんだ。


 そして、俺は『栄長さん』に未来からの言葉を告げる。


「栄長さん、貴方は近い内に可愛い女の子を授かる事だろう。だが、その子には絶対に無理をさせてはならない。本人が『大丈夫』と言っていても、そんな訳はない。そして、その子には絶対に人殺しをさせてはならない。女の子がそんな事をするのはどう考えても間違っている」

「何を言って・・・」

「別に、信じるか信じないかは貴方次第だ。だが、私のこの言い分を守らないとその子は大変な目に会う。これは2023年から来た、その子の友人の私が言う事だ。・・・・・後は自分で考えるが良い」

「・・・・・」

「・・・・・では、さらばだっ!行くぞ、湖晴!」

「あ、次元さん!」


 そうして、俺は言うだけ言って、その場から離れた。栄長の親父さんの返答も聞かずに、これで良かったかどうかも確認せずに、ただ自分が今した事が正しい選択であったと言う事だけを願って、その場から離れた。


 栄長宅から離脱した俺と湖晴はやや息を切らしつつも、他の人に俺達の事を見られて余計な影響を与えても厄介な事になりそうだったのですぐに2023年の『現在』へとタイムトラベルした。


 こうして俺達の栄長に関する過去改変作業は終了した。今度こそ完全に終了だ。ゲームセットだ。


 過去改変がどの様に適応されるかは、帰ってみないと分からない。


 それはさておき、俺はこの後まだ学校で午後から授業がある、とか考えると少し憂鬱な気分にもなった。まあ、適当に寝て過ごせば良いか。過去改変の影響がどんな風に出たのかは少しずつ確認して行けば良い事だしな。


 最後に。今回の過去改変を終えて、俺が思った事を1つだけ述べておこう。


 『栄長の家ってかなりデカいんだな』。それはもう普通にアニメとかでよくある金持ちの豪邸並みでしたよ。うん。だから、あんなに部屋も広かったんだなと俺は思ったのだった。

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