第10話 「結婚準備が、戦争でした」
――結論から言う。
結婚準備は、地獄だ。
しかも。
敵は、恋人だった。
「……このドレスは却下」
セシルが、真顔で言った。
「え!? 可愛いじゃん!」
「露出が多い」
「肩しか出てないよ!?」
「多い」
即答。
(基準どこ!?)
◆ ドレス戦争
王都一の仕立屋。
私は、鏡の前で回っていた。
淡いピンクのドレス。
「どう?」
「……だめ」
「また!?」
「可愛すぎる」
「それ理由!?」
職人さん、苦笑。
「では……こちらは?」
次は、上品な白。
長袖、首元まで覆う。
「……これで」
「修道女みたいじゃん!!」
「安全」
(もう!こんなんじゃ選択肢がないわ!)
◆ 招待客バトル
次は、招待状会議。
机いっぱいの名簿。
「この人は呼ばない」
ばっさり。
「え? 私の親戚だよ?」
「距離が近い」
「従兄だよ!?」
「男」
(もう!理不尽よ。)
◆ 指輪問題
宝飾店。
ショーケースが輝く。
「好きなの選んで」
セシルが言う。
「……全部?」
「全部」
即答。
(財力……)
私は、控えめな指輪を指した。
「これでいいよ」
「小さい」
「充分だよ!」
「足りない」
翌日。
同じデザインの巨大ダイヤ版が届いた。
(話聞いて!?)
◆ 嫉妬は治らない
打ち合わせ中。
男性スタッフが近づく。
「サイズを――」
セシル、即割り込み。
「僕が測る」
「えっ?」
結果。
全部、彼担当。
スタッフ、出番なし。
(独占欲、末期……)
◆ ヒロイン限界
三日目。
私は、ついに爆発した。
「もう!! 全部決めすぎ!!」
机を叩く。
「私たちの結婚式だよ!?」
静寂。
セシルが、目を見開く。
「……ごめん」
珍しい。
(…仕方ないなー)
私は、ため息をついた。
「……一緒に決めよう?」
手を取る。
「夫婦なんだから」
彼は、ゆっくり頷いた。
「……うん」
素直。
可愛い。
◆ 協力モードON
それからは。
二人で相談。
二人で選ぶ。
二人で喧嘩。
二人で仲直り。
理想的。
……たぶん。
◆ 最後の暴走
式前夜。
私は、緊張で眠れなかった。
そこに。
窓から、影。
「……セシル!?」
「様子見に来た」
当然のように。
「前夜に来るな!!」
「不安だった」
子犬か。
「逃げない?」
「逃げません!!」
即答。
「……よかった」
抱きしめられる。
(結局、重い)
◆ 日記・最終形態
『結婚準備』
『戦争』
『でも』
『幸せ』
私は、そう書いた。
明日。
私は、公爵夫人になる。
世界一、重たい愛を背負って。
――悪くない。




