第12部
【2023年09月18日20時18分51秒】
~???視点~
何で『彼』がここに?さっき帰ったはずじゃなかったの?
「何だ何だ?」
「誰だ?あいつ」
「さあ?知らね」
それにしても、何しに来たのよ。私があとボタン1つ押すだけで私の目の前の連中はグチャグチャのミンチになる所だったのに。タイミング逃しちゃったじゃない。全く、良い迷惑だわ。
「教室に財布を忘れたから取りに戻った時に栄長の後ろ姿が見えて、何でか屋上に行ってたから付いて行ってみたら何でこんな事に・・・・・。おい、お前ら!今すぐ栄長から離れろ!」
いや、だから何で財布を教室に忘れて行くのよ。『忘れる物なんて持ってきてない』って言ってなかったっけ?
と言うか、何で私の後ろ姿が見えただけで付いて来てるのよ。それに、私はあなたになんて助けられなくても勝てるし。と言うか、むしろ邪魔だし。
「あいつ、頭イカれてるんじゃねえか?」
「でもまあ、この状況の目撃者は生かしては帰れないよな?」
「そうだな」
そして、下民の内の1人が自身の胸ポケットからナイフを取り出した。折り畳み式の安いタイプの物だ。・・・・・って!このままだと『彼』が危ないじゃない!
「私は大丈夫だから逃げて!」
「だが、断る!」
そこは素直になってくれ。
「俺はなぁ・・・・・今まで妹と幼馴染み以外の女の子から話し掛けられた事が無いんだぁぁぁ!!!」
「「「・・・・・は?」」」
「だから、そんな俺に気軽に話し掛けてくれた優しい女の子を虐める奴らは何があっても許さねぇぇぇ!!!」
寂しっ!普通に生活してても15年間も生きてたらそれなりに話し掛けられるでしょ。と言うか、私はそんな人に目を付けてこの数日間を過ごしたのか。・・・・・何か、物凄く脱力感が。
「うわぁ。こいつマジでヤベえよ。さっさとやっちまおうぜ」
「そ、そうだな。多分、頭のネジが全部取れちまってんだろうな」
「さて、ナイフナイフ・・・・・」
「え?えーっと・・・・・え?」
疲れる。物凄く疲れる。何で考えも無しで、しかも、余計な場面で登場するのかな。自分を守るよりも他人を助ける方が大変なのに。
男達が『彼』に向かって歩いて行く。男達の内の2人は手にはナイフを持っている。『彼』は自分の置かれた状況を認識していないのか、頭の上に『?』マークが出ていた。
「はぁ・・・・・」
私は手に持っているテレポーターを指示して、屋上にあり余っている鉄柵を『瞬間移動』させた。
「ほいっ」
ガチャン!ガチャガチャ!ガチャン!
「うわあ!何だこれ!?」
「と、取り合えず、ここは一端逃げるぞ!」
「お、おう!」
私は屋上にあった鉄柵を座標計算して『彼』の目の前に空間移動させた。私の持つ空間移動装置『テレポーター』は対象物質を粒子レベルにまで分解し、膨大なエネルギーを加える事で座標位置にほぼ0秒で移動させ、目的座標位置の手前で対象物質を復元する。分類的には素粒子加速器に近い物だ。
まあ、もう疲れたから、深くは説明しないけど。取り合えず、このテレポーターと言う機械の能力は漫画とかアニメで出てくるアレと同義として考えてもらって構わない。
ただし、細かい原理は全然違うし、本当は『物凄い速さで2点間を移動しているだけ』だから厳密には全然違うんだけどね。
私は男共が屋上から逃げ出しているのを見届けると、空間移動させた鉄柵を元あった位置に戻した。流石に元に戻すくらいはしとかないと、大事になったら困る。
そして、私は『彼』の元に歩み寄り、テレポーターを持っていない方の手を差し伸べて声を掛ける。
「大丈夫だった?」
「え・・・・・?あれ?」
『彼』はあまりに突然の異常現象に腰が抜けてしまったのか、床にへたり込んでいた。しかも、かなり冷や汗をかいていて、さっきからずっと唖然としている。男の子なのにだらしないなあ。
「何が・・・起きたんだ・・・・・?」
「奴らはあなたの気迫に怯えて逃げ出したのよ」
私はごく自然な流れで嘘を付いた。
「え?でも、さっき鉄柵が・・・」
「鉄柵?鉄柵ならほら、ちゃんとあるべき場所にあるじゃない」
私は鉄柵が空間移動した事を知らないふりをして『彼』に接した。この装置の事は本来、一般人には知られてはいけない。だから、今まではその存在を知ってしまった者を処分して来たんだけど、今回は特別。
