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Time:Eater  作者: タングステン
第三話 『P』
48/223

第11部

【2023年09月18日20時11分22秒】


~???視点~


 場所・自宅。時刻・2023年09月18日19時11分22秒。


 ここが私の居場所。私の家。私の・・・・・。


 昔から私の周りには沢山の人がいた。皆優しかった。皆私の事を思ってくれている。ずっと、そう思っていた。


 だけど、本当はそうじゃなかった。何もかも、私の思っていた事は間違っていた。誰1人として本当の私の事を思ってくれている人なんていなかった。


 何でこんな事になっちゃたんだろう。私は言われた通りに行動して来た。今も昔も。


 幼い頃から英才教育を無理矢理受けさせられた。勉強は嫌いだ。だから、出題者や問題の書き方等から法則を見つけ出して回答を導き出す事で楽をした。


 幼い頃から人付き合いは大事だと言われて来た。私は1人の方が好きだ。でも、話し相手の事を友達とか仲間と思う事無くただ1人の人間として見れば、情報交換の為の付き合いとして割り切って考える事が出来た。


 もう嫌だ。こんなの。


 私がこの様に今の境遇、そして、昔からの記憶について考えていると、背後から足音がした。その足音は少しずつ私に近付いて来た。その後、その足音の主は私に話し掛ける。


「燐。今日は学校はどうだった?」

「うん。久し振りだったけど、問題無かった」


 その人は私のお父さんだった。また、お父さんは『space technology』と言う名の組織のリーダーだ。もちろん『space technology』には私も入らされている。拒否権は無かった。あるはずもなかった。


 あと、『space technology』は別に変な宗教団体ではない。むしろ、宗教とは正反対の存在である科学を研究する組織だ。主に『空間移動』、つまり分かりやすい言葉で言うと『テレポーテーション』について日々研究をしている。


 マッドサイエンティスト達が目を輝かせて食い付いて来そうな内容だが、『空間移動』に一般的な常識は通用しない。粒子加速、質量保存の法則等、一般的な理論も使用されるけど世間には公表されていない事も使用していたりする。


「流石に1年間も学校を『休ませる』のは不味かったかと思ったが、私にも組織のリーダーとしての使命があるからな。悪かったと思う。まあ、その心配は要らなさそうだがな」

「もちろん。騒ぎを大きくしちゃったのは私のせいだから、罰を受けるのは当然の事。それに、私はお父さんの1人娘だからね。心配する必要は無いよ」


 私は1人っ子だ。両親はいるけど兄弟姉妹はいない。そして、さっき話した様にこの組織のリーダーはお父さん。だから、その後継者として私は次期リーダーとなる。空間移動系能力研究科学結社『space technology』の次期リーダーに。


「そうだな。燐が良い子で良かった」


 ・・・・・違う。違うよ。お父さん。私は良い子なんかじゃない。いや、良い子になりたい訳じゃない。もっと普通の、平凡な日々が欲しかった。特殊な事情は要らなかった。別に、今更後悔なんてしない。でも、やっぱりもう少しましな人生を送りたかった。


「じゃあ、私はそろそろ部屋に戻るから」

「そうか。まあ、元気そうでなによりだ」


 私はそう言って、この『施設』内にある自室ではない何処かから、自分の部屋に戻る。


 今日は登校初日だと言うのに、色々とイベントが起き過ぎた。体力的にはまだ全然問題無いけど、それでもやっぱり精神的には少し疲れた。


 学校では『彼』の前の席になれたのは嬉しかったけど、『time technology』の1人が何故か転校して来てたし、帰り道では『彼』に追い付けたのは良かったけど、あの語尾が気持ち悪い幼馴染みとその操り人形に会っちゃうし。もう散々だった。


「はぁ・・・・・」 


 私が溜め息を付きながらお父さんのいる方向とは逆方向に歩き始めた時、お父さんから再び話し掛けられた。


「ああ、そうだ。大事な事を聞き忘れていた」

「?何?」

「『特異点』の様子はどうだった。何か不備は無かったか?」

「・・・・・・・」


 『特異点』。ここで言う『特異点』とは、かの有名なブラックホール関連の『特異点』の事ではなく、法則の基準にそぐわない、つまり、世界のルールを無視した特異な存在の事を指す。


