特産品を作ろう
ベッドで目覚めた次の日の朝、体も治ったので治療院を出て朝食を食べるため宿に向かう。
「おう!お前さん。もう体はいいのか?」
「そう言う親父も頭や腕に包帯巻いてるじゃないか。大丈夫なのか?」
「こんなもんかすり傷だ!」
親父は豪快に笑う。元気そうで何よりだ。朝飯を注文しつつ尋ねる。
「ところで何で親父たちはドラゴンと戦っていたんだ?冒険者じゃないだろ?」
「ああ、俺とリタは昔冒険者をやっていてな。それなりの冒険者だったんだぜ?」
そういえばここを紹介してもらった時受付嬢が言っていたか。ここの女将ーーこの親父の奥さんの名前はリタと言い、なんでも元Bランクの冒険者で鮮血のリタと呼ばれていたらしい。怖い2つ名だな。親父の方も元Bランクで、斧を手に突っ込んで敵をなぎ倒していく様から鉄血のガラドと言われるようになったとか。
「でも流石に戦闘は数年ぶりだからな。体はすっかり鈍ってたぜ。ありがとな、お前が来なかったらやられていただろう」
「そう思うなら飯をタダにしてくれてもいいんだぞ?」
「まあそうだな、この飯ぐらいはサービスにしてやるよ」
「マジ?じゃあ宿代も当分タダに」
「調子にのるな」
朝食を食べ終え宿を出て町長の家に向かう。今回は的確な判断で住民を避難させたため冒険者には怪我人が出てしまったが死者は出なかった。しかし少なからず建物は壊されてしまったため、トンカントンカンと町を修復する音がそこら中で聞こえる。
「やあ、よく来てくれたね。私はマルクスという。盗賊から娘を、そしてドラゴンから町を守ってくれてありがとう」
家について呼び鈴を鳴らすと出てきた赤服を着た男性が言う。オルクスそっくりなこの人が町長か、横にはアリシアもいる。
「とりあえず中に入って話をしよう」
2人について行き、客間にはいる。大きな家らしく客間も広く、長テーブルには20人ほど座れるだろう。だが質素な生活をしているのか、特に高級そうなものは見当たらない。奥にはゲイルが控えており、目が合うと軽くお辞儀をした。椅子に座り、話を聞く。
「実は君に頼みたい事があるんだ。ドラゴンの襲撃によって出た被害のために復興費がいる。いやなに、その費用がないわけじゃない。ただ今後のことを考えると心もとなくてな……」
「それで金が欲しいと?」
「まあそうだな、不測の事態に備えて蓄えておきたいと思っている」
「だが、それを俺に言ってどうする?俺は別に金を持っていないぞ?」
「そのことだが……おっ、ようやく兄さんが来たようだな」
呼び鈴が鳴ったと思ったら、マルクスに兄さんと呼ばれた人物が入ってくる。
「よう、アリシアにクロ君。2日ぶりだな」
その青服を着た男性はアーデリアの町長、オルクスだ。やはり似ている。双子の兄弟のようだな。一緒にいると見分けがつかないから赤色の服と青色の服で特徴付けたのだが、町にも反映されてしまったのだとか。確かにこの町には赤が多く、アーデリアには青が多かった。
「実はな、話は聞いているかもしれないがこの町も兄さんの町も特徴がなくて困ってたんだ」
「そう、住んでる私たちには愛着のあるいい町なんだが、訪れる者にとってはただの街なんだ」
2人は困ったようにそう言う。確かに色が赤かったり青かったりするが、ただそれだけな感じはする。少なくとも他に目を引くようなものはなかった。
「そこで何か町を象徴するものを作ろう、という話ですわ。わたくしがこの前おじ様に届けた書類もそれに関してです。前々から話は出ていたのですが、今回のドラゴンの襲撃により本腰を入れ始めたという訳なのです」
例えば、とある鉱山都市ではドラゴンの鱗に匹敵する硬度を持つ【ドラグル鉱石】、とある海上都市では虹色に輝く【レインボーパール】という真珠があるらしい。特にこういった特産品はないものの、美味しい料理を出す町、風景が素晴らしい町など有名な町も多くあるそうだ。
「なるほど、町の貯蓄を増やして安定させるのと同時に何か町を特徴づける特産品が欲しいわけか。話は分かったが、俺に何をさせるつもりだ?」
「この町の北東に洞窟がありまして、そこを探索してもらいたいのですわ。しかしそこにいる魔物は中々手ごわいので、クロさんに力を貸して欲しいのです」
「そこに何かあるのか?」
「詳しくはわかりません。ですが魔物の強さは魔力量に比例します。手ごわい魔物がいるということは、その場所は魔力に満ちているということ。そういう所にはいいものがある事が多いですわ」
【ドラグル鉱石】のある場所も魔力濃度が高いらしい。魔物は強く危険だが、得るものは大きいということか。
「アデレートとアーデリアの冒険者はCランクが最高ですの。合わせて5名です。1人は事情により行けませんので、代わりにクロさんに行ってもらいたいのです」
「ドラゴン相手に戦えた君なら問題ないだろう。報酬は我が町からは【妖精の胸当て】を。アーデリアからは20万ゴルドだ。持ってかえってきたものによっては追加報酬も出そう」
【妖精の胸当て】は妖精の加護を施されたと言われる胸当てらしく、魔法耐性があるとのこと。何があるかはわからないし装備は整えておいたほうがいいだろう。
「分かった。それでいつ行けばいいんだ?」
「3日後だ。3日後に馬車に乗ってこの町のCランク冒険者と共に向かってくれ」
話は終わり、宿に向かう。この前の[ブラストドラゴン]との戦いで、初めて苦戦という経験をした。理解しているつもりだったが、この世界では些細なミスで死んでしまうことも多いうえ、今の俺では勝てない魔物も数多くいる。
(そういえば、ここに来てから強さは変わったのか?確認してみるか)
魔力: 0
攻撃: 56+25
防御: 5
魔攻: 0
魔防: 0
素早: 54
固有技: 《リミッターブレイク》