「そ、そうか・・・・・。俺は別に栄長が無事なら良いのだが・・・・・」
「お人好しさんね。私は全然大丈夫よ?」
本当にお人好しだと思う。何で知り合ったばかり(クラスは同じだけど、『彼』曰く今日が初対面)の女の子が不審な動きをしているだけの理由で付いて来て、しかも特に考え無しでヤンキー共に向かって行くなんてね。
いや、向かって行ってはなかったか。結局、私が退治した訳だし。
「そろそろ時間も遅いし帰ろうか。あなたも妹さんにお使い頼まれてたんでしょ?」
「あ!そうだった!急がなければ!」
うーん。流石にここで分かれるのは何となく惜しいな。珍しいキャラだから、その情報を手に入れたいのだけど。
「そうだ。じゃあ、私も手伝うよ」
「え?でも、栄長は・・・」
「助けに来てくれたお礼。それに、1人よりも2人の方が早く済むでしょ?」
「それはそうかもしれんが・・・・・」
私のそんな言葉に少し戸惑っている『彼』。何か、男の子なのに可愛い。外見はどちらかと言うと中の上くらいの平均的な男子高校生なのに、今の『彼』は何かのマスコットキャラにしたい気分だ。
普段は草食系、さっきは肉食系と言う相反するキャラを巧みに操る謎の新キャラの『彼』だった。
「さあさあ、早く行こう?」
その後、私と彼は一緒に買い物に行った。
学校から出て、駅前のスーパーへ向かう為、私達は大通りに向かう。
「ねえ。何で私の事助けに来てくれたの?」
「え?それは・・・・・」
特に話す事は無いけど、珍しいキャラの情報を得たかった私は『彼』にそんな事を聞いた。まあ、答えはさっき『彼』が屋上に来た時に口走ってたから分かりきっているんだけどね。
「そりゃあ、女の子が男に何かされそうになってたら、助けるだろ?普通」
「・・・・・っ」
何でそんな台詞がさらっ出てくるのかしら。普通はそんな事思わないし、あなたの普通って一体どう言う基準なのよ。
「ん?どうかしたのか?」
「ううん。何でもない。あなたって優しいのね」
「そんな事ない。それに、1対3ってのも気に食わなかったしな」
「あー、さっきの場面の事?」
確かに1対3だったけど、そもそも1人あたりの力量がテレポーターのお陰で私の方が大きいから問題ないんだけど。
でも、『彼』はもしかしたら私と同じ思想を持っているのかもしれない。『彼』なら私の事を分かってくれるかもしれない。そう思った。
そんな事を考えていると、目的地のスーパーが見えて来た。思っていたよりも近かった。
その時、『彼』が私の斜め右前に少し速く歩いて行き、後ろ、すなわち私の方を向いて言った。
「そろそろ着きそうだな。本当に良いのか?」
「何が?」
「いや、俺大した事してないのに、買い物まで手伝ってもらって」
「良いのよ。それに、私が好きでしてる事だし」
「?そうか?」
「うん。そうそう」
私は今まで誰にも見せた事の無い、本当の笑顔で『彼』にそう答えた。
だが、次の瞬間だった。
パンッ!
「え・・・・・?」
何処からか銃声音が聞こえた。そして、『私に』大量の血飛沫が飛んでくる。
今の銃声は何?この血は誰の?
そして、私は現状を良く確認した。目の前にいるのは『彼』だ。それは間違い無い。でも、その人は数秒前の『彼』じゃない。何故なら、『彼』の着ている制服が真っ赤に染まっているからだ。それはまるで、『銃に撃たれて、大量に血が出ている』かの様な光景だった。
「え・・・?」
『彼』の左胸から血が溢れ続けている。それに、さっきの銃声・・・・・。まさか、今の銃弾が当たったの?だとしたら、今私にかかった血は『彼』の?
私は力尽きて倒れて来る『彼』を両腕で受け止めた。
「ねえ!大丈夫!?・・・・・そうだ!早く病院に・・・」
テレポーターを使って、何か交通手段可能な物に乗れば一瞬で移動出来る。だから、私はテレポーターを取り出そうとした。
だけど、その直前、私はある事に気が付いてしまった。出来る事ならば気付きたくない事に。
「嘘・・・・・」
心拍数を調べる時に『彼』の胸に触れると、『彼の心臓が止まっている』。息を確認してみるも、少しもしていない。
「何で・・・・・?何で何で何で・・・?」
ついさっきまで私の隣で楽しく話していた人が死んだ?何で?銃で撃たれたから?何で撃たれた?何でこんな夕方のこんな普通な街中で?