「別に。いつも通りだったと思う」

「それなら良いんだが。悪いな。気を使わせて」

「お父さんが謝る事じゃないよ。それに、お父さんは『私の気持ちを知っていて』、『あの計画』から途中で抜け出したんでしょ?」

「・・・・・用事を思い出した。私もそろそろ部屋に戻るとする」


 お父さんは強引に話を打ち切り、そそくさと歩き去って行った。こんな時間に用事なんて無いくせに。私の質問に正直に答えられなかっただけのくせに。


 でも、お父さんは悪くない。『特異点』君も悪くない。悪いとしたら、この世界の存在そのものだ。この世界の決まりきった因果を捻じ曲げる何かがあれば使ってみたいものだけど、そんな上手い話は無い。


 私には幼馴染みが1人いる。私はそいつの事が嫌いだ。心の底から嫌いだ。昔の気持ちはもう忘れたけど、今はもう嫌いだ。いつも自分の事しか考えていない2次オタのくせに、都合良くこっちの味方になる。だから嫌いだ。


 本人はアニメの主人公に憧れてあんな事をしている訳ではないのだと思う。だけど、その行動は自己犠牲で他人を救うと言う、飽きれてしまう程の自己満足に過ぎない。


 あいつは私の事を今のこの、とてもじゃないけど不運な境遇から解放させようとしてくれた。でも、そんな事は無理だ。そんな事をしたらあいつが傷付いてしまう。あいつは私と同じ組織の人間に殺される。


 だから、私は止めなくちゃいけない。


 あいつが何と言おうと、あいつが何をして来ようと絶対に止めないといけない。1年前は別件で戦ったけど負けた。いや、正確には勝ったけど、大怪我を負わされた。でも、あいつの足を止める程度には怪我をさせる事が出来た。


 あいつは過度な2次オタのくせして、自作で人工知能をプログラムしてしまう様な意味不明な奴だ。あいつの入っている『space technology』とは別の組織は壊滅寸前だから、学校にもろくに行けてないくせに。まあ、その内の1年間はさっき言った通り、私が入院させたからなんだけど。


 1年前にあった事。それは何なのか。その事について軽く話そうと思う。でも、その前に『あいつ』とはまた別の人物の『彼』、またの通称を『特異点』君との過去について話そうと思う。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


 私がまだ中学3年生の頃だ。当時も今と大して変わらず、情報交換の対象人(一般的には友達)にも恵まれていて、成績も悪くはなかった。皆の前では猫を被って生活していたから、世間体もかなり良かったと思う。


 だけど、私はその恵まれた環境の中である事に気が付いた。


 ある日、クラスメイト数人と情報交換をしている時に、ふと教室内である物を見つけた。それは、何時見てもうつ伏せ状態で眠っている男子だった。


 休み時間はもちろんの事、授業中まで。唯一『彼』が起きている時間帯と言えば、移動教室の前と『彼』の幼馴染みの女の子と話している時くらいだった。


 私は『彼』の幼馴染みの女の子と仲が良かった。去年、つまり中学2年生の時に同じクラスになったからだ。と言うよりは、私の好みの女の子だ。だから、その子だけは情報交換の対象人ではなく、友達と呼んでも問題無いだろう。


 そして、私はその子に『彼』の事を聞いた。『彼はどう言う人なのか』、『彼は何故いつも寝ているのか』、『彼は何故そんなにあなたと仲が良いのか』等々。


 これらとその他幾つかの質問をその子にした時、最初は不思議そうにされた。それもそうか。クラスでいわゆる『ぼっち』の男子の情報を知りたがる女子なんて普通はいないもんね。


 でも、その子はいつも通りの笑顔で丁寧に教えてくれた。


 別に彼の事について何かを知りたかった訳じゃない。私はただ、賑やかな教室の中でひっそりと異様なオーラを放つ『彼』の存在について気になっただけだ。


 それから数日が経った。大して代わり映えのしない毎日。表では人の良い優等生を演じ、裏では秘密組織で露払い的な事をする。ただそれだけの日々。


 だけど、数日前までとは違い。この退屈な日々に1つだけ楽しみが出来た。


 そう。私は時間さえあれば、『彼』を観察する様になっていたのだ。本当はこう言うストーカーみたいな行為はしたくなかったけど、『彼』の放つ初めてのオーラに引き寄せられて私はそんな事をしていた。


 そんなある日。放課後、私はクラスメイトの女子数人から呼び出された。まあ、こんな事も最近では良くある事だ。特に私の場合は。


 それなりに人脈が広く、表向きは皆と仲が良い様に振舞っている私だけど、そんな私の事を良くは思っていない連中もいる。特に女子からは私に男子の視線を取られて嫉妬する輩もいるから面倒だ。こっちはむしろ迷惑なのに。


