第9話 「すべての黒幕は、あの人でした」
◆ 不穏な招待状
それは、私が逃亡騒ぎを起こしてから数週間たった、ある日の午後。
一通の封書が届いた。
王家の紋章入り。
「……宮廷舞踏会?」
私は目を丸くする。
「こんな時期に?」
「……来たか」
セシルの表情が、硬くなる。
「この舞踏会は何かあるの?」
私の手をにぎりながら。
「リリアーナには僕がついているから、何も心配しなくて大丈夫だからね?」
それを言われて、一瞬断罪の舞踏会のことが 頭をよぎったが
(…まさかね)
「……うん」
胸騒ぎを覚えながらも、私は頷いた。
◆ 王宮の夜
舞踏会当日。
王宮は、宝石箱のようだった。
光、音楽、香り。
でも私は、原作のこの光景を思い出して、落ち着かなかった。
セシルの腕にしがみつく。
「大丈夫」
小さく囁かれる。
「僕が守る」
(……頼もしいな。)
◆ 黒幕登場
途中。
私たちは、王子に呼ばれた。
小広間。
そこにいたのは――
「久しぶりだね、セシル」
第二王子・アレクシス。
原作での――
最終黒幕。
(……来た……)
心臓が跳ねる。
◆ 陰謀の正体
「君の婚約、邪魔だったんだよ」
王子は、平然と言う。
「君は、優秀すぎる」
「次期宰相候補」
「だから、失脚させたかった」
淡々と。
「リリアーナ嬢を“悪役”に仕立てれば」
「君は感情で崩れると思ってね」
……私。
利用されてた?
怒りが湧く。
「……最低」
思わず、口に出た。
王子は笑う。
「褒め言葉だよ」
◆ 決定的証拠
セシルは、静かに言った。
「……他にも僕を陥れようと画策していた証拠は、全部揃っている」
指を鳴らす。
扉が開く。
騎士団。
そして。
「……帳簿、偽造文書、証言」
「全部、提出済みだ」
完璧。
王子の顔が歪む。
「な……!?」
「君は、読みやすすぎる」
淡々と追い詰めていった。
◆ ヒロインの一言
私は、一歩前に出た。
震えながら。
「……私」
「利用されたのは許せない」
はっきり。
「…それに、セシルは何もせずに優秀なんじゃい」
「正々堂々と勝負すればよかったのよ!」
それを聞いた彼が、驚いた顔をする。
(……ざまあだわ。)
◆ 断罪
「第二王子アレクシス」
騎士団長が宣告する。
「国家転覆未遂の罪で拘束する」
王子は、崩れ落ちた。
「……くそ……」
連行される。
すべて、終わった。
◆ 夜の約束
帰り道。
馬車の中。
私は、ため息をついた。
「……終わったわ」
「ああ」
彼は、私の肩を抱く。
「僕をちゃんと見てくれてるって思えてうれしかった」
「っ?!」
微笑む。
「ありがとう」
顔をプイッとしながら
「そんなの当然よ!…婚約者のことだからね」
それを聞いてセシルはご満悦の様子である。
◆ 新しい未来
王都の灯りが見える。
私は、思った。
(もう……怖くない)
運命も。
断罪も。
全部、超えた。
隣には、この人がいる。
それで十分だった。




