蒼炎の騎士
目が覚めると知らない天井だった。ベットに横たわっている状況から治療院にいると判断する。
「いっつ…」
起き上がろうとするが体が痛み、また横になってしまう。
「キュッキュッ」
ラトが俺の目が覚めたことに気付き、顔元に近づいて来る。頭を撫でつつ、気を失う前のことを思い出す。
(あのドラゴン、硬かったな。それに、あの赤髪…)
俺が必死になって倒した[ブラストドラゴン]を容易く仕留めたあいつ。一体何者なんだ?
「……っ!クロさん!気がついたんですね!」
ホッとした顔でアリシアが部屋に入ってきた。
「ああ、今は何時だ?」
「12時です。20時間近く眠ってましたよ」
アリシアから話を聞く。[ブラストドラゴン]は蒼炎の騎士と呼ばれる冒険者が倒した。なんでもその騎士は名前の由来になった【魔剣ブラウフランメル】と呼ばれる剣を所持しているらしい。
「どういう剣なんだそれ?」
「わたくしも詳しくは……蒼い炎を纏った剣という話は聞いたことがあります」
【魔剣ブラウフランメル】はAランクの武器だという。魔剣自体はBランクからあるらしいが、Aともなると特殊なものが増えるとか。
「そういえば親父や女将、それと魔道士のやつは?」
「3人とも軽傷だったので大丈夫ですよ。あ、そういえば…」
アリシアは机の上に置いてあった袋から【ブラストドラゴンの鱗】を取り出す。
「これがクロさんの側に落ちていたそうですよ。蒼炎の騎士と呼ばれる方は持って帰らなかったのでしょうか?」
そう言ってアリシアは首をかしげる。確かに何故持って帰らなかったのか。劣等種とはいえドラゴンの鱗だ。利用価値はあるだろうし、売ってしまってもそれなりの金になるだろう。
「「一体なぜ……?」」
ーーーー約20時間前
町に着き、[ブラストドラゴン]の場所を聞き向かう。徐々に荒れていく町を見て、この先にいるのだと確信する。
(ん?あれは……)
[ブラストドラゴン]に襲われている黒髪の青年を見つける。ドラゴンは今にも風の塊を吐こうと口を開いているため、とっさに魔法を使い助け、動きを封じてから魔剣で葬った。落とした【ブラストドラゴンの鱗】を拾うが、何故かもう一枚あることに気がつく。
「どういうことだ……?」
助けた青年を見るが、気絶してしまっているようだ。側にいる黄色いウサギがオロオロしている。周りの冒険者らしき人たちも完全に気を失っており、壁際の方で倒れている。
「まさかこの青年が倒したのか?それに側にいるこのウサギ、[幸福ウサギ]じゃないか?懐いているように見えるが、人に懐くなど聞いたことが…」
それに、この青年には魔力を感じられない。
ドラゴンという魔物は物理防御力がかなり高く、その上魔法も効果が薄い。[ブラストドラゴン]が劣等種と呼ばれる理由はいくつかある。その中でも特に大きいのが、防御面が他のドラゴンと比べてあまり高くないということだ。
「だからこそ私は魔剣を使って倒した訳なのだが」
[ブラストドラゴン]は物理防御は他のドラゴンと比べて多少は劣りはするものの、十分に高い。しかし魔法防御は高いとはいえない。【魔剣ブラウフランメル】は魔力を込めることにより蒼い炎を生み出す。その熱量でドラゴンを焼き切ったのだ。
「刀だけで倒したというのか?他に誰かが倒した形跡などないし…」
魔力を使わないで倒すなど私にも出来そうにない。そんな真似が出来るやつに多少心当たりはあるが、並みの冒険者では到底無理だ。この青年は一体何者なんだろう?
ーーーーーー
「まあ良く分からないけど貰っておくか」
「そうですね、クロさんが時間を稼がなければ他のみなさんが殺されていたかもしれません。頑張った報酬ということにしましょう!」
アリシアはそう言うが俺は間違いなく1体倒している。おそらく2体目の[ブラストドラゴン]がいたことは知られていないのだろう。2体いて、1体は俺が倒したと言っても信じるやつはいないだろうし、面倒なことになる気がするので黙っておくことにした。救援が来るまでドラゴンと戦い冒険者を守っていた、その方がいいだろう。
その日は体を休ませることに専念したが、町長が俺と会って話をしてみたい。そう言っていたとアリシアから聞いたので、明日は家に行くことになった。




