王都に広がる人財屋
第19話です。
一つ一つの仕事を積み重ねてきた人財屋。
その評判は、少しずつ王都へ広がり始めていました。
依頼が増えれば、当然、三人だけでは対応できなくなっていきます。
人財屋が次に必要とする「人財」とは――。
そしてついに、凛のもとへ届いた一つの報告。
そこに書かれていた名前を見た凛は――。
どうぞお楽しみください。
人財屋を開業してから、二週間。
最初は静かだった事務所にも、少しずつ人が訪れるようになっていた。
「次の方、どうぞ」
セリアが来訪者を案内する。
「仕事を探しているんですが……」
「こちらへどうぞ」
レオンは相談者の話を聞きながら、必要な情報を紙に書き込んでいる。
そして俺は――。
一人ひとりの才能を見る。
人財鑑定。
この力があるからこそ、俺は普通なら見逃されてしまう才能を見つけることができる。
ただ、それだけでは十分ではない。
「あなたには、この仕事が合っています」
「本当に?」
「はい」
人と仕事をつなぐ。
それが俺たちの仕事だ。
「直人さん」
昼過ぎ、セリアが帳簿を持ってきた。
「今月の依頼、もう十件を超えています」
「十件?」
「はい」
俺は帳簿を見る。
採用。
紹介。
業務改善。
簡単な魔道具の相談。
仕事内容は少しずつ増えている。
「悪くないですね」
「悪くないどころか、すごいと思います」
セリアが笑う。
「まだ始めて二週間ですよ」
「そうですね」
俺は窓の外を見る。
王都の人通りは多い。
その中に、俺たちのことを知っている人が少しずつ増えている。
口コミ。
紹介。
以前の依頼主からの再依頼。
やっぱり、商売の基本は変わらない。
「でも、一つ問題があります」
レオンが言った。
「何ですか?」
「人が足りません」
「……」
俺は黙った。
依頼が増えた。
相談者も増えた。
でも、働いているのは三人。
「なるほど」
俺は椅子から立ち上がった。
「今度は俺たち自身が、人財を探す番ですね」
「私たちの仲間を?」
「はい」
セリアが少し驚く。
「新しい人を雇うんですか?」
「このまま三人だけでは限界があります」
会社が成長するとき、必ず壁にぶつかる。
自分たちだけで全部やろうとする。
仕事が増える。
忙しくなる。
そして――。
成長が止まる。
「人財屋が、人財不足になったら笑えませんからね」
俺がそう言うと、セリアとレオンが笑った。
「まずは一人」
俺は指を一本立てる。
「俺たちを支えてくれる人を探しましょう」
その日の夕方。
俺たちはギルドへ向かった。
掲示板を見る。
そこには、これまでとは違う依頼が貼られていた。
【王都商業組合・人材募集】
「商業組合?」
セリアが首を傾げる。
「かなり大きな依頼ですね」
レオンが言った。
俺は依頼書を手に取った。
内容を読む。
複数の商店から寄せられた人手不足の相談。
必要人数――十名以上。
「これは……」
思わず笑みがこぼれる。
今までの依頼とは規模が違う。
しかも――。
「直人さん?」
「面白いですね」
俺は依頼書を見つめる。
「これを受けましょう」
人財屋にとって、大きな転機になる仕事だった。
一方、その頃。
王城では――。
「勇者様、こちらをご覧ください」
凛の前に、一枚の報告書が置かれた。
「最近、王都で評判になっている商売があります」
「……人財屋?」
「はい」
凛はその名前を見つめる。
なぜか、胸の奥がざわつく。
「この人財屋を経営している人物ですが……」
報告書には、代表者の名前が書かれていた。
凛の視線が止まる。
「……え?」
そこに書かれていた名前。
それは――。
桜井直人
「……直人?」
凛の手から、報告書が落ちた。
ずっと探していた。
もう会えないかもしれないと思っていた。
それなのに。
「生きてた……」
凛の目に、涙が浮かぶ。
しかし次の瞬間。
「勇者様?」
凛は顔を上げた。
「……会わないと」
同じ王都。
同じ空の下。
二人の距離は、もう――。
すぐそこまで近づいていた。
第19話を読んでいただき、ありがとうございます。
人財屋は、少しずつ「三人だけの小さな仕事」から、より大きな組織へ向かい始めています。
仕事が増えれば、新しい人財が必要になる。
これまで人財を探してきた直人たちが、今度は自分たちの仲間を探すことになります。
そして、ついに凛が直人の存在を知りました。
二人が再び出会う日は、少しずつ近づいています。
Amane