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!
「いやあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
私は泣き叫んだ。目の前で起きたショッキングな出来事に対して精神が不安定になったからかもしれないけど、それ以前に『彼』が死んだ事に対して悲しみを覚えたからだった。
「いや・・・いやぁ・・・・・あぁぁぁ・・・・・」
私は泣き崩れて、自分の頭を抱えた。
特殊な組織に所属している私だから、命を狙われる事も多々ある。でも、ついさっきまで誰からも狙われている気配なんて感じなかったのに。
もしかして、本当は誰かに狙われていたけど、私が『彼』と話せた事に浮かれ過ぎて気付かなかっただけ・・・・・?
じゃあ『彼』が死んだのも全部私のせい・・・・・?
そんなのは嫌だ・・・・・嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁ・・・。
「・・・・・燐」
その時、私の後ろからお父さんの声が聞こえた。私は泣いてぼろぼろになった顔を隠す気力も無く、後ろを向く。
「え・・・お父・・・さん・・・・・?」
「燐。悪かったな。言っていなくて」
そこにはお父さんがいた。え?でも、今の時間は仕事中じゃないの?
それに、何を言っているの?お父さん。
そして、精神がかなり不安定になり冷静な判断が出来なくなっている私に、お父さんは続けて言った。
「今から『彼』を助ける」
その次の瞬間。私とお父さん、そして『彼』は何処かの薄暗い研究施設内にテレポートして来ていた。おそらく、お父さんが持つ私の物とは別のテレポーターの能力だろう。でも、何で?
「・・・・・お父さん、これは一体・・・・?」
「『彼』は銃で撃たれて死んだ。だから、今から蘇生する」
「え?」
「『彼』はまだ死んではいけないんだ。これは『time technology』と合同で計画されている事なんだ」
合同計画?『time technology』と?でも、あそこは私達の組織と相反する目的の組織のはず。なのに、手を組んで『彼』を助ける?
「この事はもっと早く燐に言うべきだった。私も悪いと思っている。でも、燐には15年間ずっと隠せていたからね。まさか真実がバレるとは思ってもいなかった」
「・・・・・どう言う事?」
「仕方無い。知られてしまっては、もう誤魔化しも聞かないしな。じゃあ、真実を教えよう。それは・・・・・」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
・・・・・・・。
何か、昔の事を思うと胸が苦しくなって来た。思い出さなければ良かった。
そうそう。今から1年前にあった事について話すのだったわね。まあ、今の過去の回想から察してもらえる通り『彼』関連で色々あった、と言う事だけ言っておく。
それにしても、本当に思い出さなければ良かった。気分が悪い。ちょっと、気分転換にゲームでもしよう。ゲーム内で『彼』を叩き潰したらすっきりするだろう。
私は適当に椅子に腰掛け、パソコンの電源を入れる。
「あれ?対戦の申し込みが来てる。珍しい」
基本的に私に対戦を申し込んでくる輩はいない。何故なら、負けるとそれなりに損する事があるからだ。まあ、私はランキングトップになるくらい強いから、誰も寄り付かないって事なんだけどね。
だから、私が強制対戦を申し込む時とトーナメント戦の時と物好きな奴が対戦を申し込んで来る時以外は、私は対戦しない。それに、今日は平日だ。普通に学生とか社会人やっている人なら、そんな暇は無いだろう。
私はパソコンの画面を見て、この私に対戦を申し込んできた物好きな奴の登録名を見る。
「『Cobalt ID:040927』?」
初めて見る登録名だ。先週の勝ち星ランキングにも載ってなかったと思う。新入りかな。なら、私の事を知らずに、対戦を申し込んで来ちゃったのも頷ける。
それにしても何で登録名が『Cobalt』?私も登録名は『Phosphorus』だけど。まあ、別に良いか、そんな事。そんな共通点はよくある事だ。
そして、私は暫く『Cobalt』と対戦をし続けた。互いに了承済みの対戦だったので連戦が可能だった。結果は8戦7勝1敗。どれも10分程度かかった、白熱したバトルだった。
だけど・・・・・負けた?この私が?初心者に?それにこの人、昨日『彼』の身代わりで私と対戦した人と動きがほとんど同じ・・・・・。
まさか、その人がIDを獲得して私にリベンジして来ていたと言うの?これは、本人達に事の真相を確かめなければいけない。
私は『Cobalt』に1言『今からそっちに行く。リアルで』とメッセージ送り、出掛けられる準備をして家を出た。そして、目的地へと向かう。
そう。その『Cobalt』がいるはずの『彼』、上垣外次元君の家へと。




