いざ洞窟へ
3日後。宿を出て馬車に向かう。
―――ステータスが少し伸びてるな。
町長の家を出た後ステータスを確認すると、少し数値が上がっていた。
「なにで上がったんだ?」
この世界に来てから何度か戦闘があった。魔物だけではなく人とも戦った。それらが上がった原因なのだろうか?しかしほとんど相手にはならず、経験を積めるような相手はいなかった。ーー1体の魔物を除いて。
(ドラゴンか?あいつとの戦闘はこちらが負けてもおかしくなかった。可能性的に1番ありそうだな)
ただ魔物と戦うだけではステータスはあまり上がらず、自分と互角、あるいはそれ以上との相手と戦った方が経験値は大きいだろう。
「自分のステータスが上がる条件を知っておいた方がいいな」
「ステータス?強さ?なんだそれは」
親父は首をかしげる。
「そんなものなんとなくでしか分からないぞ。相手の強さだったら雰囲気や佇まいから察するもんだ。それなりに経験を積めばなんとなく分かってくる」
強者特有の雰囲気やヤバイ気配、それらを感じ取れるようになったら一人前であるという。自分より強い相手との戦闘は極力避けないと生き残れない。相対する相手が人であろうが魔物であろうが、実力差を感じ取れるようにならなければ簡単に死んでしまうだろう。
「強さを求めて無理な戦いをするのではなく、臆病に生き残った者の方が強い。死んでしまっては意味がないからな」
どこか悲しそうに親父は言う。確かに死んでしまってはそこで終わりだ。強くなるのを目的にするのではなく、必死に生き残った結果、周りから強いと言われる存在になった、が正しいのかもしれない。
「ただこれはBランク以下の話だ。Aランク以上になると次元が違う。無理な戦いをしなくては到底なれない。それ程までにAとBには大きな壁があるんだ」
Aランクともなると町を救う事もザラにある。それこそ蒼炎の騎士のように。そこで救われた者が冒険者に憧れ、そして自分もそうなりたいと目指す事が多い。そのため新米冒険者はAランクになろうと必死になる訳だが、現実を知ってDかCで止まるか、無理をして死んでしまうと親父は言う。
「お前さんは冒険者じゃないから心配ないかもしれないが、無謀な戦いはするんじゃないぞ」
「分かってるさ」
自分の正確な強さを知ることは出来ない。それはそうだ。そもそも強さなんて曖昧なものなのだから。身体的な強さに加えて剣術や体術、魔法といった技能、経験からくる状況判断など、そもそも数値化なんて出来るはずがない。
「ステータスが上がるかは分からんが、実戦経験は積んでおいた方がいいな。俺には技や魔法が使えないからとにかく戦闘慣れしておかなければならん」
その後、町を出て北の森に向かった。色々な魔物と戦った。強そうなやつを見つけては倒し、そのランクを調べた。依頼までの日に倒した魔物は約300。その中で1番強かった魔物のランクはCランク上位。
ーーー「まさかステータスに全く変化がないとはな」
馬車に向かう途中この3日間にあったことを思い出し思わずそう呟く。苦戦する戦いはなかったため仕方ないと思う反面、あれだけ倒したのだから少しぐらいは上がっても、という思いが入り混じる。
「おーい!こっちー!」
声のする方に目をやると、馬車の側で手を振っている女性がいる。金髪でとんがり帽子を被った、いかにも魔法使いな感じの服装をしている。
「あなたが[ブラストドラゴン]と戦ったという人ね?ワタシはエルザ。今回一緒に依頼をするCランク冒険者よ!よろしくね!」
明るく笑顔で挨拶をされる。その隣にいた青髪の爽やかな男も俺に近寄り、
「君は武闘大会で優勝した人だね?僕もあの大会を見ていたんだ。正直冒険者以外でしかも名も知られてないやつが[ブラストドラゴン]を相手にしたなんて信じられないけど、君だと言うなら話は別だ。僕はアレックスだ、よろしく!」
「俺はクロ、2人ともよろしくな」
2人とも好印象でよかった。冒険者じゃないから無下に扱われたりするものかと思っていたが、大会で成果を出したお陰かそんな様子は全くない。挨拶もそこそこに、馬車に乗り洞窟へ向かう。
「あそこが洞窟だな。もうアーデリアの冒険者は来てるみたいだな」
アレックスは指をさす。その方向には洞窟らしい穴と馬車が見える。俺たちの馬車もスピードが緩まり、近くに着くと降りて挨拶に向かう。順番に挨拶をしていき、最後に俺が挨拶する。
「え?お前冒険者じゃないのかよ。なんでここにいるんだ?」
俺が冒険者でないことを知り、巨大な大斧持ちのゴツいおっさんが鼻で笑いながら言う。
「ホントだぜ。アデレートは人で不足か?こんな弱そうなやつを連れてくるなんて」
小柄な短剣持ちの男が便乗する。ケケケ、と笑うその感じからして印象がよくない。続けて仰々しく、
「このジャイコフさんはな、Cランクでもかなりの実力者なんだ。Bランクも間近と言われているお前らなんかよりも遥かに凄い人なんだぞ!」
「よせスネール、本当の事だがわざわざ言うな!可哀想だろ!」
2人はゲラゲラ笑っている。なんだろう、この名前と言い雰囲気といい青いロボが出る何かを思い出す。ふわふわとそんな事を思っていると、
「なによアンタ達!クロは武闘大会で優勝したのよ!とっても強いんだから!」
「なんだ?そんなやつが優勝出来るなんてアデレートは弱いやつしかいないんだな!僕たちの足手まといになったら置いていくからな!」
そう言ってまた笑う。エルザはプンプン怒り、アレックスはため息を吐いている。
(うわー、先行き不安すぎるなー)
そんな事を思いつつ、依頼なので仕方ないと割り切り5人で洞窟を探索する。




