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Time:Eater  作者: タングステン
第三話 『P』
56/223

第19部

【2023年09月19日12時29分07秒】


~栄長燐視点~


「あぁ・・・・・ぁぁぁぁぁ・・・」


 あいつに向かって大型トラックを空間移動させてしまった私は、ビルの屋上で膝を突いて泣いていた。


 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・・・。


 私・・・あいつを・・・・・クロを殺しちゃった・・・・・。


 助けたかっただけなのに・・・・・、これ以上私の為に傷付いて欲しくなかっただけなのに・・・・・。


 私はそんなあいつを殺しちゃった・・・・・・。


 私は『また』大切な人を失うの?『彼』に続いてクロも?そんなの嫌だ!


 でも、もう取り返しは付かない・・・・・もう取り返しは・・・、


 そんな時、『彼』の声が私の耳に届いた。


「栄長ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

「じ・・・げん・・・くん・・・・・?」


 そこには大声で私の事を呼ぶ次元君の姿があった。次元君は学校の屋上を走り、私が今いるビルに1番近い学校の屋上のフェンスにまで来ていた。


 何で次元君がここにいるの?次元君は屋上に来る理由なんてないはずなのに。


 まさか、私があいつにトラックをぶち当てた所も見られていた?もしかして、その前から?


「そん・・・な・・・・・」


 そんな場面見られていたら絶対に次元君に嫌われる!私が科学結社に入っている事も、私がテレポーターを持っている事も、私が今までに多くの人を殺して来た事も知られたら、絶対に次元君に嫌われる!


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁぁ・・・・・。


 私は自分の中で回り続ける負の感情で頭が痛くなり、力強く頭を抱える。


 もう嫌だ、こんな人生。『彼』を失い、あいつを殺し、次元君に嫌われる。そんな人生なんて嫌だ。


 でも、昔からそうだったかもしれない。昔から、私が生まれた時からこの不幸な人生は定められていたのかもしれない。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


 =12年前:2011年:栄長燐4歳=


「ねぇー。クーロー、遊ぼーよー」

「ん?何だ、燐か。・・・・・ったく、仕方ねぇなぁ、少しだけだぞ?」

「うん!」


 私は幼馴染みがいた。それが前から言っている通り、あいつ、つまりは蒲生黒矛だった。


 私達はそれなりに仲が良い幼馴染だった。家が近所だったり、幼稚園が一緒だったりした事もあり、良く遊んでいた。


「ねぇ、クロー」

「どうした?」

「何して遊ぶ?」

「何するかも決めずにオレに言って来たのか?」

「だってぇー」


 クロは嫌味とか皮肉とかを常に吐いてくる、正直言って普通に嫌な奴だったけど、文句を言いつつもいつも私の事を思ってくれていた。


 でも・・・・・、


「燐様。まもなくお勉強のお時間です。お家に帰りましょう」


 こんな風に私には幼い頃から監視役が常に付き纏っていた。当時の私は、何でその人達が私の事を監視しているのか分からなかったけど、その理由はこの回想から数年後に知る事になる。


「えー。私、今からクロと遊ぶのー」

「駄目です。お父様の後を継ぐ方として、最低限の能力は身に着けて頂かなければ」

「ク、クロォ。グスングスン・・・」

「わ、分かった分かった!また今度遊んでやるから泣くな!な?」

「うん・・・・・」


 この時の私が受けさせられていたのは、俗に言う英才教育のみたいな物だ。日によっては多少の差があるけど、1日におよそ6時間。とてもじゃないけど、当時は幼稚園生だった私には辛くてしんどい物だった。


 それに、これがあったせいで、私はろくにクロと話す事も遊ぶ事も出来なかった。唯一、クロと話したり遊んだり出来たのは、1週間に1度の祝日や、教育係の人が病気や用事で休みの日の時だけ。他は全て勉強付けの毎日だった。


 =10年前:2013年:栄長燐6歳=


 小学生になった。今だに英才教育は続いている。どうやら、中学校入学までにこなさなければならないプログラムがあるらしい。そして、私は予定よりも遅れてしまっているらしい。


 クロと話せる時間も無くなって来た。進行速度を速める為に1日の勉強の時間が大幅に増えたのが大きな原因だった。


 そして、私にはもう1つ困った問題があった。


「うわっ。きもっー。栄長また満点だよ。カンニングしてんじゃね?」

「ほんとほんと。いっつも、何でも出来てさー」

「勉強も運動も出来るなんて、漫画の中の人じゃないんだからさ」


 それはクラスメイトからの皮肉。またの名を『虐め』だった。幼稚園生の頃から英才教育を受けていた私にとったら、小学1年生程度のレベルの問題なんて簡単過ぎた。でも、誰もその事を分かろうとしない。


 まあ、今になって思い返すと、自分と周りの人は脳の構造が根本的に違うって割り切って考えておいた方が良かったかもしれない。まあ察してもらえる通り、当時小学生の私にはそんな繊細な事は出来なかった。


「おい!お前ら!燐に何やってるんだ!」


 そんな時、クロは助けに来てくれた。何時でも何処でも、私が困っている時ならすぐに掛け付けてくれた。


 私はそんなクロと少しでも長くいたいと思い、自分の身に起きている虐めの事なんて忘れて、遅れている英才教育を終わらせる事にした。


 その方法が、問題と回答の法則化だった。私は決められている英才教育の時間以外にもその法則を見つけ出す為に勉強していた。そして、出題された問題のあらゆる情報を元に、回答を一瞬で導き出す事に成功した。