 こう言うのは毎回毎回、処理するのが大変だけど、仕方ないよね。向こうが先に行動を起こしたんだから。


 『先手必勝』って嫌いじゃないけど、1人を大人数で襲いにかかるってのは気に食わない。普通は人数が多い方が勝つのだから。世界は全て多数決で決するのだから。少数派を待っているのは破滅しかないのだから。少数派の考えを持つ私からすると、少しでも早く消えて欲しいと思ってしまう連中なのだった。


 でも、いつも通り処理しちゃえば良いか。処理後は誰も覚えてないはずだし。そこら辺にポイポーイってね。大事件にでもなってしまえ。お父さんとかには幾らでも言い訳出来るし、むしろストレス発散になって良いかもしれない。


 そして放課後になった。私は呼び出された通り、学校の屋上へと向かった。その途中、見覚えのある顔が私のすぐ横を通った。


「あれ?今帰り?もう5時だよ?遅くない?」

「ん?えーっと・・・誰だっけ?」


 その見覚えのある顔とは、例の『彼』だった。それにしても酷い。何で私の事を覚えてないのよ!同じクラスでしょ!?しかも、出席番号が近いから席も近いのに!


「栄長だよ?あなたの左斜め後ろ3番目の」

「栄長・・・・・?あー、栄長ね。思い出した。俺教室でいつも寝てるから、クラスメイトの名前覚えられなくて」

「そうだったわね。あ、それはそうと、こんな時間まで何してたの?忘れ物?」

「いや、忘れる物なんて何も持って来て無いっすよ」

「?じゃあ、何で?」

「いや、その・・・ついさっき起きたから」

「ついさっき起きた?」


 どう言う意味だろうか。まさか、今登校して来たなんて言わないわよね。流石にそれはお笑いでも寒いぞ。


「5時少し前くらいに目が覚めて、周りを見たら誰もいなくて授業が終わった事に気が付いたって事なんだ」

「・・・・・」

「あはは・・・。変だよな、俺。いつも寝過ぎだもんな。少しくらい自重しないとな・・・」

「変じゃないよ」


 私は自分自身の事を変と言った『彼』に言った。『あなたは間違っていない。自分が信じる道を進めば良いんだよ』って事を教えてあげる為に。


「え?」

「変じゃない。あなたはそのままで良いんだよ」

「そ、そうか・・・・・?」

「うん」

「あ!ヤベッ!珠洲に買い物頼まれてたんだった!悪い!じゃあ、またな!」

「あ・・・うん・・・またね」


 『彼』はそう言って、走って行った。『彼』には今から私がする事は知らないでおいて欲しいから都合が良かったけど、何か悲しかった。でもまあ、知らない方が『彼』の為だ。


 私は階段を上り、屋上へと上がる。そこには私を呼び出した女共ではなく、柄の悪い男共数人が待っていた。どうせ、私に何か卑猥な事をするつもりなんだと思うけど、あいにく、私はあんな奴らに触れられる程『遅くは無い』。


「へぇ~。ちゃんと来たんだ~」

「うわっ。この子超可愛いじゃん。マジでヤっちゃって良いのか?」

「良いって良いって。どうせ、何されても言えやしねえよ」


 下民共の話し声が周りから聞こえる。こんな状況は今回を含めるともう4回目だ。流石に慣れてしまった。こんな下民共を処分する方法なんて、簡単な事だ。撲殺、圧殺、刺殺、何でもありだ。今回は何にするか・・・・・。


「それじゃあ、早速・・・」


 下民の1人が私の胸に手を伸ばして来る。私は背中に隠し持っているステッキ状の空間移動装置を握り締めた。


 今私が持っているこの空間移動装置『テレポーター』は私の脳波を感知する設定になっていて、その脳波の波形で空間移動させる対象物とその移動範囲を指定出来る、チートマシンだ。


 『space technology』に入らされた時にリーダー、つまりはお父さんから譲り受けた物だ。一応、護身用に学校に行っている間も常に身に付けている。


 後は、今指で触れているボタンを押せば、この目の前の男はあらゆる方向から飛んで来た大量の鉄柵によって圧殺される事だろう。何故なら、私がそう言う風にこの装置に指示を送っているからだ。


 そして私はボタンを・・・


「おい!お前ら!何やってるんだー!」


 突然、そんな声が聞こえて来た。私と男達はそれぞれの行動を途中で停止し、その大声の発信源を見た。そこには、『彼』がいた。ついさっき帰ったはずの『彼』が。

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