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新しい目標

【第二章 第39話】

人財屋は、次の段階へ進もうとしていました。


人を見つける。


人を活かす。


そして、人を育てる。


そんな新しい目標を掲げた直人たちの前に、一台の王家の馬車が現れます。

翌朝。


いつもより少し早く目が覚めた。


窓を開けると、王都の街並みが朝の光に照らされている。


人の声。


荷車の音。


店を開ける音。


この世界に来たばかりの頃は、すべてが知らないものだった。


今では、その音を聞くと不思議と落ち着く。


「……慣れたんだな」


思わず呟いた。


異世界に来てから、まだそれほど長い時間が経ったわけではない。


それでも俺には、この街での生活が少しずつ日常になっていた。


そして――。


人財屋という場所も。


「直人、おはよう」


店に下りると、セリアがすでに準備を始めていた。


「早いな」


「昨日の依頼、整理しておきたかったから」


机の上には、これまでの依頼記録が並んでいる。


商会からの相談。


個人の仕事探し。


配置転換。


人材育成。


組織づくり。


「随分増えたな」


俺が呟くと、セリアが笑った。


「最初は、こんなに増えるなんて思わなかったわね」


「ああ」


俺は一枚ずつ記録を眺めた。


そこには、関わってきた人たちの名前が並んでいる。


仕事が見つかった人。


新しい役割を得た人。


自信を取り戻した人。


そして、これから新しい一歩を踏み出そうとしている人。


「直人」


セリアが言った。


「昨日の女性だけど」


「どうした?」


「今朝、手紙が届いていたわ」


「手紙?」


「昨日紹介した仕事について、もう一度話を聞きたいって」


俺は少し笑った。


「それならよかった」


「それだけじゃないの」


セリアは一枚の紙を差し出した。


「昨日の依頼人からも連絡が来ている」


先日の組織改善の仕事だった。


配置を変えたことで、少しずつ現場が変わり始めているらしい。


「こうやって結果が出ると、嬉しいわね」


「ああ」


そのとき、店の扉が開いた。


「おはようございます!」


エドだった。


その後ろからレオンも入ってくる。


「今日は朝から忙しそうですね」


「そうみたいだな」


俺たちは自然と顔を見合わせた。


以前なら、俺が一人で考えていた。


今は違う。


四人で考える。


それぞれの視点がある。


それぞれの得意分野がある。


そして、それを組み合わせる。


俺はふと、昨日のことを思い出した。


人財屋を、もっと大きくする。


誰もが自分の可能性を見つけられる場所にする。


そのためには――。


今のままでは足りない。


「みんな」


俺は三人を見る。


「少し話したいことがある」


「何?」


セリアが首を傾げる。


「人財屋を、もう一段階大きくしたい」


三人が黙った。


「仕事を増やすってこと?」


レオンが尋ねる。


「それもある。でも、それだけじゃない」


俺は続けた。


「今までは、依頼を受けて、その人に合う仕事を探してきた」


「はい」


エドが頷く。


「これからは、もっと長く人と関われる仕組みを作りたい」


「長く?」


「ああ」


仕事を紹介して終わり。


配置を変えて終わり。


それでは、その人が本当に成長したのか分からない。


「人を見つけるだけじゃなくて、育てる」


俺は言った。


「そして、その人が次の人を育てられるようにする」


セリアの目が少し大きくなった。


「……教育まで含めるの?」


「ああ」


エドが静かに考える。


「それなら、今までの仕事ともつながりますね」


「そうだ」


人財を見つける。


人財を配置する。


人財を育てる。


そして、その人財が組織を支える。


それが循環すれば、人財屋はもっと大きな意味を持つ。


「簡単じゃないですよ」


エドが言った。


「分かってる」


「でも……」


エドは少し笑った。


「やってみたいです」


レオンも頷いた。


「俺も賛成です」


セリアは腕を組み、少し考えたあと笑った。


「だったら、やるしかないわね」


俺も笑った。


「ありがとう」


その瞬間。


店の扉が開いた。


「話、終わった?」


凛だった。


「凛?」


「みんなが集まっていたから」


凛は店内を見回した。


「何をするの?」


俺は少しだけ考えた。


そして答える。


「人財屋を、もっと大きくする」


「……そっか」


凛は嬉しそうに笑った。


「じゃあ、私にもできることがあるかもしれないね」


「ああ」


俺は頷いた。


そのときだった。


店の外から、馬車の音が聞こえてきた。


窓の外を見る。


王城の紋章。


馬車は人財屋の前で止まった。


「王城?」


レオンが呟く。


扉が開く。


降りてきたのは、王城の使者だった。


「こちらに、桜井直人殿はいらっしゃいますか?」


俺は立ち上がる。


「俺です」


使者は深く頭を下げた。


「王城より、正式な依頼を申し上げます」


その言葉を聞いた瞬間。


店内の空気が変わった。


これまでとは違う。


人財屋の仕事が、王都の一商店から――。


もっと大きな場所へ広がろうとしていた。

【後書き】

第二章も、いよいよ終盤です。


人財屋が少しずつ成長してきた中で、ついに王城から依頼が届きました。


ここからは、これまでとは比較にならない規模の仕事になります。


人財屋がどこまで通用するのか。

ぜひ続きをお楽しみください。


Amane

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