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新しい依頼

第12話です。


今回、直人たちのもとに舞い込んできたのは、商会からの在庫整理の依頼。


一見すると、ただの整理作業に見えました。


しかし、現場を訪れた直人は、そこに別の問題があることに気づきます。


本当に必要なのは、在庫を整理することなのか。


それとも――。


直人たちは、初めて「人財屋」の本当の仕事に踏み込んでいきます。


どうぞお楽しみください。

 魔道具店からの依頼を終えた翌日。


 俺たちは、いつものようにギルドへ向かっていた。


「最近、ここに来るのが当たり前になってきましたね」


 セリアが周囲を見渡す。


「仕事を探す場所ですからね」


「最初は、直人さんがここで途方に暮れていましたよね」


「……そうでしたね」


 思い出すと少し恥ずかしい。


 異世界に来たばかりで、剣も魔法も使えない。


 しかも「ハズレ」とまで言われた。


 あの頃は、この世界で生きていく方法すら分からなかった。


 それが今では――。


「直人さん」


「はい?」


「人財屋の依頼、増えています」


 セリアが笑った。


「そうですね」


 ギルドの掲示板を見る。


 以前とは明らかに違う。


 俺たちを指名するような依頼まで出ている。


「……本当に増えましたね」


 レオンが呟く。


「ただ、全部は受けません」


「どうしてですか?」


「三人しかいないからです」


 会社でも同じだった。


 仕事を取ることだけを考えれば、いくらでも取れる。


 でも、人手が足りなければ品質が落ちる。


 品質が落ちれば信用を失う。


「今は、無理をしない」


 俺は掲示板から一枚の依頼書を取った。


「これにしましょう」


 依頼内容は、商会からの在庫整理だった。


 報酬は金貨二枚。


 悪くない。


「在庫整理……」


 セリアが少し首を傾げる。


「魔物退治じゃないんですね」


「人財屋ですから」


「でも、どうして私たちに?」


「そこが気になります」


 俺たちは依頼主の商会へ向かった。


 王都の中心部にある、比較的大きな建物だった。


「ここですか……」


 セリアが見上げる。


「大きいですね」


 中へ入ると、忙しそうに人が行き交っている。


「ギルドから依頼を受けてきました」


 受付に声をかける。


「人財屋の方ですね?」


「はい」


 すると、奥から一人の男性が現れた。


「待っていました」


 年齢は四十代くらい。


 商人らしい落ち着いた雰囲気だ。


「私はこの商会を任されている、グレイと申します」


「桜井直人です」


「セリアです」


「レオンです」


 挨拶を終えると、グレイさんはすぐに倉庫へ案内してくれた。


「これが問題の商品です」


 扉を開ける。


 中には大量の箱が積まれていた。


「……多いですね」


 セリアが呟く。


「ええ」


 グレイさんがため息をつく。


「商品はあるのですが、何がどこにあるのか分からなくなってしまいまして」


「つまり、在庫管理ができていない?」


「その通りです」


 俺は倉庫を見渡した。


 箱の種類は多い。


 魔石。


 薬草。


 魔道具。


 食料品。


 雑貨。


「これ、何人で管理しているんですか?」


「今は二人です」


「二人?」


「以前は五人いたのですが、三人が辞めまして」


 俺は倉庫をもう一度見る。


 なるほど。


 人手不足。


 そして、残った二人に仕事が集中している。


 会社を経営していた頃、何度も見た光景だった。


「グレイさん」


「はい」


「今回、在庫を整理するだけでいいですか?」


「え?」


「根本的な問題を解決したほうがいいと思います」


「根本的な問題?」


「人が足りていません」


 グレイさんが黙った。


「確かに、その通りです」


「でしたら、在庫整理だけでは一時的な解決です」


 俺は倉庫を見る。


「人を採用することも含めて、考えませんか?」


「採用……」


「はい」


 グレイさんは驚いた顔をした。


「あなたたちは、そういうこともできるんですか?」


 俺は少し笑った。


「それが、俺たちの仕事です」


 セリアとレオンを見る。


 二人も頷いた。


 これまでの依頼とは違う。


 今回は――。


人財を見つける仕事そのものが、依頼になった。


 俺は確信した。


 人財屋は、少しずつ本当の意味で仕事になり始めている。


 そして、この商会との出会いが――。


 俺たちの事業を次の段階へ進めることになる。

第12話を読んでいただき、ありがとうございます。


今回から、人財屋の仕事が少しずつ変わり始めます。


これまでは、自分たち三人の力を活かして依頼をこなしてきました。


しかし今回、直人は「人を見つけ、活かす」という、人財屋の本来の仕事に向き合い始めます。


そして、経営者として培ってきた経験も、少しずつ異世界で活かされていきます。


ここから人財屋がどのように成長していくのか。


引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。


Amane

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