38.対決!! 地球人の代表者!(2)
「未來が銀河パトロールゥゥ!?」
顔のつくりはまったく同じだが、普段の自信なさげでおどおどした表情ではなく、きりりとしまった生真面目そうな顔があった。
「未來は私が普段の生活で使用しているAI人格です。本体はこの私こと、ツクヨマとなります」
「なんで銀パトが女子高生やってんだよ!」
「銀河パトロールでは、任務以外の時間は配属先の惑星で一般人として暮らすのがルールとなっています。私の見た目が日本人のハイティーンに類似しているため、上司の提言で女子高生となりました。ですが私は、日本はもちろんのこと、地球の文化にすら馴染みがありません。地球人の進化に影響を及ぼすような失言がないようにと、AI人格を使用しました。以上が質問の回答となります」
ツクヨマは抑揚なく淡々と説明した。
こいつ、苦手なタイプだ……。いってやりたいことはいろいろあるが、さっさと罰金なりを払って追い返そう。
「はいはいはい。そうですか! でっ! 安月給の私はおいくらほどお支払いすればよろしいのですかっ!?」
「罰金刑ではありません。地球時間にしての懲役三百年となります」
なにをいっているのかすぐには理解できず、きっ子の反論は数瞬遅れた。
「未開人への情報提供で三百年って、そんなばかな! 寿命の長い私の種族でもババァになっちゃうじゃん! だいたい、どんなに無茶してもせいぜい数年でしょ!」
「確かに本件と同じ違反で、懲役五年を超えた例を知りません」
「だったらなんとかしてよっ!」
「量刑については銀河連邦星間安全保障委員会の所管です。私はその決定に従うのみです」
「納得できない! 理由ぐらいは問合わせできるだろ!」
「承知しました」ツクヨマは数秒目を閉じてから、ゆっくりと開いた。「問合せの結果、蓮川カナタへの情報提供が、大きく地球の進化に影響あるからだということです」
カナタがナニを知っても地球の進化に影響するわけないだろ、委員会は銀河の中で一番バカな組織なのかっ!
そう罵りたいところだが、心証が悪くなるだけだと、きっ子にしては珍しく自制がきいた。
それにしてもまずいことになった。
星間安全保障委員会は銀河でトップ権力の一つだ。裁判もなしに量刑まで決めてしまう横暴な組織で、大金をはたいて裁判に持ちこめたとしても、彼らのメンツにかけて減刑などしないだろう……。
とはいえ、大いに不服はある。なにせ、きっ子は地球人を救うために私財を投じてアンドロメダにおもむいたのだ。確かに救出ついでに不要なコトまで喋ったかもしれないが、地球人を救った功績は加味されるべきだし、そもそも地球人をワープさせたモノこそ罪に問われるべきなのだ。
「そうだ! 誤作動で片付けてたけど、ひょっとしてあのエラルドってアンタのじゃないの?」
「確かにあれは私がピンク屋に売却したもので、それを蓮川カナタが買い取りました」
「だったらそもそもの元凶はアンタじゃない!」
「その経緯はすでに上司へ報告済みです。しかし、エラルドを起動したのはAI人格のため、私こと、ツクヨマに罪はないと委員会は結論づけました。また、AI人格を開発した企業、販売した企業も調査対象となりましたが、その違法性は認められていません」
「でもでも、納得できないー! なんで私が三百年も牢屋に入らないといけないのよぉ!」きっ子は幼児のように手足をバタつかせた。
「落ちついてください、サイル・ト・ルー・キコ。蓮川カナタの記憶が消せれば、執行猶予がつきます」
「そりゃそうか!」きっ子の表情がぱっと明るくなった。「確かに記憶を消せばいいだけじゃん! 教師の安月給にはキツイけど、懲役三百年に比べれば屁でもないわ」
「ですが、蓮川カナタへの記憶操作は銀河第四種技術規制法九五七七に抵触するため許可できません」
「どういうことよ?」
「記憶消去のシミュレーションをした結果、蓮川カナタのアンドロメダへの想いが強すぎるため、〇・〇二パーセントの可能性で脳に障害が残ります。記憶消去は、リスクが〇・〇一パーセント以下でないと実行できません」
「要は自力でアンドロメダに行くとかいうバカげた夢を、あきらめさせればいいわけだな」
「そうなれば、問題なく記憶消去が可能だと考えます」
「期限は?」
「明日中とします」
「あしたぁ!?」ハードルの高さに泣きたくなった。石油王の進路希望すら、一ヶ月かけても進展しなかったのだ。「ちなみに、カナタの説得に失敗したらどうなるの? 私は三百年閉じこめられ、カナタは九九・九八パーセントの可能性にかけて、無理やり記憶消去?」
「サイル・ト・ルー・キコに関してはそのとおりですが、蓮川カナタの記憶消去は法に抵触する以上、法的に可能な別の手段を用います」
「なに、それ?」
「蓮川カナタを駆除します」
「カナタを殺すっていうのか!」
きっ子はツクヨマの胸ぐらをつかみ、声を荒げた。




