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二人目の人財

第6話です。


セリアとの仕事を終え、少しずつ「人財屋」の形を作り始めた直人。


そんな中、ギルドで出会った一人の青年。


周囲からは「役立たず」と見られている彼にも、本人さえ気づいていない才能がありました。


直人は、彼の中に何を見つけるのか。


新たな出会いを、どうぞお楽しみください。

人財屋を始めてから、三日が経った。


「……意外と暇ですね」


 ギルドの端にあるテーブルで、セリアが呟いた。


「まあ、始めたばかりですから」


 俺は苦笑する。


 昨日の魔道具店から追加の依頼は来た。


 ありがたいことに、セリアの仕事ぶりを気に入ってくれたらしい。


 ただ、それだけだ。


 会社を経営していた頃なら、新しい取引先を探して営業をかけるところだ。


 待っているだけでは、仕事は増えない。


「セリア」


「はい?」


「人財屋って、どうやったら仕事が増えると思います?」


「……分かりません」


「ですよね」


 俺も分からない。


 ここは日本じゃない。


 電話もなければ、メールもない。


 営業資料を作って企業に送ることもできない。


「まずは、名前を知ってもらうしかないか」


 そう考えていたときだった。


 ギルドの入口から、若い男が入ってきた。


「また失敗したのか?」


 近くにいた冒険者が笑う。


「……はい」


 男は小さく答えた。


 年齢は二十歳くらい。


 茶色い髪に、少し大きめの鞄を背負っている。


 受付へ向かい、依頼書を差し出した。


「薬草採取の依頼、お願いします」


「分かりました」


 受付嬢が依頼書を確認する。


 すると、後ろから別の冒険者が声を上げた。


「おい、また一人で行くのか?」


「……はい」


「やめとけって。お前、戦えないだろ」


「……」


「荷物持ちくらいしかできないんだから」


 男は何も言わない。


 ただ、俯いていた。


 俺は少し気になった。


「セリア」


「はい?」


「あの人、知ってます?」


「知りません」


「そうですか」


 俺は立ち上がった。


 そして男の近くまで歩いていく。


「すみません」


「……はい?」


「ちょっと聞いてもいいですか?」


「何でしょう?」


「薬草採取って、どこまで行くんです?」


 男は不思議そうな顔をした。


「森の入口です」


「一人で?」


「はい」


「危なくないですか?」


「……慣れてますから」


 その言葉に、俺は少し違和感を覚えた。


 慣れている。


 つまり、何度も行っているということだ。


「失礼ですが、名前は?」


「レオンです」


「俺は直人。こっちはセリアです」


「よろしくお願いします」


 レオンが頭を下げる。


 その瞬間。


 俺の視界に、文字が浮かんだ。


 【対象:レオン】


 やはり。


 《人財鑑定》だ。


 俺は表示された文字を読む。


 そして、思わず目を疑った。


 【危険察知:A】


 【空間把握:A】


 【採取技術:S】


 【道具管理:A】


 そして――。


 【潜在能力:S】


「……」


 すごい。


 戦闘能力についての表示は、ほとんどない。


 でも、森で活動するために必要な能力が異常に高い。


「直人さん?」


 セリアの声で我に返る。


「……レオンさん」


「はい」


「どうして薬草採取を?」


「生活のためです」


「それだけ?」


「他にできることがないので」


 その言葉に、俺は少し引っかかった。


 セリアと同じだ。


 本人が自分の価値を低く見ている。


「森で迷ったことは?」


「ありません」


「魔物に襲われたことは?」


「何度かあります」


「逃げられました?」


「はい」


 即答だった。


「どうして?」


「危ない場所が分かるので」


 なるほど。


 本人は、それを特別な能力だと思っていない。


「レオンさん」


「はい」


「薬草の採取以外に、森で何か見つけたことはありますか?」


「……あります」


「例えば?」


「珍しい薬草とか、魔石とか」


「それ、どうやって見つけたんです?」


「なんとなく……」


 俺は思わず笑ってしまった。


「なんとなく、ですか」


「はい」


「それ、たぶん才能ですよ」


「……才能?」


 レオンが目を丸くする。


「俺には、あなたが周りの人よりずっと森を見るのが得意に見えます」


「でも、俺は戦えません」


「戦う必要あります?」


「え?」


「人財屋は、戦士だけを探しているわけじゃありません」


 セリアを見る。


「セリアもそうです」


 セリアが頷く。


「私は……魔法を作るほうが得意でした」


「そう」


 そしてレオンを見る。


「あなたは、森の中で人が見落とすものを見つけられる」


「……」


「だったら、それを仕事にすればいい」


 レオンはしばらく黙っていた。


「俺に……そんな仕事ができるでしょうか」


 また、その言葉だ。


 俺は少しだけ笑う。


「できますよ」


「どうして?」


「俺がそう思ったからです」


「……」


「それに」


 俺は手を差し出した。


「一緒に試してみませんか?」


 レオンは差し出された手を見つめた。


 そして――。


 ゆっくりと、その手を握った。


「……お願いします」


 俺は笑った。


「こちらこそ」


 セリアも嬉しそうに微笑んでいる。


 こうして、人財屋に二人目の仲間が加わった。


 ――ただし。


 このときの俺はまだ知らなかった。


 レオンの能力が、俺たちの事業そのものを大きく変えることになるなんて。

第6話を読んでいただき、ありがとうございます。


今回、直人は二人目の人財と出会いました。


セリアとはまた違った才能を持つレオン。


「自分には何もできない」と思っている人の中にも、誰にも真似できない力が眠っている。


直人の「人を活かす」という考え方が、少しずつ形になってきました。


次回からは、三人で初めての仕事に挑みます。


引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。


Amane

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