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新しい拠点と、遠い記憶

第16話です。


人財屋としての仕事が少しずつ形になり、直人たちは新しい拠点を探すことに。


そこで見つけた一軒の家。


それは、これから始まる三人の新しい生活と、人財屋の未来を支える場所になります。


そして同じ頃――。


遠く離れた場所で、ある少女もまた一人の人物を思い出していました。


二つの物語が、少しずつ近づいていきます。


どうぞお楽しみください。

 翌朝。


 俺たちは王都の住宅街を歩いていた。


「思ったより、家が多いですね」


 セリアが周囲を見渡す。


「王都ですからね」


 レオンが答える。


 俺たちが探しているのは、ただの住居ではない。


 これから仕事をするための場所。


 つまり――。


 人財屋の最初の拠点だ。


「できれば一階を仕事場にできる家がいいですね」


「二階は?」


「俺たちの住居です」


 セリアが少し驚いた顔をする。


「三人で住むんですか?」


「嫌ですか?」


「い、いえ!」


 セリアが慌てて首を振る。


「そういう意味では……」


 レオンが小さく笑った。


「セリア、顔が赤い」


「レオン!」


 そんな二人を見て、俺も笑ってしまった。


 少しずつではあるが、この三人でいることが自然になってきた。


 しばらく歩くと、古い一軒家が目に入った。


「ここは?」


 俺が立ち止まる。


 木造二階建て。


 少し古いが、建物そのものはしっかりしている。


 そして何より――。


「一階が広いですね」


 レオンが中を確認する。


「ここなら事務所にできます」


 セリアも窓から外を見る。


「庭もあります」


 俺は家の中を歩いた。


 一階には広い部屋が二つ。


 小さな倉庫。


 厨房。


 二階には三つの部屋。


「……いいですね」


 俺はそう呟いた。


 価格を聞く。


 想定していたよりも安い。


「これなら買える」


「買うんですか?」


 セリアが驚く。


「借りるより、長く使うなら買ったほうがいい」


 俺は家の中をもう一度見渡した。


 ここなら仕事ができる。


 人を迎えられる。


 そして――。


 帰ってくる場所にもなる。


「ここにしましょう」


「本当に?」


「はい」


 こうして俺たちは、初めて自分たちの拠点を手に入れた。


 その日の夕方。


 荷物を運び込みながら、俺は一階の部屋を見渡した。


「ここを事務所にする」


 壁際に机を置く。


 簡単な棚を置く。


 まだ何もない。


 でも――。


 ここから始まる。


「看板も必要ですね」


 セリアが言った。


「看板?」


「人財屋って書くんですよね?」


「そうですね」


 俺は笑った。


「明日、作りましょう」


 その夜。


 二階の自分の部屋で、俺は窓の外を眺めていた。


 異世界に来てから、まだそれほど時間は経っていない。


 なのに、ずいぶん遠くまで来た気がする。


 ふと、日本に残してきたものを思い出す。


 そして――。


 凛の顔が頭に浮かんだ。


「……凛」


 あいつは今、どうしているだろう。


 俺と同じように、この世界で生きているのか。


 それとも――。


 もう、俺のことなど忘れているのだろうか。


 そんなことを考えながら、俺は窓を閉めた。


 その頃。


 王都の中心部。


 一人の少女が、広場に立っていた。


 銀色の髪が夜風に揺れる。


「……この世界にも、少し慣れてきたかな」


 少女は空を見上げる。


 その腰には、見慣れない剣。


 そして胸元には、王国から与えられた紋章。


「明日は、また訓練か……」


 周囲から声が聞こえる。


「勇者様」


「明日の予定ですが――」


「はい」


 少女は振り返った。


 そして、一瞬だけ寂しそうな表情を見せる。


「……直人」


 その名前を、誰にも聞こえない声で呟いた。


 同じ王都。


 ほんの少し離れた場所。


 二人はまだ知らない。


 互いが同じ世界で、すぐ近くまで来ていることを。



第16話を読んでいただき、ありがとうございます。


今回、直人たちは初めて自分たちの拠点を手に入れました。


仕事をする場所。


帰ってくる場所。


そして、三人がこれから過ごしていく場所。


一軒の家が、今後の物語の中でも大切な場所になっていきます。


そして最後に、久しぶりに登場した凛。


二人の距離がどう近づいていくのかも、ぜひ見守ってください。


Amane

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