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Time:Eater  作者: タングステン
第三話 『P』
55/223

第18部

【2023年09月19日12時29分07秒】


「通常、この写真の様に人間の体に鉄パイプを貫通させる為には、相当な力が必要なはずなんです」


 鉄パイプが体を貫通している男子高校生の姿等の画像を表示しているタイム・イーターを見せながら、湖晴は俺に過去にあったはずの事件を説明していく。


「確かにそうかもしれんが、それが『栄長がテレポート装置で行った』とは断言出来ないだろ?」

「そうですね。普通はそうかもしれません。でも、タイム・イーターが反応したと言う事は、過去にあったはずのこれらの事件は燐さんが犯人と言う事になるんです」

「それを言ったら全部そうなるだろう」


 俺にはタイム・イーターの過去改変対象者の判別の仕組みは良く分かっていないが、それでもその情報が確かなのは分かる。今までも、音穏や阿燕の事件を感知し、事が大きくなり過ぎる前に過去改変を要求して来た。


 だが、だからと言ってそんな少ない情報で栄長の事を過去にあったはずの事件の犯人と結論付けても良いのだろうか。


 ここまでの湖晴の話を聞くと『鉄パイプを人体の体に貫通させるには、栄長の持つテレポート装置が必要』、『その事件を隠蔽するには、科学結社の協力が必要』と言う事になる。


 この2つに当てはまる人物はそうはいないだろう。もしかすると、世界中の何処を捜しても栄長ただ1人しか当てはまらない可能性もある。


 だが、ちょっと待って欲しい。この2つに当てはまるのが栄長で、事件を起こしたのも栄長だと仮定しよう。だとすると、その動機は何だ?


 流石に理由も無く人を殺したりはしないだろう。音穏の時も、阿燕の時も、それなりに理由があった。だから、栄長にも何かしらの理由があるはずなんだ。これを確かめてからじゃないと、結論を決めるのは早過ぎる。


「湖晴。じゃあ、1つ聞いても良いか?」

「はい。どうぞ」

「栄長がその事件の犯人だとして、その動機は何だ?」

「動機・・・ですか・・・・・」


 湖晴は少し考えた後、タイム・イーターで何かを検索して、その検索結果をまとめた物を俺に報告する。


「検索結果によると、燐さんは多くの人には人気がある人物ですが、一部の人からはあまり良く思われていない節がある様です」

「そうなのか?」


 てっきり誰からでも好かれているかの様に思える栄長だが、そんな一面もあるのか。まあ確かに、この世の人全員から好かれている人なんている訳ないしな。栄長も例外ではないのだろう。


「それで燐さんは、そんな風に自分の事を良く思わない人からの攻撃に耐える為、つまり自己防衛の為にあんな事をしてしまったのではないかと思われます」

「そりゃあ、自分を傷付けようとしている奴らになら正当防衛になるかもしれないが。だからと言っても、これはやり過ぎだろ。何も殺さなくても・・・」


 幾ら自分の身が危険に晒されているとしても、絶対に人は殺してはいけない。それが自己防衛の為でも正当防衛でも、人の命を消してしまうのはやはり良くない事だ。栄長だってそれくらい分かっているはずなのに。


「それにしても、だとしたらよくバレなかったよな」

「次元さん。私の話を聞いていましたか?」

「へ?」


 あれ?湖晴さんが何やらお怒りモードに。いや、表情は笑ってるのだが、そのオーラに何か妙な威圧感を感じる。背景に『ゴゴゴゴゴ・・・』とか付いてたら合いそうだ。


「燐さんは科学結社に所属しているんですよ?それに、さっきも言った通り、事件の概要は表沙汰になっていないんです」

「うん」

「つまり、『燐さんがいくら人を殺しても捕まる事なんてない』んです」

「そうか!だから、栄長はこんな事になるまで・・・」

「はい。そうなります」


 今湖晴が言った事を要約すると、栄長は自分の身を守る為に相手に対して『やり過ぎるくらい』が丁度良いと言う事になる。何故なら、いくら攻撃仕返しても結局誰もその事を覚えていない。だから、たとえ相手が死んだとしても『やり過ぎる』なんて事はないのだ。科学結社恐るべし。


 そう言えば、事件の概要が表沙汰になっていないって言うのはどんな風にしてるんだ?さっき湖晴は『記憶の改竄』がどうとか言ってた様な気もするが、その具体的方法なんて俺なんかが知るはずもない。


「ちなみに、先程からお見せしているこの写真なんですが、これ、次元さんと燐さんが通っていた中学校の屋上で撮られていたはずの写真なんです」

「マジか!?」


 全然知らなかったぞ。そんな事件。てか、何で中学校の屋上でそんな事になるんだよ。


「はい。それで、既にこの事は表沙汰にならない様に仕組まれているのですが、何か心当たりはありませんか?」

「心当たりねぇ・・・・・」


 心当たりと言われても、一般的な人の記憶からその事件の事は抜き取られているはずだ。常時寝ていて、情報収集もままならない俺が覚えてる訳・・・、


=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:


