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もう一度、仲間として

凛が再び人財屋を訪れます。


勇者としての使命を持つ凛と、人財屋を営む直人。


立場は違っても、二人の間にあるものは少しずつ変わり始めます。

 凛と再会した翌日。


 人財屋の朝は、いつもと少し違っていた。


「……おはようございます」


「おはよう、凛」


 昨日までなら、そこにいるはずのなかった人がいる。


 それだけで、店の空気が少しだけ変わっていた。


「なんだか、不思議ですね」


 セリアが凛を見ながら笑う。


「昨日まで、直人さんがずっと気にしていた人が……本当に目の前にいるんですから」


「セリア……」


「すみません」


 セリアは楽しそうに笑った。


 レオンも腕を組みながら頷く。


「でも、これで直人も少しは安心したんじゃないか?」


「まあ……な」


 俺は凛を見る。


 凛は少し困ったような顔をしていた。


「私は、まだ実感がないけど」


「俺もだよ」


 昨日、再会した。


 それだけなのに。


 今まで心の奥にあった何かが、少しだけ軽くなった気がする。


 ただ――。


 問題はこれからだった。


「凛」


「うん?」


「王城では、どういう扱いになってるんだ?」


「勇者として、国からいろいろ期待されてる」


「やっぱり、簡単にはこっちに来られないか」


「そうだね」


 凛は少し寂しそうに笑った。


「私にも役割があるから」


 その言葉を聞いて、俺は頷いた。


 無理に引き止めるつもりはない。


 凛には凛の人生がある。


 俺にも、この世界で作ってきた生活がある。


 だからこそ――。


「じゃあ、こうしよう」


「何?」


「これからも、普通に会えばいい」


「普通に?」


「ああ」


 俺は笑った。


「勇者と人財屋の経営者じゃなくて」


 一度言葉を切る。


「昔からの知り合いとして」


 凛が目を見開いた。


 そして――。


「……うん」


 小さく笑った。


「それがいい」


 そのときだった。


「直人さん!」


 エドが慌てた様子で入ってきた。


「商業組合から連絡が来ています」


「何かあった?」


「昨日の案件です。追加で相談したい店があるそうです」


 俺は書類を受け取った。


 そこには、いくつかの店の名前が並んでいる。


「……かなり増えたな」


「はい。それと」


 エドがもう一枚の紙を差し出した。


「商業組合が、正式に人財屋との継続契約を検討しているそうです」


「継続契約?」


「はい」


 レオンが身を乗り出した。


「それってつまり……」


「人財屋を、王都の商業組合が正式な協力先として認めるということです」


 店内が静かになった。


 俺は書類を見る。


 人財屋を始めてから、まだそれほど時間は経っていない。


 それでも。


 少しずつ、ここまで来た。


「……すごいですね」


 セリアが呟く。


 俺は笑った。


「まだ、始まったばかりだよ」


 そう言ったとき。


「直人」


 凛が声をかけてきた。


「ん?」


「私も、その仕事を見てみたい」


「……え?」


「この世界で、直人が何をしているのか」


 凛は真っ直ぐ俺を見る。


「もっと知りたい」


 その言葉に、俺は少し考えた。


 そして頷く。


「分かった」


「いいの?」


「ああ。ただし――」


 俺は人財屋の看板を見る。


「ここでは、勇者だから特別扱いはしない」


「ふふっ」


 凛が笑った。


「昔から、そういうところ変わらないね」


「何が?」


「真面目なところ」


「……そうかな」


 みんなが笑った。


 昨日までとは違う。


 でも、無理に何かを変える必要もない。


 凛は凛の場所で。


 俺は俺の場所で。


 それぞれが歩いていけばいい。


 そして、その途中でまた交わればいい。


 俺はそう思っていた。


 ――だが。


 このときの俺は、まだ知らなかった。


 凛との再会が。


 これからの人財屋を、大きく変えていくことを。


 そして。


 商業組合から届いた一枚の依頼書が――。


 俺たちの次の仕事を、これまでとは全く違う場所へ導くことになる。

凛が人財屋の仲間たちと少しずつ関わり始めました。


「勇者」という肩書きだけではなく、一人の人間としての凛もこれから描いていきたいと思っています。


直人との関係も、急がず少しずつ進めていく予定です。


Amane

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