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最初の人財

第15話です。


商会の問題を解決する中で、直人たちは一人の人財と出会いました。


それは、本人さえ気づいていなかった才能。


人財を見つけるだけではなく、その人が力を発揮できる場所を作る。


直人が目指す「人財屋」の姿が、少しずつ形になっていきます。


そして三人は、次なる一歩を考え始めます。


どうぞお楽しみください。

 翌日。


 俺たちは、昨日の商会を再び訪れていた。


「昨日の女性ですが……」


 グレイさんが困ったような顔をしている。


「リナさんですか?」


「はい」


 俺は頷いた。


「彼女を、人財として紹介したいと思っています」


「ですが……」


「何か問題がありますか?」


「本人が、自分にはそんな価値がないと言っているんです」


 俺は少し考えた。


 やはりそうか。


 能力がないのではない。


 自分の能力に気づいていない。


 それは、セリアと同じだった。


「リナさんと話をさせてもらえますか?」


「もちろんです」


 しばらくすると、リナがやってきた。


「昨日はありがとうございました」


「こちらこそ」


「私……本当に役に立てるんでしょうか?」


「役に立てるかどうかは、もう確認しています」


「え?」


 俺は一枚の紙を差し出した。


 そこには、昨日の帳簿を見て俺が整理した内容が書かれている。


「在庫管理」


「……」


「数字の正確さ」


「……」


「商品の動きを分析する力」


 リナが黙って紙を見る。


「これ、全部……私が?」


「はい」


「でも、これくらいは普通に……」


「リナさん」


 俺は言葉を止めた。


「普通の人が、三年間一人でここまで管理できますか?」


 リナは答えなかった。


「できる人にとっては、できて当たり前なんです」


 俺は続ける。


「だから、自分では特別だと思わない」


「……」


「でも、それが人財です」


 リナがゆっくり顔を上げる。


「人財……」


「はい」


 俺は笑った。


「俺は、リナさんを必要としている場所を探します」


「この商会では……?」


「もちろん、ここも候補です」


 グレイさんを見る。


「ただし、条件があります」


「条件?」


「リナさんに今までと同じ働き方をさせないこと」


 グレイさんが黙る。


「人財を見つけても、その人を潰してしまったら意味がありません」


「……分かりました」


 グレイさんが頷いた。


「管理業務を中心にしてもらいます」


「ありがとうございます」


 リナの表情が少し明るくなった。


 その瞬間。


 俺の目の前に、いつもの表示が浮かんだ。


【人財登録:可能】


 初めて見る表示だった。


「……人財登録?」


「直人さん?」


 セリアが不思議そうにこちらを見る。


「いや……」


 俺は表示を確認する。


【対象者:リナ】


【適性:管理・事務・分析】


【推奨職種:商会管理責任者】


 俺は思わず笑った。


「なるほど……」


「何が分かったんですか?」


「人財屋の仕組みが、一つ分かった気がします」


 これまでは、人の才能を見るだけだった。


 でも違う。


 才能を見つける。


 その才能を活かせる仕事を探す。


 そして、その人が長く活躍できる環境を作る。


 そこまでやって初めて――。


「人財を活かした」と言える。


「直人さん」


 セリアが笑う。


「嬉しそうですね」


「ええ」


 俺はリナを見る。


「初めて、本当の意味で人財を見つけましたから」


 帰り道。


 レオンが突然口を開いた。


「直人さん」


「はい?」


「俺たちも……人財なんですか?」


 俺は少し驚いた。


 そして笑った。


「もちろんです」


「そうですか」


 レオンは少しだけ嬉しそうだった。


 セリアも笑っている。


 俺は二人を見ながら思った。


 日本では、会社を経営していた。


 人を採用して。


 育てて。


 仕事を任せて。


 組織を作ってきた。


 まさか異世界に来て、もう一度同じことをするとは思わなかった。


 ただ、一つだけ違う。


 今度は――。


 自分の会社ではない。


 自分自身がゼロから作る会社だ。


「……そろそろ、拠点が必要ですね」


「拠点?」


 セリアが首を傾げる。


「今のままだと、仕事が増えたら困ります」


 レオンが頷いた。


「確かに」


「家を探しましょう」


「家……?」


「住む場所でもあり、仕事をする場所でもある」


 俺は二人を見る。


「俺たちの、人財屋の最初の拠点です」


 三人で歩きながら、王都の街並みを眺める。


 人財屋は、まだ始まったばかり。


 それでも――。


 確実に、何かが動き始めていた。

第15話を読んでいただき、ありがとうございます。


今回、直人たちは初めて「自分たちで人財を見つけ、活かす」という仕事を形にしました。


小さな一歩ですが、ここから人財屋の可能性が広がっていきます。


そして直人たち自身にも、少しずつ変化が。


次の段階へ進む三人を、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


Amane

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