第27部
【2023年09月19日16時42分17秒】
「何とか帰ってこれたな」
「そうですね」
栄長の過去を変えた俺達は取り合えず元の時間、つまりは2023年9月19日の学校の昼休みに帰って来たはずなのだが・・・・・おかしいな。何だか、空が夕焼け色に染まっている。まあ、気にする必要もないか。
それはともかくとして、どうやら俺達の過去改変作業は成功したらしい。時空転移前に湖晴がしたはずの時間停止も適応されていないみたいだし、それに、栄長と蒲生の戦闘によって引き起こされたはずの街の1部分が損傷した跡も1つも残されてはいなかった。
ここ、学校の屋上から見えるのはいつも通りの街並み。そして、平凡な日々だ。ただ、それだけだ。
「それじゃあ、俺は授業に戻る。何分間時間が空いてしまったのかは分からないが、あまり長い時間姿を見せないと音穏が心配するといけないからな」
夕焼け色に染まった空を見る限り、おそらく今は昼休みではないだろう。多分、午後の授業の5時間目か6時間目の最中と言った所だろう。
そんな時、湖晴が俺に話し掛ける。
「あー、その件なんですが・・・」
「ん?」
「実は、もう午後の4時40分を回っているんです」
「え゛?」
その時、屋上と校舎内を繋ぐ扉が勢い良く開け放たれた。
「次元君!」
「え、栄長!?」
開け放たれたドアの所ににいたのは、赤毛でノーマルな長髪とポニーテールを合わせた様な髪形の、高貴な雰囲気を醸し出している美少女、栄長燐だった。
それに、どうしたのだろうか。ほんのりと顔が赤くなっている。それに、息も上がっている様だ。何処かから走って来たのか?
「やっと・・・見つけた・・・・・」
「お、おい!栄長!大丈夫か!?」
そう言うと、栄長は何かに安心したらしく、床にへたり込んだ。
一体、どうしたと言うのか。何で栄長はそんなに疲れていて、しかも、急に床にへたり込んでいるんだ?確か、栄長は体育の成績は悪くなかったはず。1年間入院していたとしても、退院後初の授業ではそれなりに凄かったと、音穏が言っていたしな。
いや、過去改変が成功したのならその辺が細かく変わっているのかもしれないが、それはそうとして、これは一体どう言う状況だ?
俺は床にへたり込む栄長に歩み寄り、声を掛ける。
「栄長。大じょ・・・」
ガバッ!
「え、栄長!?」
「もう・・・心配したんだからぁ・・・・・」
すると、栄長が泣きながら俺に抱き付いてきた。
そうか、もう今日の学校の授業は全て終了している時間だったのか。だから、栄長は俺を探してここまで・・・・・。
その後、俺と湖晴は互いに元々の服装に着替えな直す事無く、栄長と一緒に帰った。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
そして、いつもの如くグラヴィティ公園内。
「で?何で授業に来なかったの?」
「いや、帰って来る時間が指定出来なかったらしくてな」
俺だってまさか、『過去』から帰って来たらその日の全部の授業が終わっているなんて思いもしない。
まあ、これは湖晴の事を攻めて良い問題ではないのは分かっているが、栄長にそんな迷惑をかけてしまったのは悪く思っている。
「そう言えば、栄長には俺と湖晴が『何処から』タイムトラベルしたのかを言い忘れていたな」
「そうよ、全く・・・・・。まさか、屋上にはいないだろうと思っていたのに、何で最後に探しに行った場所にいるのよ」
何か、栄長が音穏化してるぞ。怒っている様で本当は心配してくれている、そんな態度だ。つまり、栄長は良い奴なんだ。こんな俺の事を心配してくれていたのだから。
だが、俺はまだ過去改変の影響を確認出来ていない。今からその確認作業に入る。湖晴は俺と栄長の数m後ろでタイム・イーターを触っているみたいだが、構う事はないだろう。
「栄長」
「なぁに?」
前にも聞いた事があるそんな生返事が、何だか今の俺にとっては少しばかり『癒し』だった。
「念の為に聞いておきたい。過去改変の影響についてだ」
「うん、良いよ。何でもどうぞ~」
街の一部が損壊すると言うあの出来事が無くなっているのは既に確認出来ているから、残るは2つだ。『栄長はあれから1年間仮入院をしたのか』と『今までに誰も殺してはいないか』の2つだ。俺が2005年で動いたせいで変な影響が出ていなければ良いが。
「じゃあ、まずは1つ目だ。俺達が戻った後、栄長は入院してくれたか?」
「うん、一応ね。言われた通りに」
取り合えず、栄長は入院しておいてくれたらしい。その行動がどのくらい今のこの世界に影響を与えているのかは推測出来ないが、今はこの事を確認出来ただけでも充分だろう。
「ああ、あとね」
「ん?」
「クロも一応入院させておいたから」
「クロ?」
ああ、蒲生の事か。確かあいつの名前って『黒矛』って言うんだよな。だから『クロ』ね。成る程、成る程・・・・・って!え!?『入院させておいた?』だって?
