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正義の棍棒

「こっちこっち!」

「おお、凄いな。隠し扉の先にこんな部屋があったなんて、お手柄じゃないか」

「えへへ、ありがとう」


 戦いが得意な男の戦士と探索が得意な女の盗賊。

 腕利きの冒険者コンビとして名を馳せている男女は、目をきらきらと輝かせて財宝が転がる室内を見た。

 さまざまな武器や防具にアイテム……これだけあれば、遺跡の地図を買った代金など軽く回収しておつりがくるというものだ。


 宝石箱のようなこの部屋の中でも、特に一つの台座が両者の目を引いた。

 上には美しい装飾がされた棍棒が載せられている。

 台座にはパネルも据え付けてあり、それが女盗賊の興味をそそった。

 女盗賊は念のため周辺を警戒しながら台座へと歩を進める。

 台座を調べることしばし、特に危ないところはないと判断した女は、台座を飾るパネルを覗き込んだ。


「正義の棍棒って書かれてるみたいね。うーん……でも分かるのは名前だけね。説明書きっぽい部分もあるけど、もうかすれてて読めないわ……」

「へえ、正義の棍棒か。ずいぶんと御大層な名前だな」

「たしかに。あたしたちには似合わないわね!」


 パネルから顔を離した女と、同じように台座に近づいていた男は顔を見合わせてからからと笑った。

 ひとしきり笑いあったあと、男が興味深そうに台座の上の棍棒を見つめる。


「いわくありげだし、何か凄い能力があるのかもしれないな……。触ってみたいんだが、台座に罠はないか?」

「念のためにもう一度調べてみるね、ちょっと待ってて……うん。大丈夫よ」

「ありがとう。どれどれ……ふん、なかなか悪くない手触りだな。見た目も豪華だし、気に入ったぜ」


 戦士の男が棍棒を手に持ってえつに入っている間、女盗賊は男のそばを離れて部屋を占拠する他の財宝に目を通していた。


「ところで分け前の話なんだけど……こっちからこっちはあたしがもらっていい?」


 女盗賊は男があまり興味を示さないような、アクセサリー系のアイテムが多く積まれているところを指した。

 すばやく査定を済ませた彼女は、それで同じような取り分になるとあたりをつけたのだ。お互いに信頼しあってる二人ならではの、いつものやり方だった。


「あ? 何を言ってるんだ。全部俺のものに決まってるだろう?」

「……え?」


 これまでのように快諾が返って来ると思っていた女は、びっくりして男の顔をまじまじと見た。

 しかし、相棒の顔は大真面目であり、一片の情も隙も感じさせない。


「まあ手間賃くらいは払ってやる。長いつきあいだしな。それで十分だろう?」

「ちょ、ちょっと……ど、どうしちゃったのよ? 冗談よね?」


 わずかな恐怖を顔に滲ませ、女盗賊は男にすがるようにそばに駆け寄り、上目遣いに見上げた。

 しかし男はそんな女を見て、ハエを追い払う時のような表情を浮かべ。


「うるさい、俺は正しいんだ!」


 男が振り下ろした棍棒が女の脳天を直撃した。短い悲鳴とともに女は倒れる。もはやその頭は原型をとどめておらず、女の体はぴくりとも動かない。

 かつて相棒だった女盗賊の死体を見下ろしながら、男は吐き捨てる。


「まったく……俺に逆らうからだ」


 そう。この棍棒を持つ者こそが、正義なのだ。誰がなんと言おうと。

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