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異世界転生

 不慮の事故で死んだ俺は、異世界に転生させてもらえることになった。

 しかも担当の女神の説明によると、転生結果が気に入らなかったら何度でもやり直せるとのこと。

 それを聞いた俺が大喜びしたのは言うまでもない。なにしろ、前の人生はあまり良いもんじゃなかったからな。

 第二の人生、誰もがうらやむようなものにしてやるぜ!

 俺はそんな期待を込めてさっそく転生した。




 結果は……公爵家!

 公爵っていったら、貴族の中でもかなり上位に位置するんだっけ?

 うん、赤ん坊として生まれた俺から見ても、両親は美男美女だし幸せそうだ。見渡す限り、住んでるところも家具も最上質って感じ。

 転生先、ここに決めちまうか?

 でもせっかくやり直せるんだし、もっといい結果が出るまで粘るのも手だよな。滅多にない機会だし。

 そう考え、俺は再度転生することにした。

 そこでいったん記憶が途切れ……。




 ……ふたたび、赤ちゃんの姿に。

 今度は伯爵のところの息子だそうだ。

 伯爵もすごいけど、たしか公爵よりは劣るんだよな?

 ちぇっ、悪くなっちまったのか。

 まあいいや。何度だってやり直せるんだし。SSRが出るまで何回も引いたガチャを思いだすぜ。もちろん新たな人生で狙うのはSSR……いや、URだ!

 というわけで、伯爵家に別れを告げて新たに転生するぞ。




 ……次は男爵家か。

 男爵は一番下の爵位だってこと、俺は知ってるぜ。これじゃあせいぜいSRくらいだな。

 くそう。こんなんで満足できるか!

 さっさと転生だ!




 ……うん?

 見た感じ、何だか貴族たちよりも装飾が劣る室内だな……。

 どうやら王国仕えの騎士みたいだな。騎士って、貴族のような爵位ある身分とは少し違うって聞いたことがあるぜ。少なくともさっきまで俺が見てきた貴族階級より上ってことはないだろう。

 人の好さそうな両親だけど、さすがにさっきまでの貴族たちに比べたらちょっと苦労しそうだし……。

 ……って、いちいち迷う必要もないか。また転生しよう。




 ……今度は明らかに庶民的な両親だ。どうやら、冒険者たちがよく寝泊まりする宿屋を経営しているらしい。

 さすがにこの選択はないよな。さっさと転生……いや、待てよ?


 何だかどんどん転生先のランクが落ちて行ってないか?

 公爵、伯爵、男爵、騎士、宿屋……うん、気のせいじゃない。


 ま、まさか。

 ガチャのようにランダムな結果から何度もやり直せると思ってたけど、違ったのか?

 ひょっとして、転生しなおすたびに、ランクが下がっていくんじゃ?


 冷静に考えると、あの女神もランダムに転生先が選ばれるというような説明はしてなかった。

 ただ、転生結果が気に入らなかったら何度でもやり直せるとだけ……。

 もしランダムなら、今の俺みたいに綺麗にランクが下がりっぱなしになるって、そうそうあり得ないよな……。


 仮にランクが下がり続けるとして、どこまで続くんだ?

 まさか、途中から人間にすら転生できないってことはないよな?

 動物に転生するとか、もしくはゴブリンみたいなモンスターに転生しちまうとか……そ、それだけは嫌だ! 俺は人間として生まれたい!


 それなら万が一を考えて、ここらでやめとくか?

 でもでも、これまでに公爵やら伯爵やらをスルーしてきたんだぞ!?

 今さらこんなしょぼい人生を選べるかよ!!

 ちくしょう、ちくしょう……!

 次だ! 次で結論を出す!

 頼む! また貴族のどこかに生まれてくれ!

 転生!!




 ……。

 …………。




 ……転生した俺の視界に広がっているのは、ずいぶんと汚れた天井だった。

 人の気配を感じ、首を巡らす。

 そこにあったのは、酒に酔って顔を赤らませた父親らしき男の姿。

 室内に置かれている家具も、これまでに見てきた景色とは比べる気になれないくらい粗雑なものが並んでいた。


 ああ……やっぱりそうだったんだ……転生するたびに、どんどん悪い結果になっちまうんだ……。


 自分のせいで手の平から零れ落ちて行った栄光の人生を思い出し、俺は涙がポロポロとこぼれはじめ……やがて、赤ん坊特有のギャン泣きとなる。

 いつまでも泣き止まない赤ん坊にうるさそうな顔をした赤ら顔の男が、そばに近づいて来て手に持つ酒瓶を勢いよく振り下ろす。


 それが、俺の見た最後の光景だった。

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