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勝ち組の人生

 俺はガキの頃、みじめな人生を送っていた。

 心を許せる相手もおらず、強者からは搾取され、飯にありつくのも一苦労。


 それでも十を越えるまで生き延び、後ろ盾もない俺は冒険者になってその日暮らしを始めた。ただ勝ち組になりたい。それだけを生きる目的にして。

 固定のメンバーと組むことはなく、一時的な冒険者パーティーに入っては抜け。

 そんなことを繰り返し、俺は実力を身に着けた。ダンジョンの奥から宝を手に入れて帰還したことも数知れず。


 いつの間にか俺は、冒険者たちの間でそれなりの実力者として一目置かれるようになった。

 もちろんそんなことくらいで満足する俺じゃなかった。まだまだ、勝ち組ってやつにはほど遠い。

 冒険者として名をあげてからも、そこに依頼があれば内容を選り好みすることなく参加した。

 ダンジョンに潜ったり、ひとつの村を救ったりと、がむしゃらに活動する毎日。


 でもある日気づいたんだ。いわゆる勝ち組ってやつにすでになっていたことに。

 食うに困ることなんてもうありえない。これまでに手に入れた財宝のおかげで死ぬまで遊んで暮らすことも可能だろう。美女を抱くことだって思いのままさ。金さえあればいくらでも寄ってくるからな、女ってやつは。

 他人がうらやむ生活。大成功の人生。今では新人の冒険者が俺を憧れの視線で見つめてくるくらいさ。


 でもいつの間にか全てが空しくなった。

 美味い飯を食べても、美人とベッドを共にしても、高価なお宝を見つけても、もう何も感じない。


 勝ってしまったから、こうなったのか?

 上を目指している間は、たしかに充実していた。

 少なくとも目的はあったわけだからな。

 しかし俺はもう欲しかったものをすべて手に入れてしまった。新しくやりたいことも思いつかない。

 かといって、今さらすべてを捨てていちから始めるなんて出来るわけがない。またガキの頃のようなみじめな生活に戻るなんて、まっぴらごめんだからな。


 一人で街をうろつき、あたりを見回して思う。


 なんだこれは。

 なぜこうなったんだ。

 俺より金も女も地位もない奴らが、なんであんなに幸せそうに見える?


 全てを勝ち負けで考えたのがいけなかったのか?

 でも俺には友情とか愛とか家族とか、そこいらの連中が語る言葉の意味が分からなかった……。


 分からなかったんだよ!!

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