ミニマルな生活
『ミニマルな生活こそ人間らしい生き方です』
ある時期から、その国の中でそんな言葉がささやかれるようになった。
ミニマルとは必要最低限といった意味を持つ言葉。
つまり、余計なものは全て捨て去り、必要最低限のものだけを持って生活しようという考え方である。
まず流行に敏感な人たちがその考え方に飛びついた。
さっそく実践して不要なものを手放してみると、確かに快適な気持ちになれる。
家の中を占拠していたガラクタがなくなり、頭の中もスッキリしたような気持ちになるのだ。
そう実感できた人たちが、ミニマルな生活は素晴らしいと口にするようになり……。
次第にミニマルという考え方が、大多数の間にも広まるようになった。
人々はこぞって不要なものを処分しはじめる。
大した金額にはならなかったものの、家の中をすっきりさせることが主目的なのだ。むしろ二束三文で買い取ってもらえてラッキーなくらいである。
こうして、国民すべてがミニマルな生活をおくるようになったのであった。
「はっはっ。ミニマルな生活が流行ったおかげで、高価なマジックアイテムを安値で手放す連中が多くて助かるよ」
「まったくです。ミニマルな生活は快適だと発信し続けた甲斐がありましたな」
「二度と作れない貴重なマジックアイテムを売り払うなど、ありえない。先祖代々の家宝としても良いくらいだというのに」
「きっと大量生産大量消費の生活に慣れてしまったのでしょうなあ……愚かなことです」
「これだけのマジックアイテムが揃えば、もはやこの国は我々の思うがまま……ゆっくり料理するとしようか」




