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俺より強い奴に会いたいから女神に頼んで異世界転移!

 女神は男の発言にびっくりし、瞳を大きく見開いてまじまじと見た。

 しかし女神の前に立つ男は不遜ふそんな態度を崩さない。


「もう一度、言ってもらえませんか?」

「他の世界に転移させてくれって言ったのさ。それもとびきり強い連中がいるような世界にな!」


 自信満々な笑みを浮かべる男。

 男は、この世界で最強と言われる存在であった。

 人間はもちろん、魔王を含むモンスターたちでさえ、男にかかれば一瞬で倒される。

 そのことが男を尊大にさせ、やがてそんな願望をいだかせたというわけだ。


 女神は何も言わず、しばらく男の顔を見つめた。

 魔王を倒してくれた功績もあるし、女神としては男の願いを叶えても構わないのだが……。


「本当によいのですか? たしかにあなたが言うような強者がはびこる世界に心当たりがありますし、あなたを今の姿のまま転移させることも出来ますが……」

「ああ、頼むぜ女神さんよ。この世界の連中は弱すぎて退屈しのぎにもならねえんだ。……会いたいんだよ、俺より強い奴に!」


 男の笑みが歪んで苦しそうなものになる。退屈がもはや苦痛になってしまっていることがうかがえた。

 それでも、女神はもう一度念を押す。


「転移させたあとは、もう私の力が及ぶことはありません。この世界に二度と戻って来れなくなりますが、後悔しませんか?」

「構わねえ。後悔することなんて絶対にないさ……やってくれ!」

「……分かりました。それでは転移の儀式を執り行います」


 そこまで言われては、もはや女神も反対することは出来ない。転移の儀式を執り行う準備を始めた。

 しばらくして女神の儀式は完成し、男は女神に感謝の言葉を伝えながらこの世界から旅立った。


 光に包まれ、意気揚々と新しい世界に転移してきた男。

 しかし、すぐに驚くことになる。

 前の世界では最弱のモンスターとして扱われていたゴブリンでさえ、男の実力をはるかに上回った。

 ゴブリンにあっさり打ち倒され、信じられないという顔で地に伏せる男だったが、やがて自分の心にふつふつと闘志が湧いてくるのを感じる。


 そう。これこそ自分が求めていたものだ。強敵たちとの闘い。そのために自分はこの世界にやってきたのだから。


 激痛の中、男は笑みすら浮かべた。


 こうして始まったのだ。男の新しい人生が。

 異世界からやってきた男の噂は、間もなくこの世界の隅々へと広まっていくことになる……。




 どれだけの時間が経っただろう。

 男はとっくの昔に、かつて女神に転移したいと願った自分の行いを後悔していた。

 ゴブリンなどのモンスターだけでなく、人間たちのあいだですら男は最弱の立場だった。


 自分が望んでいた新世界だったはずのここは、まさに地獄。

 いや、地獄すら生ぬるい。男は自分を捕まえた悪魔に不死の呪いをかけられ、もはや命を絶つことすら叶わない。今では見世物としていたぶられる日々。


「めがみひゃまあ……たにょむ……俺を、元の世界にもどひてくりぇ……」


 男はもはや原型を留めないくらい膨れあがった顔で、子供のように泣きじゃくりながら、血がこぼれる口を開いて必死に助けを求める。

 しかしあの時女神が忠告していた通り、ここは彼女の力が及ばない世界。

 その声が女神に届くことはないのであった。

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