魔王を殺した者が新たな魔王となる
魔王を殺した者が新たな魔王となる。
恐ろしい呪いだ。しかし、それは知らずに魔王を殺してしまった場合に限る。
賢者の力により、その呪いの秘密は暴かれて全人類の知ることとなった。
そこで勇者を含めた王国の人間たちはこう考えた。魔王を殺さなければ良い、と。
魔王には一切近寄らず、モンスターだけをターゲットにしてレベルアップを続け、ついに魔王すら叶わないほどの実力を身に着けた勇者たち。
やがて魔王城への侵攻が始まる。しかし目指したのは魔王の玉座ではない。四天王の住処だ。
まずはその手足をもぐことが先決。勇者たちによって四天王はあっさり始末される。この頃にはすでに、魔王城の出口はすべて塞がれていた。四天王のひとりがこっそりと作っていた脱出用の抜け穴も含めて。
四天王がいなくなったあと、魔王直属の兵たちも次々に討たれた。もはや魔王の勢力は魔王本人と、魔王城の玉座のみ。
魔王は今日も玉座にいた。勇者たちが挑んでくることもなく、自分の味方がすべていなくなったことを除けば、変わらない日々。
――変化が欲しい。敗北してもいいから、人間たちと戦いたい……!
それが魔王の切なる願いであった。
しかし強力な結界が張られており、玉座から動くことも出来ない。
だからといって自殺も出来ない。魔王を殺した自分がまた魔王になるだけだ。
魔王はついに涙を流し始めた。しかし人間たちは魔王に構うこともない。
やがて人間たちは内部でいさかいを起こし、王国は六つの国に別れた。それぞれの王は、かつての勇者とその仲間だった者たちである。
魔王との戦いも終わり、目的を失って彼らの中に湧きおこった功名心が、六人を覇道に走らせたのだ。
六つの国はほぼ同じような勢力を持ち、何度も戦いを起こした。大規模な戦争も小競り合いも含めて。
もはやかつて仲間だったことも忘れ、新たな六人の王は憎悪を日に日に募らせた。和平の道などありえない。戦乱は長く続くであろう。
しかし、未だに魔王城の玉座は残っている。
大陸のちょうど真ん中、六つの国すべての国境に面する形で。
「殺して……お願い、もう殺して……」
今日もまた、魔王のかぼそい泣き声が玉座から聞こえる。




