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見つけた居場所

【第二章 第34話】

人財屋に、少しずつ新しい役割が生まれていきます。


そんな中、届いた一通の封書。


そこには、見たことのない紋章が刻まれていました。


次なる依頼は、これまでとは違うものになりそうです。

人財屋に戻ると、セリアが一枚の書類を手にしていた。


「おかえりなさい、直人。ちょうどよかったわ」


「何かあった?」


「中央商会から追加の連絡。昨日の件、正式に試験運用をお願いしたいそうよ」


「もう決まったのか」


「ええ。かなり評価されたみたい」


セリアが書類を差し出す。


そこには、先日の新規事業についての概要と、俺たちへの依頼内容がまとめられていた。


「人を集めるだけじゃなくて、役割分担まで任せてもらえるのか」


「そういうことみたいね」


横からエドが書類を覗き込む。


「これ、結構大きな仕事ですよ」


「エド、どう思う?」


「正直に言えば、少し怖いです」


意外な答えだった。


いつも冷静に数字を見ているエドが、そんなことを言うとは思わなかった。


「でも……やってみたいです」


エドは書類を見ながら続けた。


「以前の僕なら、失敗しない仕事を探していたと思います。でも、最近は少し考え方が変わりました」


「どう変わった?」


「自分が何をできるかだけじゃなくて、自分がどこなら役に立てるのかを考えるようになりました」


その言葉を聞いて、俺は少し嬉しくなった。


エド自身も、変わり始めている。


最初に会った頃は、自分の能力に自信がなかった。


今でも慎重ではある。


でも、自分の可能性から逃げなくなっている。


「それなら、今回の仕事も任せてみるか」


「え?」


「中央商会との調整、エドに頼みたい」


「僕が……ですか?」


「ああ」


「でも、僕よりレオンさんのほうが外との交渉は――」


「だから全部を一人でやる必要はない」


俺はエドの肩を軽く叩いた。


「レオンにも手伝ってもらえばいい。セリアにも相談すればいい。俺にも聞けばいい」


エドは少し驚いた顔をした。


そして、ゆっくりとうなずいた。


「……分かりました」


「頼む」


「はい!」


その返事には、以前とは違う力があった。


午後になると、凛が再び店を訪れた。


「また来たのか」


「迷惑?」


「いや」


俺は笑った。


「もう慣れた」


「それならよかった」


凛は店内を見回す。


セリアは来客対応。


レオンは商会への連絡。


エドは書類を整理している。


それぞれが自分の仕事をしていた。


「……すごいね」


「何が?」


「最初に見たときより、ずっと店らしくなってる」


「俺もそう思う」


開業したばかりの頃は、何もかも俺が判断しなければならなかった。


でも今は違う。


誰かが俺の指示を待っているのではなく、それぞれが考えて動いている。


人財屋そのものが、少しずつ組織になっていた。


「直人」


「ん?」


「ここって……私がいてもいい場所なのかな」


突然の言葉だった。


俺は凛を見る。


「どういう意味?」


「私は勇者だから。普通の仕事をしているみんなとは違うと思ってた」


凛は少しだけ視線を落とした。


「でも、昨日みたいに誰かの話を聞いたりするのは好きかもしれない。だから……」


少し間を置いて、凛は顔を上げた。


「私にも、この場所でできることがあるのかなって」


俺はすぐに答えた。


「あると思う」


「本当に?」


「ああ」


そして、少し考えてから続ける。


「ただ、凛が勇者だから必要なんじゃない」


「……うん」


「凛だからできることがあるんだと思う」


凛は黙った。


やがて、小さく笑った。


「そっか」


その表情は、昨日よりも自然だった。


夕方。


仕事を終えた俺たちは、店の前に集まっていた。


セリアが言う。


「最近、仕事の幅がかなり広がったわね」


「そうだな」


レオンも頷く。


「採用だけじゃなく、組織づくりまで相談されるようになった」


エドが書類を抱えながら言った。


「人財屋という名前だけど、実際には人を集めるだけの仕事じゃなくなってきていますね」


俺は店の看板を見上げた。


人財屋。


最初は、ただこの世界で生きていくために始めた仕事だった。


それが今では、誰かの人生に関わる仕事になっている。


その責任は大きい。


けれど――。


「悪くないな」


「何が?」


凛が尋ねる。


「こうやって、みんなで仕事をするのが」


俺がそう言うと、セリアが笑った。


「今さら?」


レオンも笑う。


エドも少しだけ笑った。


そして凛も。


その光景を見ながら、俺はふと思った。


日本にいた頃の俺は、こんな未来を想像したことがなかった。


異世界に来て。


人財鑑定という力を得て。


人財屋を始めて。


そして今、こうして仲間たちと一緒にいる。


俺はまだ、この世界に来た理由を知らない。


この力が何なのかも分からない。


けれど――。


少なくとも今は、この場所にいる理由なら分かる気がした。


ここには、俺を必要としてくれる人がいる。


そして俺もまた、この場所を必要としている

【後書き】

人財屋の規模が少しずつ大きくなってきました。


それと同時に、これまでとは違った相談も舞い込むようになります。


ここから物語の世界も、少しずつ広げていきます。


まだ全てを明かす段階ではありませんが、今後に繋がる要素も少しずつ入れていく予定です。

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