「あれ?今帰り?もう5時だよ?遅くない?」

「**だよ?あなたの左斜め後ろ3番目の」


「変じゃないよ」

「変じゃない。あなたはそのままで良いんだよ」


「うん」

「あ・・・うん・・・またね」


「大丈夫だった?」

「奴らはあなたの気迫に怯えて逃げ出したのよ」


「そろそろ時間も遅いし帰ろうか。あなたも妹さんにお使い頼まれてたんでしょ?」

「そうだ。じゃあ、私も手伝うよ」

「助けに来てくれたお礼。それに、1人よりも2人の方が早く済むでしょ?」

「さあさあ、早く行こう?」


「ねえ。何で私の事助けに来てくれたの?」

「ううん。何でもない。あなたって優しいのね」


「良いのよ。それに、私が好きでしてる事だし」

「うん。そうそう」


「ねえ!大丈夫!?・・・・・そうだ!早く病院に・・・」

「何で・・・・・?何で何で何で・・・?」

「いや・・・いやぁ・・・・・あぁぁぁ・・・・・」

「え・・・お父・・・さん・・・・・?」


=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:


「・・・・・元さん!次元さん!」

「ハッ!」


 湖晴のそんな声と共に、俺は意識が回復した。


「大丈夫ですか!?いきなり気を失って!」

「あ、ああ・・・・・」


 今のは何だったんだ・・・・・?


 今の、俺が意識を失っている間に見た光景。俺は何処かで見た事がある。それはどこでの話だ?それは誰との話だ?何故俺は思い出せない?何故俺は覚えていない?


「本当に大丈夫ですか・・・・・?」

「ああ。悪いな、心配掛けて」


 湖晴が上目遣いで俺の事を心配して来てくれる。湖晴は何だかんだ言っても良い奴だ。それに普通に可愛いし。上目遣いの女の子なんて、現実では中々見られるものではないしな。


 俺はそんな事を考えつつ、自分の右腕に付けてある腕時計を見た。今の謎の光景を見ていたのは1、2分程度だったらしい。時間にすると言うほど長くない様に思われるかもしれないが、その光景を直に見ていた俺からすると、数時間程度の出来事の様にも思えた。


「じゃあ、話を戻してもよろしいでしょうか?」

「おう。取り合えず、俺はその事件の事は覚えていない。と言うかそもそも知らないな」

「そうですか。まあ、無理もありませんよね」


 俺以外の誰も知らない事を俺が知るはずもないからな。


 そんな事よりも、俺としてはさっきの謎の光景が何だったのかを知りたい所だが、湖晴に言っても説明出来ないだろうし、自分で考えるしか無さそうだ。


「湖晴からは他にはないのか?」

「そうですね・・・・・。燐さんとその所属する科学結社の情報なら多少はあります」

「聞かせてくれ」


 言い忘れていたが、俺と湖晴がこうして情報交換を続けている最中も、栄長と白髪の男の戦闘は続いている。さっきから遠くの方でありがちな戦闘音が聞こえて来てたりもする。


「栄長燐。原子大学付属高等学校2年生。16歳。女性。クラブ無所属。成績、運動神経は上位。人間関係にかなり優れており、同年代にとどまらず、年上年下からの信頼も厚い・・・」

「ん?その辺の情報なら俺でも知ってるぞ?」


 湖晴は何故か栄長の個人情報を言って来た。しかも、どれもこんな俺でも知っている様な情報ばかりだ。一体何のつもりだ?


 しかし、湖晴は俺の言葉を無視する事無く返答し、そのまま続ける。


「ここからが重要なんです。よろしいですか?」

「あ、ああ」


 何か怒られた。


「ここまでは『表側の情報』です。ここからは、タイム・イーター等の特別な情報網を持つ者しか知る事の出来ない情報です」

「『表側の情報』?」


 さっき言ってた『科学結社に所属している』とか『テレポート装置を持っている』とかの事か。でも、湖晴の事だ。それ以外の新たな情報も開示してくれる事だろう。


「燐さんは、現役高校生ながら科学結社『space technology』の№2であり、更に、次期リーダーなんです」

「え?」


 科学結社の№2?栄長が?しかも、次期リーダーだって?それは何か凄い事だってくらいは、科学結社の存在自体を知ったばかりの俺でも分かる。


「そして、燐さんは基本的に人付き合いが上手いと言う情報があります。ですが、何故かこの組織ではあまり良くは思われていないんです」

「何でだ?」


 矛盾しているような、矛盾していないような。まあ、さっきの写真の件も考えると、栄長が人付き合いが完璧な人間な訳ではないのは知っている訳だが。そもそもそんな人間はいないだろうしな。


「1年前、燐さんは交通事故に会ったと言う情報は合っていますよね?」

「ああ。音穏が言ってたし、そもそも本人がそう言ってたからな」

「でも、それが実は交通事故ではなかったとしたら?」

「どう言う意味だ?」

「本当は交通事故ではなく、『そうなる様にさせられていた』ら話は別ですよね」


 『そうなる様にさせられていた』だって?それはつまり言い換えると『誰かの意図で栄長が入院するはめになった』と言う事になるのではないか?


