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再会の予感

第20話です。


王都商業組合から舞い込んだ、大きな依頼。


人財屋は、これまでとは違う規模の仕事へ挑むことになります。


一方、王城では凛が直人の存在を知り、動き始めていました。


同じ王都。


同じ空の下。


それでも、まだ二人は出会っていません。


人財屋の未来と、二人の再会。


それぞれの物語が動き出す、第1章の節目です。


どうぞお楽しみください。

 翌朝。


 人財屋の事務所には、いつもより早く明かりが灯っていた。


「十人以上……」


 セリアが昨日の依頼書を見つめている。


「かなり大きな仕事ですね」


 レオンも頷く。


「今の俺たちだけでは無理です」


「だからこそ、受ける価値があります」


 俺は依頼書を机の上に置いた。


 王都商業組合からの依頼。


 複数の商店が抱える人手不足を、一度に解決する。


 これまでの俺たちなら、迷っていたかもしれない。


 でも今は違う。


「人財屋として、次の段階へ進みます」


 セリアが笑った。


「新しい仲間を探すんですね」


「はい」


 レオンも立ち上がる。


「俺も探します」


「助かります」


 こうして三人は、それぞれ別れて王都へ向かった。


 仕事を探している人。


 自分の能力を活かせる場所を探している人。


 今の職場に悩んでいる人。


 街には、まだ俺たちが知らない人財がたくさんいる。


 その一人ひとりに話を聞いていく。


 そして昼過ぎ。


 俺の前に、一人の青年が座っていた。


「仕事を探しています」


「どんな仕事がしたいですか?」


「……分かりません」


「では、今まで何をしてきました?」


「何も……」


 青年は俯いた。


 俺はその姿を見つめる。


 すると――。


《人財鑑定》


 文字が浮かんだ。


【交渉能力:S】


【情報収集能力:A】


【人脈構築能力:S】


 そして――。


【潜在能力:SS】


「……」


 俺は思わず笑った。


「どうしました?」


「いや」


 この世界にもいる。


 自分の価値に気づいていない人が。


「あなたに向いている仕事があります」


 青年が顔を上げる。


「本当ですか?」


「はい」


 人財屋の仕事は、少しずつ形になっていた。


 夕方。


 三人が事務所へ戻ってくる。


「今日はどうでした?」


「二人、候補が見つかりました」


 セリアが答える。


「俺は一人です」


 レオンも報告する。


「十分です」


 俺は頷いた。


 まだ十人には届かない。


 でも――。


 最初の一歩としては十分だった。


 その夜。


 俺たちは三人で食卓を囲んだ。


「なんだか、会社みたいですね」


 セリアが笑う。


「そのうち、本当に会社にしますよ」


「人財屋株式会社?」


「そんな感じです」


 レオンが少し笑った。


「そのとき、俺も社員ですか?」


「もちろん」


「セリアも?」


「当然です」


 三人で笑う。


 ほんの少し前まで、俺はこの世界で一人だった。


 今は違う。


 帰る場所がある。


 一緒に仕事をする仲間がいる。


 そして――。


 これから作っていく未来がある。


 俺は窓の外を見る。


 夜の王都。


 遠くに王城の明かりが見える。


 その頃。


 王城では、凛が一人で廊下を歩いていた。


「勇者様、どちらへ?」


「少し外へ」


「護衛を――」


「いりません」


 凛は歩みを止めない。


 頭の中にあるのは、ただ一つ。


 直人。


 報告書で名前を見つけた。


 生きている。


 この王都にいる。


 それだけで十分だった。


 けれど――。


「……どうしよう」


 会いたい。


 でも、怖い。


 あの頃のままなのか。


 自分のことを覚えているのか。


 そして何より――。


 自分は、直人に何を伝えればいいのか。


 凛は胸元のペンダントを握った。


「明日……」


 その言葉を口にした瞬間。


 王城の外から、大きな鐘の音が響いた。


 王都中に響き渡る鐘。


 それは――。


 商業組合が新たな人材募集を開始したことを知らせる鐘だった。


 人が動く。


 商人が動く。


 そして、人財屋も動き始める。


 その中心にいる直人を目指して――。


 一人の少女も、歩き始めていた。


 まだ、再会はしていない。


 けれど。


 二人の物語は、もう一度交わろうとしていた。


第一章・完

――第二章「再会」へ続く。

第20話を読んでいただき、ありがとうございます。


ここまで直人・セリア・レオンの三人が、人財屋を作り上げていく物語を描いてきました。


小さな出会いから始まった人財屋は、少しずつ人を集め、仕事を広げ、そして新しい未来へ進もうとしています。


そして最後に、凛も直人が生きていることを知りました。


まだ二人は再会していません。


ですが、物語は確実に次の段階へ進み始めています。


第2章では、直人たちの前に新たな人財と出来事が待っています。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


引き続き、直人たちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。


Amane

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