第7話 「公爵様はどこにいても私を迎えに来ます。」
――リリアーナが消えた。
その報告を受けた瞬間。
セシルの中で、何かが静かに壊れた。
「……いつから?」
声は、異様なほど落ち着いていた。
「昨夜です。窓から……」
「護衛は?」
「……気づけませんでした」
――失態。
許されない。
セシルは、ゆっくりと目を閉じた。
(また……失った?)
幼い頃。
彼女がいなくなった数日間。
あの恐怖が、蘇る。
(もう、二度と……)
◆ 捜索開始
「動員できる人員、すべて使え」
即断だった。
「騎士団。商会。情報屋。港湾管理局」
「すべて?」
「全部だ」
迷いはない。
「王都から半径五百キロ圏、網羅しろ」
側近が息を呑む。
「……そこまで?」
セシルは微笑んだ。
「当然だろう?」
目は、笑っていなかった。
◆ 情報網フル稼働
彼の支配力は、想像以上だった。
✔ 宿屋の帳簿
✔ 馬車の記録
✔ 関所の通行証
✔ 船の乗客名簿
すべてが、彼の元に集まる。
「……ここだ」
三日目。
彼は、地図の一点を指した。
「辺境領ルーゼン」
彼女が目指した場所。
「やはり……」
彼女の考えは、全部わかる。
逃げ道も。
不安も。
弱さも。
(全部、僕のものだ)
◆ ヒロイン側:逃亡生活
一方。
私は、辺境の小さな村にいた。
名前を偽り。
簡素な宿で暮らす日々。
「……ここなら、大丈夫……」
そう、思いたかった。
でも。
夜になると、思い出す。
優しい声。
温かい手。
嫉妬する顔。
(……ばか……)
忘れられるわけがない。
◆ 迫る影
四日目。
村に、不穏な噂が流れた。
「最近、貴族の調査団が来てるらしい」
「若い公爵様だって」
――え?
スープを落としそうになる。
(まさか……)
胸が、早鐘を打つ。
(いや、違う……偶然……)
そう信じたかった。
◆ 再会
夕暮れ。
私は、井戸のそばにいた。
背後から、聞き慣れた声。
「……やっと、見つけた」
凍りつく。
ゆっくり振り向くと。
そこにいたのは。
埃まみれでも、美しいままの彼。
セシル。
「……ど、どうして……」
声が震える。
「どうして?」
一歩、近づく。
「君がいなくなったから」
当然の答え。
「……逃げたかっただけ……」
「知ってる」
さらに一歩。
「でも、許さない」
優しく。
怖い。
◆ 本音の吐露
「……怖かったんだ」
彼は、低く言った。
「また、失うのが」
「君が消えるくらいなら……」
一瞬、言葉を切る。
「……世界を敵に回す方がいい」
本気だった。
私は、逃げ場を失う。
「……そこまで……?」
「当然だ」
迷いゼロ。
◆ 捕獲
彼は、そっと私を抱きしめた。
強くない。
でも、絶対に離さない力。
「帰ろう」
囁く。
……ずるい。
こんなの。
逆らえない。
私は、彼の胸に顔を埋めた。
「……うん」
小さく呟く。
◆ 闇強化完了
その夜。
セシルは誓った。
(二度と、逃がさない)
(今度こそ、守り切る)
優しさと、執着を。
さらに深く抱えて――。