 俺は情報を正しく聞き取る為、湖晴の言葉を黙って聞き続ける。


「私の資料によりますと、燐さんは1年前に『交通事故で』大怪我を負い、病院に『丸々1年間入院していた』とあります」

「何もおかしくないだろ」

「おかしいんですよ、それが。冷静になってよく考えてもみて下さい。何で『交通事故で1年間も入院する』んでしょうか」

「・・・・・!」


 それは冷静になって考えれば分かる事だ。幾ら交通事故とは言っても流石に1年間入院するのは長過ぎるだろう。


「そうなんです。幾ら交通事故とは言っても、せいぜい数ヶ月で退院させられるはずです。それに、普通はたとえ患者が完治していなくても、直る見込みが出て来たら退院を強制させる、それが病院のはずなんです」

「つまり、栄長が1年間も入院していたのは不自然。最初の数ヶ月は本当に怪我で治療していたとしても、それだと、残りの何ヶ月もの時間が説明出来ない・・・・・!」


 少しずつ、俺の中で話が繋がって行くのが分かる。


「はい。ここで、先程私が言った『燐さんがその所属する科学結社で№2である』と言う情報が登場します」

「そうか!栄長は本当は交通事故になんてあっていなかった。だが、何らかの用件の際に『科学結社の№2としては行ってはいけない事をして、更に、その時に大怪我を負った』」

「おそらくその通りです」


 段々と栄長の過去と謎の長期入院について全容が分かってきたぞ。


 ん?でも、何か忘れている様な・・・・・


「あ、そうだ。そう言えば、さっき栄長は科学結社では嫌われていたと言ってたよな?それは何でだ?」

「まだ、話は続きます。その入院期間、まあこの場合は一種の罰を受けている期間とも言えますが『組織の№2がミスをして、1年間行動出来なくなっている』として、その組織の他のメンバーはどう思いますかね?仮にも、ミスをしたのは『組織の№2であり、次期リーダー』ですよ?」

「・・・・・あまり、良い印象は受けないよな」


 一般的な会社とかと同じだろう。社長、副社長、その他の社員がいたとする。そして、この場合、副社長に当たるのが栄長で、その他の社員に当たるのが組織の他のメンバーだ。


 そして、こんな事件が発生する。副社長が何か仕事でミスをしたとする。すると、会社全体でその責任を負うはめになる。当然、その他の社員もだ。


 自分達は一生懸命仕事をしていたのに上司の些細なミスで、給料が減ったりボーナスが無くなったりすれば、そりゃあ怒るだろう。むしろ怒らない方が不思議だ。何せ、自分は1つもミスなんてしていないのだから。


 おそらく、栄長と組織の他のメンバーの現在の関係はこんな感じだろう。どんなシステムになっているのかは検討も付かない科学結社だが、同僚から攻められる栄長の事を思うと、胸が痛くなる。栄長が1年前に何をしてしまったのかは知らない俺だが、そんな風に思える。


 その時、俺はある事に気が付いた。ここまで色々と話し合っていてなんだが、まあ、気付いてしまった物は仕方無い。


「なるほどな・・・・・。だが、湖晴」

「はい。何でしょうか」

「俺達は今回は『何を過去改変したら良い』んだ?」


 そう。俺達は『過去にあったはずの事件』の事や『栄長の個人情報』等について話し合っていただけだ。結局、俺は過去に行って『何を過去改変すれば良いのか』が何も判明していない。


 そして、俺の質問に湖晴が答えて行く。


「そうですね。まあ、ここまで話して分からないのも無理はないでしょう。かなり回りくどく説明していましたし」

「?どう言う意味だ?」

「状況を良く思い出して下さい」

「状況?」


 栄長が屋上で戦闘している、タイム・イーターが栄長を過去改変対象者と認定した、栄長の過去について分かって来た、くらいだよな?状況と呼べる物は。


「取り合えず、燐さんに関する情報は一通り手に入れました。なので、今の状況『燐さんともう1人の方の戦闘』を強制的に終了させる事が先決です」

「まあ、そりゃあな」

「それに、見てみて下さい」

「ん?」


 俺は湖晴が指した方向を見る。そこには、栄長とあの白髪の男が過激な戦闘を繰り返していた結果だろうか。建物の幾つかが大きく破損しているのが分かる。


「・・・・・!」

「分かりましたか。このままあのお2人に戦闘を続けさせる訳にはいかないんです」

「だったら、早く・・・」

「あああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

「「!」」


 そんな時、遠くの方から栄長の叫び声が聞こえて来た。


「何だ!?栄長だよな!?この声は!」

「次元さん!あれは・・・・・・!」


 栄長は何をしている?あれは・・・・・トラックだろうか。トラックの様な大型車が光源みたいに自ら光り輝いている。もしかして、あれも栄長の仕業なのか?何なんだよ、一体!


「おい、湖晴!何とか出来ないのか!栄長が何か不味い事をしようとしているのは俺にも分かる!」

「分かりました!何とかしてみます!」


 俺は湖晴に栄長の謎の行動を押さえ付けてもらう為に、指示を出した。そして、俺は今までに出した事のないくらいの大声で栄長の名前を呼ぶ。


「栄長ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

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