スピンオフ 「私は、あの夫婦の被害者です」
―ローゼリア視点―
結論から言います。
私は、被害者です。
ええ。
間違いなく。
◆ 私について
私の名前は、ローゼリア・フェンネル。
アルディス公爵家・侍女長。
つまり。
あの二人を、一番近くで見てきた人間です。
地獄でした。
◆ 出会った頃
最初に思ったこと。
「……この公爵様、危険では?」
表情:爽やか
態度:完璧
視線:一人限定
リリアーナ様しか見てない。
周囲、背景。
私たち、家具。
◆ 逃亡時代の裏話
あの頃。
お嬢様が逃げるたびに。
公爵様は――
「現在地は?」
「三十分後に確保可能です」
「よし」
作戦会議、即終了。
(軍隊かな?)
しかも。
笑顔。
怖い。
◆ 監視網の真実
世間では。
「偶然出会った」
「運命の再会」
とか言われてますが。
嘘です。
全部、計算。
✔ 郵便局 → 使用人配置
✔ 学院 → 教師買収
✔ 宿屋 → 全部系列
逃げ場、ゼロ。
(愛って怖い)
◆ 婚約後の地獄
婚約してからも。
平和?
いいえ。
悪化しました。
「今日は何を食べました?」
「誰と話しました?」
「疲れてません?」
一日五十回。
報告義務。
私は秘書か。
◆ 結婚式当日
最大の事件。
挙式30分前。
「……新婦が消えました」
私、死にかけました。
原因。
➡ トイレ迷子。
五分後。
公爵様が発見。
抱えて戻る。
お姫様抱っこ。
満面の笑み。
「……確保」
物騒。
◆ 現在
今。
二人は幸せです。
とても。
非常に。
過剰に。
朝。
「行ってきます」
→ キス3回
帰宅。
「ただいま」
→ 抱擁5分
夜。
「おやすみ」
→ 離さない
私は見ない。
見なかったことにする。
◆ それでも
でも。
本音を言えば。
私は、この二人が好きです。
逃げてたお嬢様。
追い続けた公爵様。
不器用で。
必死で。
真剣で。
だから。
ここまで来た。
◆ 私の願い
ただ一つ。
「次は、普通の主君に仕えたい」
無理でしょうけど。
◆ 最後に
今日も。
屋敷のどこかで。
「リリアーナ、寒くない?」
「大丈夫だよ」
「本当に?」
「大丈夫!」
「無理しないで」
「してない!」
「……念のため毛布」
配布。
(過保護、限界突破)
私は、今日も紅茶を飲みながら思う。
――愛って、ほどほどがいい。
でも。
あの二人には。
ほどほどなんて、無理なのだ。




