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十四回も転生させられた賢者、もう限界なのでポンコツ女神を猫にして輪廻を終わらせる  作者: 在河りゅう
第二章

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第46話 遺跡探索メンバー

「えー、全員集まれー」


 タキ・アルコが手を打ちながら言った。


 武術の授業中だった。振り向くと、タキの周りに何十匹もの猫が集まっている。

 その中に見慣れた猫を見つけ、二度見した。


 ――なぜそこにいる……


 トントンとタキが足を鳴らすと、猫が一斉に動き始める。

 タキの真後ろにエルが並び、エルに続き、猫が横十匹、二列に並ぶ。


「なぁなぁ、テルさん、エルちゃんおったで」


「知ってる……」


「エルさんやばいな、あの位置、隊長やん」


「なにしてるんだろうな」


 それ以上の言葉が出てこない。


「それにしても、今日は猫がぎょうーさんおるな、なんかあるんか?」


「マル、なんか話あるって、行ってたやん。ほら、いくで」


 タキの前に生徒が集まる。

 生徒の列と猫の列が向かい合い、妙な緊張感が走るなか、タキが口を開いた。


「先日、お前たちに話があると伝えていたな」

「先週設営した野営地の更に先に遺跡があるんだが、そこで崩落が起きた。二年と合同で調査を行うことになったので、希望者を募る」


『遺跡』で空気が変わる。ざわめきが広がる。


「今日は野営地でキャンプしつつ魔物の間引きを行う。遺跡の調査は明日だ。魔物との戦闘があるから、自身で対処できると判断した者だけ前にでて、三、四人の班を組んでくれ」


 タキが話し終わると一斉に生徒が動き出す。

 半数以上が前に出た。


「テル、今回も一緒に行こか」


「ああ」


「お、テルさん素直になったなぁ、偉い偉い。その調子で島にもな」


「それは別だ」


「ケチ臭いこと言うな、もうわいら親友や。あ、せんせー! 班できたで!」


 マレオンが大きく手を振り、タキを呼ぶ。

 タキが一匹の丸い猫を連れて近づいてきた。


「前の三人だな? 問題ないと思うが一応チェックする」


 タキが猫に視線を向けると、いそいそと丸い猫が三人の周りをまわる。


 なんだ?

 何もしていないように見えるが……


「にゃー」


「問題ないな。そっちで待っててくれ」


 それだけ言って、タキは別の班のところに向かっていった。

 このやりとりが訓練場の至るところで繰り返され、班編成が決まっていく。


 ……あの猫だけ、魔力の帯び方が違う。

 タキ先生のスキル?


