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王都商業組合からの依頼

【第二章 第21話】


王都で少しずつ知られるようになった「人財屋」に、これまでより大きな依頼が舞い込みます。

直人たちは、初めて大きな組織の問題に向き合うことになります。


――人が足りない。

本当に、それだけが問題なのでしょうか。


ここから第二章が始まります。

 朝。


 人財屋の事務所には、いつもより早く明かりが灯っていた。


「これ、本当に受けるんですか?」


 セリアが机の上に置かれた依頼書を見る。


「ああ」


 俺は頷いた。


 王都商業組合からの正式な依頼。


 複数の商店が抱えている人手不足を解消する。


 必要な人員は十名以上。


 これまで受けてきた依頼とは、規模が違う。


「今の俺たち三人だけじゃ対応できませんね」


 レオンが言う。


「だから、まず人を集める」


「人財屋が、自分たちのために人財を探すんですね」


「そういうことです」


 俺は笑った。


 これまで、俺たちは誰かのために人を探してきた。


 今度は自分たちのために探す。


 少し不思議な感覚だった。


「ただし――」


 俺は依頼書を指で叩いた。


「十人集めることだけを目標にはしません」


「どういうことですか?」


「必要なのは人数じゃない」


 俺は二人を見る。


「商店ごとに必要な人財が違います」


 接客が得意な人。


 計算が得意な人。


 交渉が得意な人。


 裏方が得意な人。


 それぞれの能力を見極め、合う場所につなげる。


「それが人財屋の仕事です」


「なるほど」


 セリアが頷いた。


 その日の午後。


 俺たちは商業組合へ向かった。


 建物の中には、すでに十数人の商人が集まっていた。


「人財屋さんはこちらです」


 案内された席に座る。


 商人たちの表情は、決して明るくない。


「人が足りない」


「募集しても集まらない」


「新人を雇ってもすぐ辞めてしまう」


 次々と問題が出てくる。


 俺は黙って話を聞いた。


 そして――。


 一つの共通点に気づいた。


「皆さん」


 俺は口を開く。


「人が足りないことだけが問題ではありません」


 部屋が静かになる。


「人が定着しないことも問題ですよね?」


 商人たちが顔を見合わせる。


「……確かに」


「では、なぜ辞めるのか」


 俺は立ち上がった。


「そこから調べましょう」


 単純な人員補充では終わらない。


 この仕事は、人財屋にとって初めての本格的な組織改革になる。


 そして、その日の帰り道。


 セリアがふと口を開いた。


「直人さん」


「はい?」


「最近、何だか楽しそうですね」


「そうですか?」


「はい」


 俺は少し考えた。


 確かにそうかもしれない。


 日本にいた頃。


 経営者として、人と組織について考えていた。


 それが今、異世界でも同じように役立っている。


 不思議なものだ。


 そして――。


 王城。


 凛は一枚の書類を机に置いた。


「王都商業組合……」


 そこには、人財屋の名前があった。


 その代表者欄に書かれた名前。


桜井直人。


 凛はその文字を静かに見つめる。


「……やっぱり、直人なんだ」


 まだ会いに行くことはできない。


 今の自分には、勇者としての役割がある。


 けれど。


 いつまでも遠くから見ているつもりもなかった。


 凛は書類を閉じる。


「もう少しだけ待って」


 誰に言うでもなく呟いた。


「今度は……ちゃんと会いに行くから」


 王都のどこかで。


 直人もまた、新しい仕事に向けて歩き始めていた。


 二人の再会は、まだ少し先。


 しかし――。


その距離は、確実に縮まり始めていた。

第二章、開幕です。


第一章では、人財屋という小さな店を作るところまで描きました。

第二章では、そこから少しずつ世界を広げていきます。


人を見つけるだけではなく、その人がどこで力を発揮できるのか。

直人が少しずつ考え方を変えていく章になります。


最後まで楽しんでいただければ嬉しいです。


Amane

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