「そうした方が良かったんでしょ?」
「ま、まあそうだとは思うが・・・・・」
蒲生よ、可愛そうな奴だ。何も知らず、いきなり大怪我をさせられて、しかも1年も入院させられるとはな。
「それにしてもクロの奴、せっかく同じ大病室にして貰ったのに全然私に構ってくれないんだもん」
「それは・・・・・」
それは多分蒲生なりの遠慮だったり配慮だったりするのだと思うが、まあ、その事は栄長に勝手に考えさせておこう。
それはそうと、何でわざわざ同じ病室にして貰う必要があるんだよ。栄長も湖晴と同じくそう言う事を気にしないタイプの人間なのか?いや、少し違うか。でも、年頃の女の子はもう少し行動に気をつけた方が良いと俺は思ってしまうのであった。
「2つ目の質問良いか?」
「良いよ~」
・・・・・ストレートに『誰か殺した事ある?』なんて聞けないしな。どうするべきか・・・・・そうだ。
「栄長は今までに科学結社でどんな仕事をして来たんだ?」
「私の仕事・・・・・?」
これで栄長が変な事を答えなければ何も問題は起きていないと言う事になる。
「そうだなぁ・・・・・主にお父さんのお手伝い?かな?」
「具体的には?」
「資料探して来たり、色々研究したり?」
「そうか・・・・・」
まだまだ不確定情報しかないが、ここであえて結論を出そう。
今回の栄長に関する、2回の過去改変はどちらも成功だ。
1つ目。栄長と蒲生の戦闘が引き起こしてしまった『原子市一部地域大損壊事件』は無かった事になった。
そして、2つ目。栄長はもう誰も殺していない。これは本人に直接聞く事が困難な議題の為、現在は限られた情報を元に推測しただけだが、何も大きな問題は無いはずだ。
これでようやく終わった。俺の長かった様で短い2日間が。それは、栄長燐と言う女の子の境遇とその幼馴染みの蒲生黒矛の過去を改変し、世界をあるべき姿へと変化させた物だった。
これで良いんだ。俺はまたやり遂げる事が出来た。音穏、阿燕に続いて栄長だ。これから先、湖晴の話しによると少なくともあと4回これが続くだろう。
だが、俺はこれからも何にも屈する事無く過去改変を続けて行く。
「そう言えば」
「ん?どうしたの?」
俺は1つだけ栄長に聞き忘れていた事があった。とてもとても些細な事だがな。
「1年前。何で栄長は、俺の事を殺そうとしていた蒲生から助けようとしてくれたんだ?」
「それは・・・・・」
そして、栄長は一呼吸置いて、俺に言った。
「『守りたい』って思った人は、やっぱり『守るべき』でしょ?」
『Time:Eater』 第3話 完
『Time:Eater』第3話を最後まで読んで頂いてありがとうございます。作者のタングステンです。
いや~、長かったですね~。作者自身の元々の予定では第3話は20部くらいで終了するはずだったのですが、書いて行くとどんどん書きたい事が増えて行ったり、次元の心理描写がどんどん複雑になって行って、気付いた時には既に27部。どうしてこうなった・・・・・。
それはともかく、今回の話はいかがだったでしょうか?今回の話は栄長燐と言う女の子の過去を変えると言うだけでなく、その他にも、『Time:Eater』と言うSF小説の根本に関わる問題が幾つか散りばめられていました。
何時かは明らかになるその謎の真相を推測しつつ、これからも『Time:Eater』を読んで頂ければと思っています。毎回恒例になりつつありますが、今回も設定まとめと番外編がそれぞれあった後、第4話へと続きます。いよいよ物語りも折り返し地点です。毎日投稿続けて行きたい所ですね。
そう言えば、前回は第2、5話と第3話の間に7日間時間を空けるつもりだったのですが、何故か5日間になってしまっていました。どうしましょうか。出来ればその辺は揃えたいのですが・・・・・そうだ!今回は9日間休もう!そうすれば合計14日間休憩で当初の予定通りになりますね!よし、それで行きましょう!
そう言う訳で、今回は第3、5話の後に9日間休憩を挟みますが、その後も『Time:Eater』をよろしくお願いします!
次回はかなりシリアスかも・・・・・(主に例の『あの人』が)。