「あれなんやろな、テルわかるか?」


「いや、わからん」


「なぁなぁ、テルさん、エルちゃんっていつまであそこにおるん?」


 フィデアは、タキの周りに集まる猫たちの先頭を指差す。

 一匹だけ背筋を伸ばし、微動だにしない。


「俺が聞きたい」


 ——いや、考えたくない。



 ***



 タキに連れられて指定の場所へ移動すると、二年生が既にパーティに分かれていた。

 教師イグナスが困った顔をして立っている。


「どうした?」タキが問う。


「いやなぁ」


 イグナスは視線で答えた。

 視線の先。

 広場の端で、一人ぽつんと腕を組んでいる人影があった。


 アルヴァだった。


 周囲はパーティで話が弾んでいる。アルヴァに声をかける者はいない。

 空白のように、そこだけ人が避けていた。

 そのことを気にすることもなく、アルヴァは静かに正面を向いていた。


「本人が頑なにな——」イグナスが言う。


 その言葉が終わる前に、アルヴァがテルムに気づき――

 ぱっと、笑った。そのまま一直線に来る。

 手を握られる。強い。


「おい、もう――」


「テルム君、よろしくね」


 笑顔で押し切られた。

 視線を横に向けるが、マレオンもフィデアも異論はないらしい。

 ふぅと息を吐く。


「先生、私このパーティで行きます!」


 アルヴァは手を上げ、宣言した。

 マレオンが楽しそうに言う。


「テル、人気者やなー」


「うるさい」


 アルヴァに握られている手を見る。

 離す気配がない。


 ——逃がす気はなさそうだ。


 タキとイグナスが顔を見合わせ、頷き合う。

 タキが声を上げた。


「よし、まずは野営地に向かう。間引きはその後だ。隊列を組んでついてくるように」



 ***



 野営地につくと、タキから指示が出る。


「イグナスと二年で遺跡に近いところの間引きをする。一年は俺と野営地の周辺を手分けするので、こっちに集まってくれ」


 タキのところに集まると、パーティごとに担当を割り当てられていく。

 俺達は北西の範囲を任された。


「それじゃ、何かあれば猫に言ってくれ、駆けつける」


 タキが言い終わると、周りにいた猫の中から各班に一匹ずつ進み出てきた。

 エルが班に合流した。


「……何してるんだ?」


「わたしは、今は猫隊の一員です。戦闘は期待しないでくださいね」


 猫隊?


「いや、いつもしてないから大丈夫だ」


 エルはちらっとこちらを見ただけで、すぐ前に向きなおした。

 ……猫として扱えということか。


「本当に、何をしてるんだ?」


「……『にゃん従士』です。猫隊を率いるの、やってみたかったんですよね」


「それだったら、こっちじゃなくて先生についてなくていいのか?」


「細かいことは気にしないんで大丈夫です」


 エルが小声で答え、にやりとする。

 いつも通りだった。とりあえず好きにさせる。


「では、行きましょうか」


 アルヴァの声で、森に進む。

 アルヴァが一番前、マレオンが次、フィデアがその後ろに来て、その後ろに俺……さらに後ろを猫隊もといエルがついてくる。


 周囲を警戒しながら、仲間に意識を向ける。


 アルヴァは足場の悪さに少し慎重気味。だが、重心は乱れない。気配察知も十分だ。

 よく稽古できている。


 マレオンとフィデアは……絶妙な距離感だった。

 森での動きがいいのは実習で知っていたが、狩りでも集団の間合いの取り方がうまい。

 これは、相当経験を積んでる。


「来たわよ」


 アルヴァが小さな声で告げる。


 がさがさと五メートルほど先の木が揺れ出し、胴ほどの大きさの影が飛び出すのが見えた。

 猿の魔物だ。


 手を開き、魔力を放つ。

 ——蔦が蠢き、動きを阻害する。猿がバランスを崩す。


 アルヴァが一歩踏み込む。

 炎が走る。


 その横を、マレオンの槍が貫いた。

 エルが毛づくろいをしている。


「向こうから何か来るで」


 人の丈を大きく超える、巨大猪。牙が土を削りながら突進してくる。

 フィデアの弓が空気を割き、猪の勢いを削ぐ。


 アルヴァが駆け込み、一閃。

 前足を焼き、猪が勢いのままつんのめる。


 マレオンが大きく踏み出す。

 合わせて、土魔術で地面をせり上げ台を作る。


 台を踏み込んだマレオンが宙に飛び出し、頭から一突きした。

 エルが背中を伸ばす。


「テル、わいらめっちゃ息合ってんな!」


「うるさい」


「フィデアさん、この視界であの距離よく当てましたね」


「うちら、慣れてんねん。アルヴァさんのその火もすごいで。剣に纏わるんやな」


「クラヴィスは火剣の名家なんです。鍛えられましたから」


「それでか、板についてる」


 アルヴァが胸を張った。


「この調子やったら、明日も楽勝やな!」


「みなさん、実地訓練も兼ねてます。気を抜かないように」


 エルが後ろから声を掛けた。

 振り返ると、エルが欠伸をしていた。


 溜息が出る。


「今日のエルさんは、先生やな」


「なぁ、偉そうで可愛いわ」


「ふふ、それじゃ次行きますね」


 アルヴァが索敵をし、進んでいく。日が傾くまでそれを続け、野営地に戻った。


 ――魔物は少なかった。

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