絶滅危惧種図鑑
男は、絶滅してしまいそうな動物や植物がいることに心を痛めていた。
男のある意味立派なところは、動植物に加えてモンスターですら絶滅から守りたいと思っていたことだろう。
そこで男は絶滅危惧種図鑑を作ってみんなに見てもらおうと考えた。
その図鑑を読めば、きっとこの世の人すべてがこの問題に取り組んでくれると思ったのだ。
東奔西走してかなりの時間と労力がかかったが、ついに図鑑が完成した。
すべての国の動物、植物、モンスターの絶滅危惧種を一冊にまとめた力作である。
発行された絶滅危惧種図鑑が本屋に並んでいるところを見た男は、まさに一生ものの仕事を終えた気持ちになった。
自著が売れる様を見たいと、男は本屋に日参するようになる。本を作ったことのある人間なら理解できる行動だろう。
しかし、男の期待に反してなかなか絶滅危惧種図鑑は売れない。
手に取る者はそれなりにいた。
だが、ページをパラパラめくるとすぐに図鑑を閉じて棚に戻し、首を傾げて去って行くのだ。
じれったく思うものの、さすがに文句をつけたり買ってくれとすがるわけにもいかない。
男はそれからも本屋に通うのを続けたが、やはり図鑑が売れる瞬間を見ることはできなかった。
男の顔に疲れが目立ち始めたある日。
いつものように本屋にやってきた男は、絶滅危惧種図鑑をめくりながら会話している男女の姿を見かけた。
自分の図鑑に対する意見が聞けるかもと思い、男はさりげなく二人のそばで他の本を読むふりをする。
そうして耳に飛び込んできた二人のやりとりは……。
「やっぱり絶滅してないと駄目だな」
「そうね。絶滅してるほうがロマンがあるもの」




