人が辞める理由
【第二章 第22話】
人が足りないと言われている場所を調べていく直人たち。
しかし、話を聞けば聞くほど、単純な人手不足ではないことが見えてきます。
人が辞めてしまう理由。
その裏側にあるものとは――。
王都商業組合から正式な依頼を受けて、三日。
俺たちは朝から商店街を歩き回っていた。
「これで五軒目です」
セリアが手元の資料を見る。
「どこも同じですね」
レオンが答えた。
人手不足。
採用しても続かない。
経験者が辞める。
残った人間の負担が増える。
そして、さらに人が辞める。
最初は単純な人手不足だと思っていた。
だが、違う。
「直人さん」
「どうしました?」
「この店も、同じ問題ですね」
セリアが目の前の商店を見る。
俺は店内を眺めた。
忙しい。
客も多い。
それなのに、従業員の表情は暗い。
「少し話を聞いてみましょう」
店主に許可をもらい、従業員たちと話をする。
すると、すぐに理由が見えてきた。
「忙しいから辞めるんですか?」
「それもあります」
一人の女性が答えた。
「でも、一番つらいのは……頑張っても評価されないことです」
俺は黙って聞いた。
「仕事が増えても給料は同じ」
「新人が入っても教えるのは私たち」
「店主さんは忙しくて、現場を見ていません」
なるほど。
人が足りない。
だから仕事が増える。
仕事が増えるから疲れる。
そして――。
評価されない。
辞める。
典型的な悪循環だった。
俺は店主に尋ねた。
「従業員の仕事を、きちんと把握していますか?」
「もちろんです」
「では、彼女が何をしているか説明できますか?」
「え?」
店主が言葉を失う。
俺は従業員を見る。
彼女の能力が浮かび上がった。
【接客能力:A】
【教育能力:S】
【管理能力:A】
そして――。
【統率能力:A】
「この人を、新人教育の担当にしてはどうでしょう?」
「私が?」
女性が驚く。
「はい」
店主も戸惑っている。
「でも、彼女には現場の仕事が……」
「だからこそです」
俺は続ける。
「新人を一人ずつ育てられる人がいれば、店全体の負担が減ります」
「……なるほど」
店主が考え込む。
「そして、役割を与えるなら、それに見合った待遇も必要です」
俺はそう付け加えた。
人を増やせば解決する。
そんな簡単な話ではない。
今いる人財を活かす。
それも人財屋の仕事だ。
数日後。
商業組合へ報告書を提出した。
「なるほど……」
担当者が資料を読みながら唸る。
「採用だけではなく、既存の従業員の配置まで見直すのですか」
「はい」
「これは……今までの人材紹介とは違いますね」
「人財屋ですから」
俺が答えると、担当者は笑った。
「分かりました。追加で相談したい商店があります」
「何軒ですか?」
「十軒ほど」
「……十軒?」
セリアとレオンが顔を見合わせる。
俺は思わず笑った。
「仕事が増えましたね」
「嬉しそうですね」
セリアが呆れたように言う。
「こういう仕事、好きなんですよ」
会社を経営していた頃もそうだった。
問題を見つける。
原因を考える。
人を配置する。
組織を変える。
そして、人が変わる。
その瞬間を見るのが好きだった。
その夜。
人財屋の食卓。
「十軒……」
レオンが呟く。
「人手が必要ですね」
「そうですね」
俺は箸を置いた。
「そろそろ、本格的に仲間を増やしましょう」
「新しい人を雇うんですか?」
「はい」
セリアが少し嬉しそうに笑った。
「どんな人が来るんでしょう」
「それを探すのが、俺たちの仕事です」
まだ三人。
けれど――。
人財屋は、確実に大きくなり始めていた。
一方。
王城では、凛が一枚の書類を見つめていた。
「……商業組合の依頼?」
直人が関わっている案件だった。
凛はしばらく考える。
そして、静かに立ち上がった。
「少しだけ……街に出てみようかな」
直人がいる場所。
人財屋がある場所。
凛はまだ知らない。
自分が向かおうとしている先が――
直人との再会に、つながっていることを。
「人が足りない」という言葉の裏には、いろいろな理由があります。
能力、環境、仕事の内容、そして人間関係。
今回は、そんな部分にも少し踏み込んでみました。
人財屋として、直人たちがどんな答えを出すのか。
続きを楽しみにしていただければ嬉しいです。
Amane




