王城からの依頼
【第二章 第40話】
王城から届いた正式な依頼。
そこにあったのは、人手不足という単純な問題ではありませんでした。
王城という巨大な組織を前に、直人たちはどんな答えを出すのか。
「王城より、正式な依頼を申し上げます」
その言葉に、店内が静かになった。
俺たちは互いに顔を見合わせる。
王城。
この国の中心ともいえる場所から、人財屋に依頼が来た。
「依頼内容を聞かせてもらえますか?」
俺が尋ねると、使者は一枚の書類を差し出した。
「王城内の人員配置についてです」
「人員配置?」
「はい」
使者は続ける。
「現在、王城では部署ごとの人員配置に偏りが生じています。一部では人手が不足し、別の部署では人員が余っている」
「なるほど……」
「しかし、単純な異動では解決できないと判断されました」
俺は書類を見る。
そこには、いくつもの部署名が並んでいた。
騎士団。
宮廷事務局。
財務部門。
医療部門。
教育部門。
それぞれに必要な能力が違う。
「つまり、王城全体の人財配置を見直してほしい、と?」
「その通りです」
俺は黙って考えた。
規模が違う。
これまで扱ってきた組織とは比較にならない。
しかも王城。
一つの判断が、多くの人間に影響する。
簡単な仕事ではない。
「直人」
凛の声が聞こえた。
振り返ると、彼女は真剣な表情で俺を見ていた。
「私も関係する話だよね」
「ああ」
勇者として王城に所属する凛にとっても、無関係ではない。
だが――。
俺は使者に尋ねた。
「依頼の対象は、王城で働く全員ですか?」
「まずは主要部署からです」
「それなら、一つ条件があります」
使者が少し驚いた顔をする。
「条件、ですか?」
「ああ」
俺は書類を机に置いた。
「俺たちは、肩書きだけを見て人を配置することはしません」
「……承知しています」
「本人たちの話も聞かせてください」
使者は少し考えた。
そして、頷く。
「分かりました」
「それともう一つ」
俺は続けた。
「鑑定結果だけで配置を決めることもしません」
隣にいたエドが静かに頷いた。
「本人が何を望んでいるのか。それも重要です」
「その通りです」
俺は使者を見る。
「それが認められるなら、引き受けます」
「承知しました」
使者は深く頭を下げた。
「では、正式な手続きを進めさせていただきます」
使者が帰ったあと。
店内には、しばらく沈黙が残った。
「……王城か」
レオンが呟く。
「大きな仕事になりそうね」
セリアも書類を見ながら言う。
エドはすでに資料を整理し始めていた。
「部署数を考えると、かなりの人数になりそうです」
「そうだな」
俺は書類を見つめた。
これまでの依頼とは違う。
商会では、利益や事業の成長が重要だった。
個人の依頼では、その人自身の人生が中心だった。
でも王城は――。
国を支える組織だ。
そこにいる人たちの配置を変えるということは、結果的に多くの人間に影響する。
「直人」
凛が声をかけてきた。
「何?」
「私も、できることがあれば手伝いたい」
俺は少し考えた。
「凛には、王城側の事情を教えてもらいたい」
「それならできる」
「ただし、勇者だから特別扱いはしない」
「分かってる」
凛は笑った。
「私も、この仕事の一員として関わりたい」
その言葉に、俺は頷いた。
その夜。
一人になった店内で、俺は鑑定画面を開いた。
最近、俺の能力には変化が起きている。
「事業創造適性」
そして、
「組織構築適性」
どちらも、これまで存在しなかった項目だ。
人財を見つけるだけだった能力が、少しずつ変わっている。
なぜなのか。
俺にはまだ分からない。
ただ、王城という巨大な組織を前にして――。
その画面が、今までとは違う反応を見せた。
【組織構築適性】
その文字の下に、新しい表示が浮かぶ。
【対象規模:大】
そして、その下にもう一つ。
【適性判定――解析中】
「……解析中?」
俺は画面を見つめた。
しばらくすると、表示が消える。
「何なんだ……」
答えは出ない。
だが、一つだけ分かった。
王城からの依頼は、単なる仕事ではない。
俺の人財鑑定そのものが、次の段階へ進むきっかけになる可能性がある。
そして――。
その先に何があるのか。
俺はまだ知らなかった。
第二章の大きな山場が始まりました。
これまで人財屋が関わってきた組織より、はるかに大きな場所です。
直人の人財鑑定も、また新しい反応を見せ始めています。
第二章の終わりに向けて、少しずつ物語をまとめていきます。
Amane