 =6年前:2017年:栄長燐10歳=


「ねえ!クロ!私、もう勉強終わったよ!遊ぼう!」


 問題と回答の法則化に成功した私は当初の予定よりも2年間も早く、英才教育のプログラムを終了出来た。私がずるしている事が何度か教育係りの人にはバレそうになったけど、でも、これでようやくまたクロと遊べる。これからは楽しい人生が待っている。そう思っていた。


「ねえ!クーロー。どうしたのー?」

「燐・・・ごめん・・・・・」


 それが、クロが自身の親から科学結社に強制的に入らされ、心を閉ざし始めたすぐ後くらいの出来事だった。だけど、当時の私はそんな事理解出来る訳無く、『クロが変な事を言って来た』程度にしか思っていなかった。


「全く、クロの奴。私が勉強終わってせっかく遊べる様になったのに、何で断るかなー。ぷんぷん」

「燐」

「あ、おとーさんだ!どうしたのー?こんな所で」

「少し良いか?大事な話があるんだ」

「大事な話?」


 それが、私が今まで知る由もなかった科学結社『space technology』に強制的に入らされた瞬間だった。この時に私は、『お父さんがリーダーである事』、『私が次期リーダーである事』、『私が組織の№2である事』、『これらの事は口外してはならない事』、そして、『他の科学結社に所属するクロとはもう関わってはならない事』等を聞かされた。


「え?それって、どう言う・・・」

「本当は燐が先取り勉強を終わらせる時、つまり中学校入学時に言おうかと思っていたのだが、流石私の娘の燐だ。2年も早く終わらせるなんてな。お陰で燐の事を2年も早く組織に入れる事が出来たよ」

「え・・・・・?」


 私は自分で自分の首を絞めていただけだった。私はクロと一緒にいたくて頑張っていたのに、本当は自分でクロとの時間を減らしていたに過ぎなかったのだ。頑張った事が逆に仇となり、クロと一緒にいられる逆に時間が減って行った。


 この話し合いの後に、私はお父さんから瞬間空間移動装置『テレポーター』を譲り受けた。それは、お父さんから貰った大事なプレゼントであると同時に、私の人生の破滅を証明する為の物であった。


 =3年前:2020年:栄長燐13歳=


 この頃、私は既に『space technology』の№2としての任務を果たしていくだけの毎日を送っていた。いや、正確には№2と言うのは文字だけの物で、基本的にはこき使われていた。


 時には、他の研究施設への偵察。時には、闇組織の情報収集。時には・・・・・、組織に歯向かう者達を殺して来た。そして、私はもう普通の人間には戻れない様になってしまっていた。


 他人の事が嫌いになり、1人を好んだ。どれだけ人を殺して返り血を浴びようと、何も感じなくなった。そして、何よりも、クロと一緒にいなくても別に何も感じなくなった。


 ・・・・・・・。


 これらが私の中の『普通』が崩壊して行った経緯だ。


 ここからは以前の回想通り。


 この2年後、私は『彼』の事を知った。そして、『彼』の秘密を知ってしまった。その計画を知った私はそれを密かに実行していたお父さんに歯向かった。人生初の親への反抗だった。


 お父さんはそんな私の思いを聞き届けてくれた。お父さんは元々は優しい人だ。ただ、組織のリーダーとしての責任の為に、私に辛い境遇を押し付けてしまっていたに過ぎなかったのだ。


 それに、お父さん自身も『あの計画』には元々反対だったらしい。15年前から始まったその計画だけど、お父さん自身、最初は何故そんな計画に賛成したのかは覚えていないらしい。


 そして、私の所属する科学結社『space technology』はリーダーのお父さんの意向で『あの計画』から退いた。


 だけど、更にその1年後、クロが『彼』を殺さなければならなくなり、私がそれを止めた。だけど、勝手な行動をした罰として私は1年間の謹慎を強いられ、その間に元々親の七光りで僅かながらあった組織の仲間達からの信頼は完全に消え去った。


 その事を知ったクロは私の『今まで』の境遇と『今』の境遇を変える為に、自らを犠牲にしようとしている。私はもちろん1年前と同様にそれを止めた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


 そう。私はあいつを止める事に成功したんだ。


 ただし、あいつは『死んだ』。


 私の気が短かったが為に、死んでしまった。これじゃあ、止めた意味なんてないじゃない。もう嫌だよ・・・・・こんな人生。


「栄長!おい!聞こえてないのか!」


 遠くの方から次元君の声も聞こえる。もう駄目だよ、次元君。あなたにだけは、『今の』あなたにだけは嫌われたくなかったのに・・・・・。


 人を殺して来て、目の前で人が殺された光景を見たら、次元君みたいな普通の一般人はきっと私の事を嫌う。今までもそうだった。だから、私はそんな人達を殺して来た。


 でも、次元君は殺してはいけない。いや、違う。次元君の事は『私ごときでは殺せない』。だから、私は別の手段でこの人生の終焉を迎える。


 私はポケットから拳銃を取り出し、自身のこめかみに当てる。


 さよなら。クロ、次元君・・・・・。


 そして、引き金を・・・・・、

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